【現状】脱炭素化に取り組んでいる中小企業は10%、主な手法はエネルギー消費量の削減
中小企業の脱炭素化はどこまで進んでいるのか。株式会社関電エネルギーソリューション(Kenes:ケネス)は「中小企業における脱炭素対策の実施に係る実態調査結果」を発表した注1。
「自身の経営する企業は何らかの脱炭素対策に取り組んでいるか」を中小企業経営者に質問したところ、「取り組んでいる」と答えたのは約10%(9.8%)で90%が未着手(図)。中小企業では脱炭素化が進んでいないという実態が明らかになった。
脱炭素に取り組んでいる企業(以下、着手企業)が行っている主な施策は次の通り。
(1)エネルギー消費量の削減:66.0%
(2)リサイクルなどの3R注2の推進:39.0%
(3)再生可能エネルギー(以下、再エネ)の利用:31.7%
図 脱炭素対策に取り組んでいる中小企業はわずか約10%(9.8%)
出所 株式会社関電エネルギーソリューション プレスリリース)2023年10月11日、「別紙 中小企業における脱炭素対策の実施に係る実態調査結果について」(詳細)、http://www.kenes.jp/press/pdf/20231011-1.pdf
【課題】最も大きい支障は「コストの増加」、資金や人手などリソース不足も
「脱炭素対策に取り組む上で、現在支障となっている理由」を、まだ対策に着手していない中小企業(以下、未着手企業)の経営者に質問したところ、次の回答が得られた。
(1)コストが増える:26.0%
(2)手間がかかる:17.0%
(3)どう取り組めばよいかわからない:16.0%
(4)資金が不足している:13.0%
(5)必要なノウハウや人材が不足している:6.0%
エネルギーや材料の高騰に苦しむ中小企業にとって、脱炭素化は新たなコスト要因となる。加えて実施後には、どこまでその費用が増えるのか現状では不透明な点も多い。これが着手に踏み切れない理由といえそうだ。
資金や人手、ノウハウ、脱炭素化のための情報といった各種リソースが不足しているという状況も、この調査結果からうかがえる。
【補助金】着手企業は、平均817万円/年を受け取っている
小企業の脱炭素化にあたって、国や自治体から各種の補助金が交付されているが(表)、着手企業のうちこの補助金を利用している企業は、平均で817万円/年を受け取っている(予定も含む)。ちなみに、脱炭素対策に取り組むにあたっての初期投資平均金額は413万円となっている。
また、未着手企業に対し「どのくらいの補助金を受けられるのなら、取り組みの実施について検討するか」を質問したところ、回答の平均は1,119万円/年。経営者が考える補助金の理想と現実には、約300万円のギャップがあった。
この補助金だが、中小企業への周知が進んでいないことも明らかになった。全体の70%の経営者が「存在を知らない(68.0%)」と答えており、「自社が対象となりうることを知らない(24.0%)」を合わせると、90%以上にものぼっている。
表 国や自治体からの脱炭素化のための支援策、補助金の内訳
※図中のページ数(P)は本資料の各事業に関するページを示す。
CEV:Clean Energy Vehicle、クリーンエネルギー自動車。補助金の対象となるのは、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池(FCV)、超小型モビリティ、クリーンディーゼル車等
ESG:Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を合わせた用語。近年、ESGは企業が持続的に成長するためには欠かせない考え方となってきており、ESGへの取り組みが、企業投資の新しい判断基準として注目されている
CN:Carbon Neutral、カーボンニュートラル。CO2等の温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的なCO2等の排出量をゼロにする取り組み
GX:Green Transformation、グリーントランスフォーメーション。地球温暖化の主な原因となっているCO2の排出量を削減し、再エネ(グリーン)に転換することによって企業や社会を変革し成長させること
出所 経済産業省/環境省、『中小企業等のカーボンニュートラル支援策』(2023年4月)、「カーボンニュートラル対策フローチャート」より一部抜粋・修正して作成
【メリット】着手企業の4分の1で、取引先や取引量が増加
脱炭素化を行うメリットについて、着手企業の33.3%が企業価値やブランドイメージにおいて好影響があったと答えている。具体的には、「取引先や取引量の増加があった」が26.9%と最も多く、4分の1以上の企業が回答している。また「金融機関や投資元からの資金調達にポジティブな影響があった」という回答も9.4%あった。
一方、未着手企業では、「取引先の数や取引量が減少した」と答えた経営者が10.0%あった。また6.0%の経営者は、資金調達でネガティブな影響があったと回答している。
【本記事で引用した調査実施概要】
関電エネルギーソリューション「中小企業における脱炭素対策の実施に係る実態調査結果」(http://www.kenes.jp/press/20231011-01.html)の概要は次の通り。
(1)調査方法:インターネット調査
(2)調査時期:2023年8月
(3)調査対象:全国の経営者(20 歳以上の男女) 計3,060名
※回答結果は、脱炭素対策に取り組んでいる企業の経営者300名、取り組んでいない中小企業の経営者100名から得た内容をまとめている。
注1:株式会社関電エネルギーソリューション(Kens)プレスリリース、2023年10月11日、「中小企業における脱炭素対策の実施に係る実態調査結果について」、http://www.kenes.jp/press/20231011-01.html
注2:3R:Reduce(リデュース。廃棄物の発生抑制)、Reuse(リユース。再使用)、Recycle(リサイクル。再生使用)の3つのRの総称。
参考サイト
株式会社関電エネルギーソリューション(Kenes)プレスリリース2023年10月11日、「中小企業における脱炭素対策の実施に係る実態調査結果について」、http://www.kenes.jp/press/20231011-01.html
別紙:中小企業における脱炭素対策の実施に係る実態調査結果について(詳細)
http://www.kenes.jp/press/pdf/20231011-1.pdf