[特別レポート]

【IAjapan IoT推進委員会 第4回シンポジウム・レポート】IVIのプラットフォーム戦略と期待されるインダストリアルIoTのグローバルスタンダード

― 連携を始めたIVI・IIC・プラットフォームIndustrie 4.0 ―
2016/10/13
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

IoT製品の基本構成

 このようなことを実現可能とするIoT(モノのインターネット)製品というのは、図3に示すように、基本的に製品の機能として、

  1. あらかじめ与えられるハードウェアと
  2. 必要に応じてクラウドなど外部から与えられるソフトウェアをコアにして
  3. それにネットワーク経由のデータを加えた

セットで構成されている。すなわちデータがないと機能しないということは、ネットワークでつながっている世界でないと、このIoT製品は価値を見出さないということでもある。

図3 IoT製品の基本構成

図3 IoT製品の基本構成

出所 西岡 靖之、「IVIのプラットフォーム戦略と海外との連携」、2016年9月9日

 それでは、今後IoT時代を迎えて、モノづくりの世界はどうなるだろうか。モノづくりの世界(工場)は外部からは見えない世界であり、工場内の各所にコト(サービス)があり、そこにはその企業独自のノウハウが散在している。このため、これまで工場の中を見せたくない傾向が強かったが、このような独自の閉鎖性の強い垂直統合型のビジネスでは、今後の国際市場では勝つことができない。

 そこで、今後は図4に示すようなIoTプラットフォームをベースにして水平統合という新しい世界へと脱皮させ、工場の中に散在している多くのコト(サービス)を独自の世界ではなく、これらを標準化し、きちんと海外とのインタフェースが取れるようになれば、この企業は、海外からも多くの受注が可能となる。

図4 水平分業(水平統合)の構造

図4 水平分業(水平統合)の構造

出所 西岡 靖之、「IVIのプラットフォーム戦略と海外との連携」、2016年9月9日

 また、前述した「製造業のサービス化」というのは、アフターセールス(売った製品が後から価値を生む)というサービス化でもあるが、さらに「モノづくりそのものがサービス」として提供できることもある。例えば、EMS(Electronics Manufacturing Service、電子機器の受託生産を行うサービス)のようなものである。

なぜドットコム(.com)企業がIoTの世界へ進出するのか

 このような背景から、次世代のものづくりを目指してIVI(Industrial Value Chain Initiative)が1年余り前に設立(2015年6月)されたが、すでに、IT企業と言われるグーグルやアマゾンなどのドットコム(.com)企業が、次々にIoTの世界に進出してきており、CPS注2によるビジネス変革を急速に推進している。

 その理由は、インターネット経由でスマートフォンやノートパソコンなどのように、人だけでつながっている、すなわち人を介してつながっている世界だけでは、なかなか経済的効果の拡大が見込めないからである。前述したように、冷蔵庫や洗濯機も含めてすべてのモノがインターネットにつながると、「売る行為と使う行為」が積み上がっていく新しい経済構造(ビジネスモデル)が形成され、全体として利益を上げることができるようになり、投資計画も立てやすくなる。

 これを、IoTモデルと呼ぶことにしよう。すなわち、企業からの「製品とサービス」が1対のものとして提供されるようになり、これによって、ネットワーク経由で製品の利用(サービス)に対して、企業は利用者からダイレクトに課金できる仕組みができるようになる。

 現在、注目されているドイツのIndustrie 4.0(正式名称:Plattform Industrie 4.0。プラットフォームIndustrie 4.0)はドイツ国内の標準仕様になっているが、現在、IECで国際標準化の準備が行われているところである注3。このIndustrie 4.0では、管理シェル(Administration Shell注4)という技術を使って、どこでだれが何をしているか、工場内の各機械がどのような作業をしているかについて、ログ(記録)をとることができる仕組みとなっている。したがって、そのビッグデータ(ログデータ)を解析すれば、工場内のノウハウなどがすべてわかる仕組みになっている。

 また、これとは別に、米国のIIC(Industrial Internet Consortium)も活発に国際展開している。


▼ 注2
CPS:Cyber-Physical Systems、「M2M/IoT」を適用した生産システム。インターネット上〔サイバー(Cyber)空間:クラウド〕のコンピューティング能力(IoT)と、センサーネットワークのようなリアルな通信技術〔フィジカル(Physical)、例:M2Mネットワーク〕とを連携させた新生産システムのこと。後述するIICやプラットフォームIndustrie 4.0はCPSでシステムを実現しようとしている。

▼ 注3
IEC SMB SG8:IEC Standardization Management Board Strategic Group 8、Industry 4.0 - Smart Manufacturing(英語表記)、
IEC標準管理評議会 戦略グループ8:Industry 4.0-スマートマニュファクチャリングの標準化を担当。
IEC:International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議
http://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:85:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:11072,25

▼ 注4
Structure of the Administration Shell

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