[これだけは押さえておきたいスマートグリッド基礎用語]

IIoT(インダストリアルIoT)とは?日・米・独の連携でグローバルスタンダードを目指すIIoT

2016/06/07
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

経済成長率が低迷する先進国において、生産性の向上や新しいビジネスモデルの構築を目指して、インダストリアルIoT(IIoT:Industrial IoT)の動きが活発化注1、注2している。また、IIoTに関しては、ドイツ(独)のプラットフォームIndustrie 4.0と米国のIICは緊密に連携し、グローバルスタンダードの策定に向けて合意したと発表(2016年3月)。続いて、日本も先行するドイツと連携して、次世代スマート工場に必要な機器などの国際標準化を目指す方針を示した(2016年4月)。ここでは、IoT、M2M、CPSなど類似の用語(ほぼ同義語)を整理しながら、IIoTとIIoTシステム(=IoTシステム)の仕組みについて簡単に解説する。

識別可能な「モノ」をネット接続

 電子メールやWebのような人間のコミュニケーションをサポートする、オープンなインターネットの利用者数は、2015年には31億7,000万に達し注3、前年に比べて2億人以上増加、なお伸長を続けている。

 これに対し、人が介在しない、コンピュータ機能を内蔵したセンサーや電子機器(組込み機器)などのモノ〔デバイス(機器)〕同士をネットワーク化して、情報(データ)をやり取りするIoT(Internet of Things、モノのインターネット)が登場し急速に普及しようとしている。

 このIoTは、デバイスごとに割り当てられた固有のID(識別子)をもつ識別可能な「モノ」を、オープンなインターネット(IPネットワーク)に接続し活用する形態である。

 すでに広く知られているように、シスコシステムズやエリクソンなどの調査では、2020年までに桁違いの数にのぼる500億個ものデバイスがインターネットに接続されると予測されている。

 このようなIoT時代が到来すると、生産性の向上はもとより、新サービスの提供や新しいビジネスモデルが創造され、新しいビジネスが創出されるところから、国際的に注目されるようになった。

 このIoTという用語の歴史は古く、MIT(マサチューセッツ工科大学)のAuto-IDセンター注4の共同創設者(Cofounder)でもあるケビン・アシュトン(Kevin Ashton、1968年英国生まれ)氏によって1999年に提唱された注5

 その後、コンピュータや通信(特に無線技術)や半導体、ソフトウェアなどの進化によって、コンピュータ機能が組み込まれたモノ同士が連携するIoTへと進化し、本格的にIoTが実現できる時代を迎えた。

IoTとM2MとCPS

 IoTと類似(厳密には微妙な差異があるが)の用語として、M2MやCPSなどという用語も広く登場している。

 M2M(Machine to Machine)は、例えば工場などにおける機械(センサー内蔵)と機械(制御装置)が直接通信を行う形態である。機械に組み込まれたセンサーなどのデータを収集し、それを制御装置で制御して、適切な指令を機械に伝える通信形態である。M2Mについては、2012年7月に設立された国際標準化組織「oneM2M」注6でM2Mのグローバルな標準規格が策定されている。

 また、CPS(Cyber Pyhisical System)とは、現実の各デバイスをセンサーネットワークでつないだフィジカルシステム(物理的なシステム)とインターネットの世界(サイバー空間)のコンピューティング能力を連携させるシステムのことである。

 このCPSは、米国で2006年に開催された米国科学財団(NSF)のワークショップ注7

で最初に提案されたシステムと言われている。現在では、米国国立標準技術研究所(NIST)内に2014年に設立された「NIST CPS PWG注8」という「CPSフレームワーク検討のためのパブリックWG」で、CPSのフレームワークづくりが行われている。すでに、CPSフレームワークのドラフト版バージョン0.8注9が公開されている。

 このCPSは、IoT、M2Mなどとほぼ同義語として使用されており、後述する欧州のプラットフォームIndustrie 4.0や米国のIIC、日本のIVIなどの各システムを実現する技術として使用されている注10


▼ 注1
http://industryofthingsworld.com/en/

▼ 注2
http://www.iotsworldcongress.com/

▼ 注3
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/kids/internet/statistics/internet_01.html

▼ 注4
Auto-IDセンター:1999年設立。物流やサプライチェーン・マネージメントにおける商品管理などのために、あらゆる「モノ」にID(識別子)を付与するとともに、その利用に関する諸問題を解決するための国際的な共同研究を行うために設立された機関。

▼ 注5
当時のIoTは、RFID(無線タグ)を装着したモノ(商品)をネットワーク化して流通革命(サプライチェーンの革命)を起こすというコンセプトであり、今日のような幅広いIoTのイメージではなかった。日本では、「ユビキタス」という用語が広く使用された。

▼ 注6
http://www.onem2m.org/

▼ 注7
NSF:National Science Foundation、米国科学財団
http://cps-vo.org/node/179
http://iccps.acm.org/2010/Workshops.html

▼ 注8
https://pages.nist.gov/cpspwg/
http://www.nist.gov/cps/cpspwg.cfm

▼ 注9
CPS PWG Draft Cyber-Physical Systems (CPS) Framework
https://s3.amazonaws.com/nist-sgcps/cpspwg/pwgglobal/CPS_PWG_Draft_Framework_for_CyberPhysical_Systems_Release_0_8_September_2015.pdf

▼ 注10
Industrie 4.0におけるCPSプラットフォームでは、IoT(モノ)、IoS(サービス)、IoP(人々)などの統合を目指している。下記の文献参照。
“Recommendations for implementing the strategic initiative INDUSTRIE 4.0 Final report of the Industrie 4.0 Working Group“, Apr. 2013、のFigure 4、参照

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