中国電力は2017年6月29日、同社が運営している石炭火力発電所で石炭と合わせてアンモニアを燃焼させる試験を実施すると発表した。この試験は内閣府総合科学技術・イノベーション会議が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム」の「エネルギーキャリア」に関する委託研究課題「アンモニア直接燃焼」の一環として、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の委託を受けて実施する。試験の場は岡山県倉敷市にある「水島発電所」の2号機。試験期間は7月3日から9日までの予定。
図 水島発電所の位置。岡山県の南端にある
出所 中国電力
アンモニア(NH3)は窒素原子(N)1つに水素原子(H)3つで成り立っている。水素原子を多く含んでいるため、水素の輸送、貯蔵にアンモニアを利用する手法を提案する動きもある。水素を液化させるにはマイナス250℃以下の超低温まで温度を下げなければならないが、アンモニアならマイナス33℃程度まで冷やせば容易に液化できる。アンモニアの形なら容易に液化保存できるので、水素をアンモニアにして貯蔵しようというアイデアだ。
今回の試みは石炭火力発電所のボイラーに気体となったアンモニアを直接噴射して、アンモニアのうち水素原子の分を燃焼させようという取り組みだ。アンモニアは燃焼させてもCO2を発生させないため、混焼することで石炭火力発電所のCO2排出量を削減する効果も期待している。アンモニアを構成する窒素(N)が燃焼時に酸素などと結合して窒素酸化物(NOx)を発生させるが、中国電力によると、今回の試験ではアンモニアを混焼させることでNOxの排出量が大きく増えることはなく、発電所が備えている排気浄化設備で取り除けるという。ちなみに、事業用の火力発電所でアンモニアを混焼させる試みは今回が日本初になるという。
図 水島発電所2号機の試験設備の概要
出所 中国電力
中国電力によるとアンモニアはメタンやプロパンなどの燃料に比べると、着火温度が高く、燃焼速度が遅いという傾向があるという。試験期間中はアンモニアを混焼させても安定して燃焼するように、発電設備の制御方法や設定を工夫するとしている。
今回の試験では、供給する燃料全体に対して0.6%の比率でアンモニアを投入し混焼させる。水島発電所2号機の定格出力は156MW(15万6000kW)だが、この規模で0.6%のアンモニアを混焼させると、年間でおよそ4000トンのCO2排出量削減効果が得られるという。ちなみに混焼率を20%まで引き上げると、CO2排出量削減効果は年間でおよそ13万4000トンにもなるという。ただし、アンモニア混焼率を引き上げると、発電所の出力が低下する可能性もあるという。
中国電力は今回の試験結果を検証して、事業として成立すると判断できたら、同社のほかの石炭火力発電所でもアンモニア混焼を実施することを検討するとしている。実施すると決まったら、採算を考えながらアンモニア混焼率を決めるともしている。