KNXと国際標準化、OpenADR(デマンドレスポンス)の関係
─ 新谷:今や欧州以外でもどんどんKNXで制御された住宅やビルができているということですね。
Lux:はい。当初は欧州で使われていた規格でしたが、KNXとして標準化の道を歩み出して、欧州外へのKNX進出が進んでいきました。
2011年、KNX協会は、EIBのプロトコルスタックを基本として、物理層、構成モード、アプリケーション層などにBatiBUSやEHSからの機能拡張を施した、今日のKNX仕様をまとめ上げ、欧州電気標準化委員会(CENELEC)に提出し、2003年にホーム・ビル制御の欧州標準EN 50090として認定されました。そして、この頃から、まずアジア地域への進出が始まっています。
欧州標準となったKNXは、その後国際標準化を行うISOとIECの合同委員会(ISO/IEC JTC 1)に提出され、2006年に、ISO/IEC 14543-3国際標準として認定されました(表2)。
表2 KNXプロトコルの概要
〔出所 KNX協会のホームページより〕
このほかにも、2005年、インテリジェントビルのネットワーク制御規格であるBACnetとKNXと接続規格が米国標準ANSI/ASHRAE 135に認定され、2013年4月には、中国国家標準化管理委員会がKNXを国家標準GB/T 20965-2013に認定しています。
─ 新谷:そうすると今後、中国ではホーム・ビル制御システムはKNXになるということですね。ところで、米国ではOpenADRというデマンドレスポンスの標準が採用されつつあるのですが、KNXはどのように対応するのでしょうか。
Lux:OpenADRに関しては詳しくありませんが、KNXは家庭やビル内の制御を司る規格です。したがって、エネルギー管理に関するKNX製品に対してホーム・ビルの外部から渡されるデマンドレスポンス信号を受け、当該KNX製品へKNXとしての信号に変換して渡すとともに、呼び出し側に対して、OpenADRで規定されたレスポンスを返すゲートウェイで、OpenADRにも対応できると思います。
先ほど、ANSI/ASHRAE 135規格の話をしましたが、この規格に対応したゲートウェイを用いることで、KNX製品をBACnetのコマンドで制御するのと同じではないでしょうか。図3に示すように、KNXは、BACnet以外にも、さまざまな規格とつなぐためのゲートウェイを実現しています。
図3 KNXと他規格のインタフェース
〔出所 KNXソリューション ゲートウェイ〕
KNXとSEP 2、ECHONET Liteなど他の規格との違いは?
─ 新谷:家庭内のエネルギー機器を制御できる主な規格として、KNXとSEP 2、ECHONET Liteなどがありますが、Luxさんから見て、これらの規格は、どこが違っていて、どの規格が最も優秀であるとお考えですか?
Lux:まずお断りしなければなりませんが、私はすべての規格に精通した専門家ではありません。KNXに関しては、何ができてどのように優れているかお話しできますが、KNX以外の規格について意見を述べるべきではないと思います。
あえてKNXの優位性についてお話するとすれば、KNXは国際標準となっていますが、それだけではなく、欧州の標準規格(CENELEC EN50090)、米国でのANSI/ASHRAE 135規格、中国でのGB/Z 20965として認められているということです。ECHONETも国際標準ISO/IEC14543-4として認定されていますが、複数の国で標準規格として認められているのはKNXだけではないでしょうか?
また、複数のメーカーのエネルギー機器を制御するには、相互運用性の保証が非常に重要です。KNXでは、KNX協会とは独立したKNX製品の相互運用試験を行う機関が世界中に10カ所あり、7,000種類にのぼるKNX製品同士の相互運用性確保には自信をもっています。KNXロゴの付いた製品は、この相互運用試験にパスした証なので、300以上あるメーカーのKNX製品をどのように組み合わせても、安心してお使いいただけます。
もう1つ、KNXで強調しておきたいのは「ETS」というツールです。すべてのKNX製品のメーカーも、KNXによる家庭やビルの制御システム設計者同様、KNX協会が用意した同じツールを使っています。使いやすいように、ETSツールは15カ国語に翻訳されており、今後日本語化も行う予定です。
─ 新谷:日本では、ECHONET LiteがHEMSの公知な標準インタフェースとして推奨されているのですが、それに関してはどのようにお考えですか?
Lux:各国それぞれ事情が違いますので、これまででも、最初から家庭とビルディング制御用規格として受け入れられる国もあれば、家庭の制御用として使い始める国、ビル制御用として使い始める国もありました。これは、KNX協会あるいはKNX Japan National Groupが決める問題ではなく、各国それぞれの市場が決める問題だと思います。
─ 新谷:ありがとうございました。