OpenFMB:エネルギー情報のやり取りに関するプロトコル
OpenFMB(Open Field Message Bus、オープンフィールドメッセージバス)とは、一言でいえばエネルギーに関する情報をやり取りするためのプロトコルである。点在するさまざまなエネルギー関連機器などで生成されるデータを、それぞれの機器の仕様にとらわれることなくやり取りできるようにし、相互運用性(Interoperability)を実現するために開発されているプロトコルである。
〔1〕バーチャルパワープラントのコンセプト
現在、私たちが使う電気は大規模な発電所で発電されたものを利用するだけではなくなってきた。太陽光や風力などの再生可能エネルギーや小規模な発電機器、電池などが点在している状況である。
従来のように電力会社などのプレイヤーが集中的に管理するのではなく、分散しているさまざまなリソース(発電機器など)を統合的に管理しなくてはいけなくなってきている。
スマートグリッドの標準化の取り組みが議論され始めた頃から、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)と呼ばれるコンセプトが提唱されていた。これは、分散する複数の電源などをバーチャル(仮想的)に統合し、あたかも1つの発電所(パワープラント)のように扱うというコンセプトである。
〔2〕求められる相互運用性
これまで、このようなコンセプトを実現するための障壁の1つになっていたのが、相互運用性である。すでに異なるベンダによる電力関連機器が導入され、稼働している環境で、データなどのやり取りを今まで以上に容易にすることを目的として取り組まれているのが、このOpenFMBというプロトコルである。
OpenFMBは、米国においてスマートグリッドの標準化を推進するSGIPのなかのPAP(Priority Action Plans、優先行動計画)として取り組みが行われている注3。この取り組み(PAP)は、もともとノースカロライナ州を本拠地とするユーティリティ(電力・ガス会社)であるDuke Energy(デューク・エナジー)が中心となって始まったもので、初期の取り組みの成果は米国で開催されるユーティリティ向けカンファレンスである「DistribuTECH 2014」(2014年1月28〜30日に開催。場所:米国テキサス州)で公開された。
当初はDuke Energyを含む6社で行われていた取り組みだったが、現在ではユーティリティやベンダ、コンサルティング会社、大学、政府機関など40社(団体)がOpenFMBのPAPメンバー注4として参画している。日本企業からは伊藤忠商事が名を連ねている。
▼ 注1
SGIP:米国の商務省の傘下のNIST(米国国立標準技術研究所)が2009年11月に立ち上げたスマートグリッド相互接続性パネル。スマートグリッド関連の標準を開発するために、優先順位を決める行動計画(PAP:Priority Action Plans)の策定も担当した。このSGIPは、2013年にそれまでの政府が支援する組織ではなく独立した組織として、「SGIP 2.0Inc.」となったが、通常は「SGIP」と呼ばれている。
▼ 注2
SGIP 2015 Annual Conference : EnergyIoT-Open Field Message Bus Interoperatility 、https://sgipannualconference2015.sched.org/event/2c2c20fa262d250b9dc90048d49c8392
▼ 注3
Open Field Message Bus(OpenFMB)Project、http://sgip.org/Open-Field-Message-Bus-OpenFMB-Project