[クローズアップ]

電力会社の自由な選択を容易にする広域機関(OCCTO)の「スイッチング支援システム」

― 効率化される需要者の「電力契約」切り替えの仕組み ―
2016/05/09
(月)
SmartGridニューズレター編集部

スイッチングシステム契約手続きの現状

表2 広域機関のスイッチング支援システムの利用状況(〜4月8日24時時点※1)

表2 広域機関のスイッチング支援システムの利用状況(〜4月8日24時時点※1)

※1当システム運用開始2016年3月1日13時からの累計値。
※2「情報照会」は、設備情報照会と使用量情報照会の合計値。設備情報とは、現在の契約電力、自動検針の可否、次回の検針日等のこと。使用量情報とは、需要者の過去13カ月の電力使用量のこと。
※3「スイッチング」は、スイッチング開始申請の件数。
※4「再点、他」は、再点(内線設備工事を伴わない接続供給の開始)、廃止・撤去、アンペア変更、需要者情報変更の合計値。
再点:小売電気事業者が、需要者からの新たな電気の使用を前提とした「内線設備の工事を伴わない接続供給の開始申込」を一般送配電事業者に行うこと。
出所 http://www.occto.or.jp/oshirase/hoka/2016-0415-swsys_riyou.html

 広域機関では、経済産業大臣から登録を受けた後、利用申請のあった小売電気事業者を登録している。

 また、スイッチング支援システムを利用する需要者の数(問い合わせ、あるいは申し込みの総計)は、表2に示すように、広域機関のホームページで毎週公表されている。例えば、すでに、旧東京電力エリアでは78万7,600件(スイッチング開始申請の件数は、39万4,900件)、旧関西電力エリアでは30万5,600件(同14万9,500件)もの問い合わせがある(2016年4月8日、累計)。

スイッチング支援システムの機能一覧と「再点」

 次に、スイッチング支援システムの機能の一覧を表3に示す。すでに一部は解説してきたが、ここで、今後、需要者にとって引越時や不動産取得の際に重要となる「再点」について簡単に解説しておこう。

表3 スイッチング支援システムの機能一覧

表3 スイッチング支援システムの機能一覧

出所 電力広域的運営推進機関「スイッチング支援システム小売電気事業者向け説明会」、2015年10月 https://www.occto.or.jp/oshirase/hoka/files/SWshiensystem_setsumeikai_20151018.pdf

 再点とは、小売電気事業者が、需要者からの新たな電気の使用を前提とした「内線設備(屋内の電気設備)の工事を伴わない接続供給の開始申込を一般送配電事業者に行うこと」を意味する。これに対して新設とは、電気の供給・受電にあたって新たに供給設備を施設することであるが、この新設あるいは契約変更、設備変更はスイッチング支援システムの対象外となっている。

 今までは、引越するとエリアによって、電力契約が東京電力や関西電力などと決まっていたので、需要者は引越先の住宅のブレーカーをONにするだけで電気をすぐ利用できた。しかし、2016年4月1日以降は小売電気事業者を選択しなければならない。

 需要者は小売電気事業者を選択して供給契約を申し込み、小売電気事業者は託送契約を一般電気事業者に申し込むことになる。需要者は手続き終了後、初めて電気が利用できるようになる。

広域機関の今後の展開

 現在は、新料金問題などに関心が集まっているが、今後スマートメーターから収集される30分値をはじめ、多くの需要者の情報(ビッグデータ)などを分析することによって、新しいサービスや新しい電力の利用方法が開発され、提案されてくると予想される。このような流れを背景に、2020年の第3弾となる送配電部門の法的分離に向かって、広域機関やスイッチング支援システムがどのように進化・発展していくのか、注目されるところである。

◎取材協力

八幡 泰史(はちまん やすし)氏

電力広域的運営推進機関 総務部情報システムグループ マネージャー

東京電力にてシステム企画部門に所属し、主に、火力発電、送変電などの設備を管理する業務システムの開発に従事。10年前の高圧自由化においては、託送料金計算や30分電力量を提供する託送業務システム開発をリーダーとして担当。
現在、広域機関において、スイッチング支援システムの運用・保守、30分電力量提供の標準規格、情報セキュリティなどを担当。

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