[プロダクト]

Wi-SUNインタフェースを搭載したスマートメーターの測定技術

― 920MHz帯を使用するIEEE 802.15.4gの最新動向 ―
2014/04/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

【インプレスSmartGridニューズレター 2014年4月号掲載記事】東京電力管内では2,700万世帯に向けて、いよいよスマートメーターの導入・設置が2014年4 月から開始される。ここでは、まずスマートメーターの各種通信方式や通信インタフェースを解説する。とくにスマートメーターの国際標準プロトコルとなった、920MHz帯を使用するIEEE 802.15.4gおよび、これをベースとする「Wi-SUN」について解説するとともに、その試験方法についても解説する。なお、本記事はアジレント・テクノロジー株式会社(以下、アジレント社)電子計測本部の田中賢悟氏、北野元氏への取材をベースにまとめられたものである。

※2014年8月1日、アジレント・テクノロジーの電子計測事業は、キーサイト・テクノロジーとして新しくスタートしている。

スマートメーターの通信方式の仕組み

〔1〕情報ルート:AルートとBルート

電力システムとICT(情報通信技術)を連携させて、電力を効率的に利用できるようにするスマートグリッド(次世代電力網)は、いまやスマートハウスやスマートビル、スマートコミュニティなどとして普及し始めている。

2014年4月からは、東京電力が一般家庭に、従来のアナログ方式に代わって、デジタル方式で双方向通信が可能なスマートメーターの設置を開始するため、いよいよ日本の電力・エネルギー環境はスマートグリッド時代に突入することになる。

図1は、これから家庭等に導入されるスマートメーターを中心に、どのように通信が行われるかを概念的に示したものである。

図1 スマートメーターの通信方式(スマートメーターから見た通信相手)図1 スマートメーターの通信方式(スマートメーターから見た通信相手)
〔出所 アジレント・テクノロジー、「Agilent Measurement Forum 2013 最新動向を考慮したスマートメーターの測定技術」より〕

図1を簡単に整理すると、大きく分けて、

  1. Aルート:スマートメーターと電力会社等の間の通信
  2. Bルート:スマートメーターとスマートハウス内のHEMS間の通信

の2つのルート(実際にはCルートもあるがここでは省略)が、経済産業省「スマートメーター制度検討会」(2011年2月)で決められ、需要家(例:家庭)へ電力使用量に関する情報などを提供するための情報ルートとして定義されている。

(1)Aルート

例えば図1に示すように、Aルートでは、2つの通信形態が考えられており、

①スマートメーターと直接電力会社等が通信する方式〔広域移動無線通信網:WCDMA(最近はLTE)やWiMAX等を使用〕

②スマートメーターと電柱上などに設置されるデータ集約装置であるコンセントレータ間で通信〔802.15.4g(Wi-SUN)、Zig-Bee、G3-PLC等を使用〕し、さらにコンセントレータと電力会社等が通信(WCDMAやWiMAX等を使用)する方式がある。

ここで、IEEE 802.15.4gをベースに通信仕様などを策定する組織として活動している「Wi-SUNアライアンスのプロフィール」を、表1に示す。

表1 Wi-SUNアライアンスのプロフィール
表1 Wi-SUNアライアンスのプロフィール

(2)Bルート

これに対して家庭内のHEMS(宅内エネルギー管理システム)との通信を行うBルートは、無線の802.15.4g(Wi-SUN)やZigBee、有線のG3-PLC(電力線通信)などの通信方式が使用される。このとき無線のWi-SUNやZigBeeの通信には、日本では周波数として法的に920MHz帯が使用される。また、G3-PLC規格は欧州で普及している電力線通信規格であるが、国際標準化され、東京電力でも使用される規格になった。

このような下位層(上位層はECHONET Lite、後述)の通信規格は、相互接続性を実現するため、総務省傘下のTTC(情報通信技術委員会)で、ECHONET Liteの下位層の通信インタフェースとして、表2に示すTR-1043〜JJ 300.11などの多数の規格が策定された。

表2 ECHONET Liteの下位層通信インタフェース[TTC TR-1043/1044、JJ-300.10/11]
表2 ECHONET Liteの下位層通信インタフェース[TTC TR-1043/1044、JJ-300.10/11]
〔出所 http://www.ttc.or.jp/cgi/document-db/docdb.cgi?cmd=s&sc=T25

上位層標準インタフェース「ECHONET Lite」の策定

〔1〕ECHONET Lite(第5層〜第7層)の策定

このようなスマートメーターの下位層の通信方式が策定される以前に、Bルートの「スマートメーターとHEMS」間の上位通信インタフェース(プロトコル)として、ECHONETコンソーシアムで「ECHONET Lite」(第5層〜第7層)が策定されている。これは、経済産業省によって、スマートメーターとHEMS間をつなぐ標準の上位層インタフェース(プロトコル)として認定され、公開された(2012年2月)。前述した下位層インタフェースは、「ECHONET Lite」対応の機器を相互接続するために規定された通信インタフェース群である。

〔2〕Wi-SUNアライアンスの国際標準プロトコルの構成例

そこで、Wi-SUNアライアンスは、アプリケーション層「ECHONET Lite」(第5層〜第7層)の下に、第1層〜第4層のプロトコルを国際標準規格として規定している。図2はそのプロトコル構成の例である。

図2 「Wi-SUN」準拠の国際標準プロトコルの構成例図2 「Wi-SUN」準拠の国際標準プロトコルの構成例
PANA:IETF標準。Protocol for Carrying Authentication for Network Access、ネットワークアクセス認証プロトコル、RFC 5191ほか。


▼ 注1
Wi-SUN:Wireless SUN(Smart Utility Network)、無線によるスマートメーター通信を行うための通信プロトコル規格策定団体、Wi-SUNアライアンスともいわれる。IEEE 802.15.4gは、802.15WG(ワーキンググループ)のTG4g(Task Group 4g、作業グループ)で「SUN」(Smart Utility Network、スマートメーター用ネットワーク)という名称で、「物理層」として標準化された。
Wi-SUNは物理層としてIEEE802.15.4g標準を参照している。MAC層には、IEEE 802.15.4eが規定されている。
IEEE 802.15WG:WPAN(Wireless Personal Area Network、近距離無線通信網の標準を策定するワーキンググループ。例:Bluetooth、ZigBeeなどを審議。

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