秋田は発電大手JERA他、新潟は三井物産他、長崎は住友商事他の各事業体
太陽光発電に次ぐ再生可能エネルギー(以下、再エネ)の本命として期待されている洋上風力発電の具体的な3つの海域(秋田県・新潟県・長崎県)とその事業者が選定され、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、いよいよ本格的に動き出した。
経済産業省と国土交通省は2023年12月13日、秋田、新潟、長崎の3海域で開発する洋上風力発電の新たな事業者を発表した(表)。これは、洋上風力発電の普及促進のために制定された「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(以下、再エネ海域利用法)」に基づくもの。同法によって事業者は、今後最大30年間、事業区域を専有できる。
表 秋田・新潟・長崎の3海域で開発する洋上風力発電と新たな事業者※「秋田県八峰町及び能代市沖」も今回公募されていたが、計画の再提出が必要となったため事業者決定は2024年3月に先送りされた。
出所 経済産業省、2023年12月13日ニュースリリース『「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」、「新潟県村上市及び胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」における洋上風力発電事業者の選定について』(同時発表:国土交通省)をもとに編集部で作成
2030年までに10GW、2040年には30〜45GWを確保予定
洋上風力発電は、官民一体となった取り組みが進められている。
2020年に「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」において「洋上風力産業ビジョン」が示され、この中で政府は2030年までに10GW、2040年には30〜45GWの案件形成を行うことが盛り込まれた(図1)。さらに、風力発電を日本の新たな産業に育てることを視野に、2040年までに国内調達比率60%の目標も設定された。
その目標実現のために再エネ海域利用法が制定され、政府が洋上風力発電事業を推進するための促進区域を指定し、事業者を公募によって選定することが定められた。また案件形成の加速化のために、公募検討の初期段階から政府が各種支援を行っている。
図1 洋上風力産業ビジョンの目標達成に向けた案件形成状況
出所 経済産業省 資源エネルギー庁、「洋上風力発電に関する国内外の動向等について」、2023年11月
現在、図2に示すように促進区域は10カ所で、公募は今回で2回目となる。公募の3回目は2024年に行われる予定だ。加えて、促進区域の候補となる有望区域や準備区域もリストアップされている(図2)。
図2 再エネ海域利用法等における各地の進捗と導入目標出所 経済産業省 資源エネルギー庁、「洋上風力発電に関する国内外の動向等について」、2023年11月
早期実現のために、新たな措置や支援策も追加
洋上風力の国内調達に関しては、風車本体の資機材をはじめ建設作業のための各種船舶建造など、各方面で大手を含む各社の参入が進んでいる。現時点で国内で生産できないのは大型風車のブレード(回転する風車の羽根の部分)のみとなっている。
参入支援として経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が活用されているほか、発電所で使用する電気設備などで、地元企業とのマッチングも進められている。
現在、洋上風力発電は、主に比較的浅い海域(水深50m程度までの海域)で海底に固定する着床式洋上風力発電(前出の表を参照)が進められているが、さらに深い海域でも設置可能な浮体式洋上風力発電の導入も急がれている。今後、研究開発や投資をさらに加速させる必要があり、そのための新たな措置や支援策が検討されている。