[特集]

IECにおけるスマートグリッドの国際標準最前線

─ NIST/IEEEとも連携しダイナミックな標準づくりへ ─
2014/11/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

IEC TC 57における主なWGの活動

 これまで解説したように、IECの標準は7つの領域〔市場、運用、サービスプロバイダー、発電、送電、配電、需要家(消費者)〕に対応して、膨大な標準が策定されている。

 次に、TC 57 における主なワーキンググループ(WG)の活動例を紹介する。

〔1〕WG 21では需要家と電力システムのインタフェースを標準化

 TC 57に2011年に新設されたWG21は、家庭やオフィスビル、工場など需要家側のスマートグリッド・システムと電力システムとの連携を行う標準化が行われている。

 需要家領域の標準としては、家庭用のエネルギー管理(HEMS)では、米国のSEP 2(Smart Energy Profile 2.0。IEEE 3020-2013標準)、欧州のKNX(ISO/IEC14543-3標準)、日本のECHONET(ECHO-NET Lite)が、ビルエネルギー管理(BEMS)では米国のFSGIM、工場エネルギー管理(FEMS)では、TC 65(工業プロセス)からのテーマが提案されている。

 WG 21では、これらの標準と電力システム側のIEC 61850(変電所自動化)やIEC 61970(エネルギー管理システムAPI)と連携するとともに、市場を介した電力の需要調整(デマンドレスポンス)やエネルギー管理に関して、電力会社/サービスプロバイダ/需要家などとのインタフェース標準が策定されている。この標準は、IEC 62746(OpenADR2.0bプロファイル仕様など注7)として策定中である。

 なお、WG21とPC 118(スマートグリッドユーザーインタフェース)の重複部分については、両者で協調作業が行われている。

〔2〕WG14とTC13:スマートメーター標準関連の連携の標準化

 WG14では、配電管理システム(DMS:Distribution Management System)の標準化の一環として、すでにメーターデータ管理システムの標準「IEC 61968-9」が策定されている。この標準と、東京電力のスマートメーターシステムでも採用されたTC 13(電力量計測・負荷制御装置)のメーター標準「IEC 62056 DLMS/COSEM注8」が連携した標準化が開始されている。

〔3〕WG 17:太陽光発電、電気自動車も含めた配電自動化

 WG 17では、スマートグリッドを意識した分散電源制御システムへの拡張に関する標準化作業が行われている。

 具体的には、太陽光発電(PV)や電気自動車(EV)、蓄電池制御も含めた配電自動化システムの高度化を目指しており、分散エネルギー電源システム「IEC 61850-7-420」のスマートグリッドの拡張などが検討されている。

 このほか、前出の表3に示したIEC 61850-90-6で高度配電自動化、IEC 61850-90-7でPV/Storage制御、IEC 61850-90-8で電気自動車と充電ステーション間の通信、などの標準化が行われている。

〔4〕WG 15:情報セキュリティ

 WG 15では、広域系統制御システムやスマートメーターなどの広域的に分散している多数の装置に対応した鍵配布・管理に関するセキュリティ標準を、IEC 62351の拡張として作成されている。

〔5〕WG 19:情報モデルの統合化

 WG 19では、電力システム制御の標準であるIEC 61970と、変電所自動化システム標準のIEC 61850の情報モデルの統合化の検討が開始されており、IEC TC 57の標準体系であるIEC 62357のスマートグリッドに対応した見直しが行われている。

 このように、従来は、個々の領域内で策定され、適用されてきた国際標準は、スマートグリッド時代を迎えて、異なる領域間を連携した国際標準が求められるようになり、従来の標準の見直しと拡張、そして新しい時代に対応した国際標準が活発に展開されてきている。

日本の国際標準活動の方針

 これまで、IEC TC 57を中心に、NISTやIEEEと連携したスマートグリッドに関する情報・通信の標準化活動を見てきたが、日本も、スマートグリッドの国際標準化に積極的に取り組む方針が決定されている注9

 日本からのスマートグリッドに関連する国際標準は、JSCA(スマートコミュニティアライアンス)で検討され提案されている。具体的には日本が先行し、海外での事業化を目指す、送電系統広域制御や蓄電システムをはじめ分散電源制御装置、住宅・ビルのエネルギー管理システム(HEMS/BEMS)、次世代自動車、メーターシステムなどの検討が行われており、電気学会をはじめ日本電機工業会、日本自動車研究会などから国際標準提案の活動が行われている。


▼ 注7
IEC 62746:Systems inter-face between customer energy managementsystem and the powermanagement systemPart 10-1: Open Automated Demand Response (OpenADR 2.0b Profile Specification)

▼ 注8
DLSM/COSEM:AMI(スマートメーター通信基盤)の通信プロトコル。AMI:Advanced Metering In-frastructure、スマートメーター通信基盤、DLMS(Device Language Mes-sage Specification、デバイス言語メッセージ仕様)、COSEM(Companion Specification for Energy Metering:エネルギー計測関連仕様)

▼ 注9
経済産業省次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会:「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に向けて」2010年1月(http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g100129d01j.pdf

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...