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透明なフィルム型太陽電池、中国電力と麗光が開発

窓や壁など新たな設置場所を開拓
2025/09/11
(木)

透明なフィルム型の太陽電池を共同開発

 中国電力株式会社(以下、中国電力)と薄膜加工品を製造・販売する株式会社麗光(以下、麗光)は、透明なフィルム型の太陽電池を2025年度から共同開発する(図1)。従来、太陽電池の設置が困難だった建物の窓などに導入でき、太陽光発電の適地不足の解消や多様化するニーズへの対応につなげるという。2025年9月9日に発表した。

図1 中国電力と麗光が開発する「シースルー型有機薄膜太陽電池」は、従来設置が難しかった建築物の窓(左)や農業用ビニールハウス(右)への設置が可能

出所 中国電力株式会社 プレスリリース 2025年9月9日、「「シースルー型有機薄膜太陽電池モジュールシステムの開発」がNEDO公募事業に採択」

 

窓や農業用ビニールハウスへの設置が可能に

 中国電力と麗光が開発する「シースルー型有機薄膜太陽電池」注1は、発電層が薄く透明であるのに加え、軽量で柔軟性がある。これにより、これまで設置が難しかった建築物の窓や農業用ビニールハウスといった場所に設置ができるという。また、色調表現の自由度が高いほか、遮熱性によって省エネルギー効果も期待できるとする。2025年度から発電効率、耐久性、透明性の向上および低コスト化を進め、2029年度末までの実用化を目指す。

 開発では、麗光が、同社の機能性フィルム製造技術を応用し、高効率かつ高耐久な太陽電池モジュールを開発・製造する。中国電力が、太陽電池モジュールを実際の使用環境下で実証し、発電量や耐久性に関するデータを取得・分析する。そのデータに基づき、最適な用途や設置方法、システム構成の開発を進める。

 加えて、モジュールの性能向上と低コスト化という技術的課題については、同分野で研究実績のある金沢大学、大阪大学、広島大学が参画する(図2)。具体的には、金沢大学が高耐久化技術を、大阪大学が電荷輸送層・透明電極技術を、広島大学が低コスト高性能材料を開発する。

図2 シースルー型有機薄膜太陽電池の開発体制

出所 中国電力株式会社 プレスリリース 2025年9月9日、「「シースルー型有機薄膜太陽電池モジュールシステムの開発」がNEDO公募事業に採択」

 この開発プロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー‧産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に「シースルー型有機薄膜太陽電池モジュールシステムの開発」として採択されている。


注1:有機薄膜太陽電池:シリコンなどの無機材料ではなく、炭素を含む有機化合物を半導体材料として用いる太陽電池のこと。印刷技術などを応用して製造でき、薄型・軽量で柔軟性が高いという特長を持つため、曲面や多様な製品への応用が期待されている。

参考サイト

中国電力株式会社 プレスリリース 2025年9月9日、「「シースルー型有機薄膜太陽電池モジュールシステムの開発」がNEDO公募事業に採択」

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