AITRASのロードマップ:2026年度内にソフトバンク商用網で展開
AIサービスのニーズが見込まれるのは、まずユーザーが多く見込まれるエリアだ。周波数帯でいえば5G TDD向けのキャパシティバンド注14で、ソフトバンクでは最短で2026年度をめどに、この周波数帯へのAITRASの導入を進めている。キャパシティバンド以外の周波数帯にも順次導入を進める予定だ。
「今AIは、都心のような人が多くいる場所での利用を想定していますが、将来は郊外での活用も進むでしょうし、工場などでIoTの代替えとしても活用するようになるでしょう。今後は、そのような状況に応じて順次展開していきたいと思っています」と湧川氏。
現在、技術面ではRANは4T4Rであるが今後は64T64Rに増強し、Massive MIMOやMU MIMO注15の導入も進める。これを2025年度中に完成させてソフトバンクが求めるキャリアグレードを確立したい、と湧川氏は語る。
AITRASの商用化にあたっては、まずはプライベート5Gといった局所的なミニマクロ型での提供の準備を進めている。AITRASであれば、RANからGPUサーバまでシングルパッケージで提供できる。その後、2026年から2027年をめどに、同社の商用網や海外の移動体通信事業者への展開を見据えている(図14)。
図14 AITRASの開発ロードマップ
出所 ソフトバンク株式会社提供資料「ソフトバンクのAI-RANの実装と新プロダクトについて」
AITRAS普及のための環境整備も促進
AI-RANとAITRASは、まったく新しいコンセプトに基づくソリューションで、その普及には、今後、理解者やアライアンスのメンバーを増やし、エコシステムを構築していくことがカギとなる。
AI-RANアライアンスは、2025年1月時点で加盟企業は65社となっているが、さらに多くの企業や団体が加盟を検討している注16。
また、RANのオープン化とインテリジェント化を目指すO-RANアライアンス(Open Radio Access Network Alliance。2018年2月に設立)には、新たに湧川氏がボードメンバーに立候補し選出されている(2024年12月)。
これらに加えてソフトバンクでは、AIなど最新テクノロジーのオープンソースネットワーキング・プロジェクトとして世界最大級のLF Networking(LF:Linux Foundation)にプラチナボードメンバーとして2024年11月に新たに参加するなど、AITRASの導入と普及促進のための環境整備に活動を強化している。
注14:キャパシティバンド:通信容量確保の周波数帯。1,000MHz(1GHz)の周波数帯は、大容量のマルティメディア移動通信を目的とした周波数帯。
注15:MU MIMO:マルチユーザーマイモ。「1対1」で送受信を行うシングルユーザーMIMOに対して、1対多という形で複数ユーザーに対して送受信を行う。
注16:AI-RANアライアンスへは、以下のURLから参加申し込みができる。
https://ai-ran.org/engage/membership-application/
参考サイト
ソフトバンク株式会社プレスリリース、2024年11月13日「AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」を開発」
ソフトバンク株式会社プレスリリース、2024年11月13日「AI-RANの統合ソリューション「AITRAS」のエッジAIサーバーにNVIDIA AI Enterpriseを実装」
ソフトバンク先端技術研究所、【12/17更新・メディア説明会アーカイブ公開】AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」を発表