[プロダクト]

電力自由化時代の「MaLion BEMSクラウドサービス」の展開

─ 国際標準IEEE 1888対応のオープンなBEMS ─
2014/05/01
(木)

MaLion BEMSクラウドサービスのイメージ

図5は、MaLion BEMSクラウドサービスの全体的なイメージ図である。図5は、下段に、IEEE 1888プロトコルを使用した、マルチベンダ環境の実現とシステムの運用管理構成図を示している。

図5 MaLion BEMSで実現したBEMSクラウドサービスのイメージ図5 MaLion BEMSで実現したBEMSクラウドサービスのイメージ
〔出所 インターコム〕

〔1〕収集されたデータはIEEE 1888標準のデータに変換

具体的には、図5下段左の温度センサー、湿度センサー、照度センサー、CO2センサーなどの各種センサーから収集されたデータは、無線のZigBeeやZ-Waveで飛ばされ、IEEE 1888対応のMaLion GW(ゲートウェイ)に運ばれたあと、IEEE 1888標準のデータに変換されて、MaLion BEMSサーバに格納される。その格納されたデータは、MaLion BEMSによって統一的に運用管理される。さらに、BACnetやLonWorks注3などのネットワークに接続されている自動販売機なども、同じように、IEEE 1888標準のデータに変換され、MaLion BEMSサーバに格納される。さらに、空調機器の温度データやLEDの照度データなどもIEEE 1888GWを通して、MaLion BEMSサーバに格納される。

〔2〕既設の「ビル中央監視センター装置」とも連携

さらに、従来のプロパライアタリ(独自)なシステムである既存の「ビル中央監視センター装置(BMS/BAS)/BEMS」下で管理されていた、空調監視制御、照明監視制御、電力量計測、防災監視、衛生各種計測などから収集されたデータも、MaLion GWを経由して標準形式のデータに変換され、MaLion BEMSサーバに格納される。これによって、MaLion BEMSサーバに格納されたデータは、すべてIEEE 1888形式に統一されたデータとなっている。

〔3〕IT資産管理と情報漏えい防止ソフトのMaLion4との連携

MaLion4の管理下で運用管理されているPCをはじめとするIT機器の使用電力量と稼働情報は、MaLion GWを経由してIEEE 1888形式に統一されてMaLion BEMSサーバに格納される。

このとき、格納されたデータを解析するのがMaLion BEMSである。

このようにして、MaLion BEMSサーバに格納されたデータは、図5の上段右に示すように、企業の管理者からはすべてのデータが見えるようになっている。その管理者は、会社の運用管理方針(セキュリティ方針)に基づいて、各部門ごとに、あるいは役職ごとに、役員レベル、管理職レベル、一般社員レベルなどを設定し運用する。

図5に示すシステムでは、照明機器や空調機器、IT機器(パソコンやサーバ)、OA機器(FAXやプリンタ)などの、電力の見える化をはじめ、省エネルギー管理を、MaLion BEMSによって、容易に実現できることがわかる。同時に、新築ビルだけでなく既存のビルでも、さらにテナント企業の消費電力の削減を支援する、オープンなクラウドサービスとなっている。

以上のことを整理すると、具体的には、次のような特長を備えている。

  1. 既存のビル管理システム(BMS/BAS)と新しいBEMSとの連携が可能であること。
  2. 事業者全体の消費電力だけでなく、事務所ごとの消費電力の管理が可能なこと。
  3. 総務担当者の利用を想定したわかりやすい消費電力の監視(モニター)の仕組みを備えていること。
  4. 組織別、場所(フロア/建物)別、電気系統別の消費電力の管理が可能なこと。
  5. 機器1台ごとに消費電力を具体的な数値で見える化が可能なこと。

現在、インターコムではいろいろなベンダと連携し、電力の自由化時代に向けた、新しい電力システム監視ソフトを「オープンBEMS」の名で実証を重ねてきている。

具体的には、この「MaLion BEMS」は、前述した東大グリーンICTプロジェクトの実証実験で採用され、現在もオープンなマルチベンダ環境下で接続実証や協業が重ねられており、間もなくリリースされる段階を迎えている。

今後の展開

GUTPでの過去2年間の活動を通じて、MaLion BEMSは第1ステップを踏み出すことができた。

マルチベンダの機器の電力見える化を「組織」「場所」「電力系統」という3つの切り口で実現したが、特に、1年ごとに変更される東京大学の組織にも柔軟に対応し、だれが管理責任者かを明示できる特長が評価された。

今後、見える化に加えて機能面でピークカット制御やデマンドコントロール機能など、積極的な節電対策を実現し実証実験から実用化への次ステップへ展開していく予定となっている。

具体的には、一般企業に比べて消費電力が大きいデータセンターや工場向けの省電力マネジメントプロジェクトに個別に対応していく。

3年前の東日本大震災直後に比べて、最近では一般企業の節電への危機感は弱まっているように感じられるが、今後、電力料金の値上げに加え、CO2削減も含めた企業への節電努力がより求められてくる。このため電力料金の削減とコンプライアンスの視点から、企業管理部門へアピールを行っていく。

最終的には、既存MaLionマーケットのユーザー企業への付加サービスとして展開していく計画である。

◎取材協力

松原 由高(まつばら よしたか)

松原 由高(まつばら よしたか)
株式会社インターコム 取締役
慶応義塾大学 工学部計測工学科卒業後、1974年、日本電気に入社、宇宙通信開発に従事。1984年、アンガマン・バス社(米国)に入社。極東技術責任者および日本法人設立に従事。1987年、アライドテレシスを設立し、代表取締役に就任。1994年、ランセプトを設立し、代表取締役に就任(〜01年)。 2002〜2010年、アビックスの取締役ジェネラルマネージャー、イーディーコントライブの常務取締役として事業強化に努め、その他10社のベンチャー企業の役員または顧問としてマネジメント強化、新規事業開拓を行う。2010年、インターコムに参画し、現職。 ネットワーク協議会会長、NetWorld + Interop Tokyo 展示会実行委員会委員長などインターネット関連の各種団体・公的委員会等の委員長などを歴任。


▼ 注3
BACnetやLonWorks:空調、照明をはじめエネルギーの監視・制御等のビル設備管理のオートメーションに使われる通信プロトコル規格。

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