すでに使用電力における再エネ比率66%を達成
キリンビール株式会社(以下、キリンビール)は、2024年1月から同社の全工場・全営業拠点で購入する電力のすべてを再生可能エネルギー(以下、再エネ)とし、それら拠点での購入電力由来の温室効果ガス(GHG)注1排出量はネットゼロ注2となることを発表した〔発表はキリンホールディングス株式会社(以下、キリンホールディングス)〕。
同社が今回再エネ化したのは、北海道千歳工場をはじめ4工場と全営業拠点。すでに切り替え済みの仙台工場をはじめ5工場と合わせると、同社全体の使用電力における再エネ比率は66%となる。将来的には、キリングループの事業で使用する全電力を再エネに置き換え、早期のRE100注3達成を目指す。
「キリングループ環境ビジョン2050」の一環
キリンホールディングスでは「キリングループ環境ビジョン2050」を策定、生物資源や水資源、容器包装などで「自然と人にポジティブな影響を創出」することを目的に各種の取り組みを行っている(図参照)。
気候変動のテーマではRE100に加盟し、2030年までにGHG排出量を以下の内容とする中期目標を設定している。
(1)スコープ1(自社直接排出分)とスコープ2(自社間接排出分)で50%削減
(2)スコープ3(原材料仕入れや販売後の排出分)を30%削減
2040年には使用電力の再エネ100%化を経て、最終的に2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出量をネットゼロにする目標を掲げている(2019年比、グループ全体)。
図 キリングループ環境ビジョン2050概念図
出所 キリンホールディングス株式会社、キリングループ環境ビジョン2050
SBTイニシアティブ「ネットゼロ基準」準拠の計画
キリンホールディングスが掲げている計画は、SBTイニシアティブ注4の「ネットゼロ基準」に基づいたものだ。
同イニシアティブは、企業のGHG排出量削減を促進するためにWWF注5などによって2015年に設立された国際機関。企業ごとに異なっていた「ネットゼロ」の概念や方法論をIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書などの科学的根拠に基づいて標準化し、温度上昇1.5℃注6などの気候変動対策の目標を達成するためのガイダンスとしてネットゼロ基準を発表。これに基づく計画を策定した企業を、同イニシアティブが審査・認定している。
認定を受けた企業は世界で601社、日本では23社(2024年1月15日現在)注7。キリンホールディングスもその1社となっている。
注1:GHG:Greenhouse Gas
注2:ネットゼロ:Net Zero、実質ゼロ。CO2などのGHG排出量と森林などのCO2吸収量のバランスをとって、正味(Net)のGHG排出量をゼロ(Zero)にすること。カーボンニュートラルと同義語。
注3:RE100:100% Renewable Electricity、企業等の事業活動によって生じる環境負荷を低減させるために設立された環境イニシアティブ。事業運営に必要なエネルギーを100%、再エネで賄うことを目標とする国際組織。
注4:SBTイニシアティブ:Science Based Targets Initiative(SBTi)。SBTとは、パリ協定が求める基準と整合した、企業が設定するGHG排出量削減目標のことで、SBTイニシアティブはその主導的な国際運営機関。2014年9月に設立。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20221201.pdf
注5:WWF:World Wide Fund for Nature、世界自然保護基金。SBTイニシアティブの運営には他にWRI(世界資源研究所)、UNGC(国連グローバル・コンパクト)が関与している。
注6:世界の平均気温の上昇を産業革命以前(1850〜1900年)に比べて1.5℃に抑える努力目標。2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21、パリ協定採択)で掲げられた。 その後、2021年のCOP26で「1.5℃」は努力目標から事実上の目標として合意された。
注7:https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/409.html
参考サイト
キリンホールディングス株式会社ニュースリリース、2023年12月25日、キリンビールの全工場・全営業拠点で購入する電力を100%再生可能エネルギー化
キリンホールディングス株式会社ニュースリリース、2022年8月5日、世界の食品企業として初めてSBTネットゼロの認定を取得