[特集]

ガスの小売全面自由化に向けて動き出したガス業界

― ガスエネルギーの新・市場規模は2.4兆円へ ―
2016/10/13
(木)
SmartGridニューズレター編集部

ガス自由化に向けた4度にわたる制度改革

〔1〕ガス自由化:4度にわたって大きな制度改革

 次に、これまで行われてきたガス自由化の歴史を概観してみよう。

 ガス事業の自由化については、図4に示すように、平成7(1995)年、平成11(1999)年、平成16(2004)年および平成19(2007)年の4度にわたって大きな制度改革が行われてきた。

 この制度改革によって、例えば、平成7(1995)年では、年間契約ガス使用量200万m3以上の大口需要家(市場の約47%)は、ガスの供給者を選ぶことが可能となり、以降、自由化が順次拡大し、平成19(2007)年には年間契約ガス使用量10万m3以上の需要家(市場の約63%)まで可能となった。

図4 ガス事業の段階的自由化の経緯

図4 ガス事業の段階的自由化の経緯

※図4に示す%の数値は、平成24年度の実績であるが、最新の平成26年度(平成27年3月末)のデータがサイトに掲載されている。ここでは他の内容との整合性から平成24年度の実績を掲載している。
出所 http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014pdf/whitepaper2014pdf_3_4.pdfの267頁

 来たる2017年4月には、ガス小売全面自由化が実施されるため、図4の黄色で示す残りの10万m3未満の家庭などの小規模需要家(100%-約63%=約37%)まですべて可能となり、市場における100%の需要家が、ガスの供給者を選ぶことが可能となる。

 なお、欧米における、例えば英国(1998年)をはじめ、ドイツ(1998年)、イタリア(2003年)、フランス(2007年)、米国ニューヨーク州(1996年)などでは、すでにガス販売の全面自由化が実施されている。

〔2〕ガス小売全面自由化による市場規模は約2.4兆円へ

 また、2017年4月に実施されるガス小売全面自由化によって、新たに2,400万軒を超える一般家庭と120万軒を超える事業所などが、都市ガスの供給サービスを受ける事業者を自由に選択できるようになる。その市場規模は約2.4兆円に上る、と予測されている注11

ガス会社が保有する発電設備の動向

 すでに周知のように、電気小売全面自由化に伴って、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスなども電気事業に参入し活発なビジネスが展開されている。ここでは、東京ガス、大阪ガスなどのガス企業の電気事業の取り組みを簡単に紹介する。

〔1〕東京ガスグループ:約160万の発電設備

 東京ガスグループは、「チャレンジ2020ビジョン」実現に向けた2015〜2017年度の主要施策を発表(2014年10月)注12し、総合エネルギー事業の進化、グローバル展開を加速させている。

 2016年度の連結売上高は1兆5,810億円、営業利益は480億円、経常利益は400億円、当期純利益は350億円を計画している。

 同社は、現在、約160万kW(自社持分)注13の電力設備を保有しているが、2020年にはその倍の300万kW以上に拡大する計画である。

〔2〕大阪ガスグループ:約184万kWの発電設備

 一方、大阪ガスグループは、長期経営ビジョン「Field of Dreams 2020」(2009年3月)に基づく「大阪ガスグループ中期経営計画Catalyze Our Dreams」を2014年3月に発表注14

 2016年度の連結売上高は1兆1,705億円、営業利益は855億円、経常利益は780億円、当期純利益は520億円を計画している。

 大阪ガスグループは、図5に示すように、火力、コージェネレーション、再生可能エネルギーなどの多様な電源を保有し、発電事業を行っている。高効率な天然ガス火力発電の泉北天然ガス発電所でつくられた電力を中心に、風力や太陽光などの再エネを含めると、国内の総発電設備容量は約184万kW(2016年3月末現在)を保有している。

 今後、同グループではさらなる電源の開発を継続し、より一層安定した電力の供給を目指している。

図5 大阪ガスグループの国内における保有電源

図5 大阪ガスグループの国内における保有電源

総発電設備容量:合計約184.0万kW(2016年3月末現在)
出所 http://www.osakagas.co.jp/company/csr/liberalization/business.html


▼ 注11
出所:総合資源エネルギー調査会基本政策分科会『ガスシステム改革小委員会報告書』の10頁、2015年1月

▼ 注12
http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20141016-01.pdf

▼ 注13
http://power.tokyo-gas.co.jp/

▼ 注14
http://www.osakagas.co.jp/company/about/philosophy/index.html

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