風力発電導入時の課題
電力系統は、長年をかけてさまざまな電力技術を取り込みながら構築されてきた。非常に大規模かつ複雑なこのシステムは、多くの先人の知見を吸収した結果、驚くほど機能的に働くことが知られている。
日本の電力系統も例に漏れず、電力会社による統合的な管理を軸とした綿密な運用計画が長年実施されてきたため、その結果、周知の通り世界に誇る非常に高い信頼度を実現してきたのである。
近年の再生可能エネルギーの急激な普及拡大は、この電力系統技術の枠組みの中で、既存の電力系統と風力発電・太陽光発電が適切に共存できる道を模索することとも言える。この「共存」を考えるうえで重要な事項として、まずは風力発電の基本的な特徴を考えてみよう。今回は、次に示す代表的な特徴2点のみを取り上げてみよう。
【第1点】不確実な出力変動
風力発電の出力は、当然のことながら風の強さに依存する。風況には大きな不確実性があり、短時間先の出力は確度高く予測できるものの、ある程度先の時間帯の予測になれば大きな誤差を伴う。このような風況の不確実性に加え、カットアウト風速(危険防止のために風力発電の運転を停止する風速)以上の風速が生じた場合には、当該地域の風車が順次停止することで、急激な出力変動を伴う(図2)。
図2 風車のパワーカーブ
【第2点】導入地域の偏在化
風力発電の導入箇所は、平均風速がある一定以上の地域に限定されると考えられるが、適地は限られている。また、風力発電は景観や騒音などの観点から、都市部などの大きな電力の需要地からは離れた地域に導入されやすい。
このような事情を踏まえると、風力発電は需要地から離れた特定の地域に偏在しやすいが、このとき長距離送電が必要となるケースが必然的に多くなり、後述の通り電力系統の運用制御において問題が生じやすくなる。
洋上風力発電も同様に偏在の典型例である。太陽光発電でも偏在化する例は多く見られるが、家庭用として導入が進展する場合は需要地近郊(家屋の屋根)での発電となるため、太陽光発電から需要地までの距離は非常に短いと考えられる。