森林クレジット創出支援システムで作業量を約90%削減
宮崎県延岡市は、「森林由来J-クレジット(以下、森林クレジット)」の創出を支援するシステムの実証を実施した(図1)。実証では、森林クレジットの申請業務の一部を自動化し、作業量を約90%削減したという。システムを開発した旭化成株式会社(以下、旭化成)が、2025年11月7日に発表した。
図1 森林クレジット創出支援システムを活用した申請プロセスの効率化イメージ
出所 旭化成株式会社 プレスリリース 2025年11月7日、「森林由来J-クレジット創出支援システムを開発 宮崎県延岡市での実証において、申請業務を90%削減に成功」
CO2吸収量算定・損益シミュレーション・計画書策定を自動化
森林クレジットは、森林管理によって生じる二酸化炭素(CO2)吸収量を「環境価値」として評価し、クレジット(排出権)として国が認証する制度。クレジットの購入者は自社のCO2排出量の一部をオフセット(相殺)でき、創出者はクレジットの売却益を森林管理の資金源に活用できる。
延岡市は、同市が発行した森林クレジットの販売を、2025年10月1日から企業向けに開始している(図2)。2025年度に1804トン、2040年度までの16年間で合計3万4370トン相当のクレジット創出を予定している。過去には、森林クレジット創出を市単独で試みたこともあったが、専門知識が必要なうえ、プロジェクト実施地の選定では地図情報との突合せや採算性評価に多くの時間がかかり、申請書類も転記ミスが発生しやすく、通常業務との両立が難しかったという。
図2 延岡市による森林クレジットを活用した地域経済循環モデルのイメージ
出所 旭化成株式会社 プレスリリース 2025年11月7日、「森林由来J-クレジット創出支援システムを開発 宮崎県延岡市での実証において、申請業務を90%削減に成功」
同市の実証では、旭化成が開発した支援システムを試用し、検証した。同システムは、都道府県、市町村、森林組合が保有する森林や地理の情報をデータベース化する。統合したデータをもとに、CO2吸収量の算定、損益シミュレーション、計画書の策定を自動で実行する。これにより、従来は1.5~3カ月要していた作業が約4~5日で完了可能になるとし、専門知識がなくても短時間での申請を可能にするという。
宮崎県延岡市の農林水産部林務課 課長である赤木氏は、「森林由来J-クレジット推進協議会の取り組みとして、同システムをモニター的に活用した結果、クレジット創出量の算定や書類作成の多くが自動化され、専門知識がなくても手順に沿って進めるだけで正確な申請書類を作成できることを確認した。今後、システム活用により、職員の負担を大幅に軽減し、限られた人員でもJ-クレジットを創出できる体制整備につながると期待している」と述べる。
日本は国土の約7割を森林が占める一方、管理の担い手不足や高齢化により森林荒廃が進み、土砂災害や生物多様性の喪失といった課題が顕在化している。森林クレジットは、こうした森林を守り活用する有力な仕組みであるものの、これまでのクレジット創出の過程では、森林簿や森林計画図といった各種データの収集、候補地の選定、吸収量の算定などの作業が必要であり、申請手続きに多大な時間と労力がかかるとともに、専門知識がなければ認証取得が困難であるという。
参考サイト
旭化成株式会社 プレスリリース 2025年11月7日、「森林由来J-クレジット創出支援システムを開発 宮崎県延岡市での実証において、申請業務を90%削減に成功」













