【3】技術要件に関する討議
(1) NICT(NTT、パナソニック、ソニーなど5社の連名)が、コンピュータでの方式シミュレーションに必要とされる要件をまとめたスキームと、個々の要件のパラメータについて具体的な提案を行った(06/467r0、06/477r1)。
提案では、リンク・バジェット、フレーム・デザイン、BER(Bit Error Rate:ビット誤り率)・PER(Packet Error Rate:パケット誤り率)性能の表現の具体例、パワー・アンプ(PA:Power Amplifier)、位相雑音(PN:Phase Noise)などのパラメータの具体例、さらにこれらを使用したシングル・キャリア方式のBPSK(Binary Phase Shift Keying、2相位相変調)、QPSK (Quadrature Phase Shift Keying、4相位相変調)、OQPSK(Offset QPSK、オフセットQPSK)、MSK(Minimum Shift Keying、位相変化を±90°とする方式)変調におけるシミュレーション結果の例などが紹介された。
(2) 懸案となっていた伝送チャネル数について、7GHz幅の許容周波数帯域内に最低3チャネルを確保することが投票により承認された。
(3) 技術要件書の中で指定される方式性能比較シミュレーションのための構成モデルと、各種パラメータやその指定方法が参加者のストロー・ポールにより設定され、最後に投票により一括承認された(05/430r12)。今回決まったモデルやパラメータは次のとおり。
・標準受信アンテナの利得パターンおよび指向性
・アンテナ方向の指定方法
・PAモデル
・位相雑音(PN)モデル
・LOSおよびNLOSのパス損失モデル
【4】その他の発表
(1) 「WirelessHD」からの発表
米国Si Beam社と日韓の大手情報家電メーカー6社で結成した「WirelessHD SIG」(以下、WiHD ※1)について、E. Barrett氏(Sony)が、WiHDを代表して発表を行った(06/465r0)。
寄与文書は、WiHD方式のチャネル・プランを説明したもので、57GHzから66GHzの帯域に、2GHz幅のハイ・レート物理層(HRP)チャネル4本と138MHz幅のロー・レート物理層(LRP)チャネル3本が配置される構成になっており、それぞれのチャネルの送信占有帯域スペクトラル・マスクと最小受信感度が示されている。
同氏から「WiHDはTG3cにリエゾンとして出席し、15.3cデバイスとの共存を目指しながら相互の干渉回避に協力したい」旨の発言があったが、技術内容についての説明はなかった。
(2) 単キャリア方式(SC)とOFDM方式をブリッジさせる方式の提案(AOL)(06/447r2)
(3) ミリ波CMOS RFIC試作の紹介(台湾国立大)(06/475r0)
(4) 旅客機内のミリ波のチャネル・モデル測定の紹介(IHP)(06/476r0)
用語解説
※1 WirelessHD
2006年秋(10月31日発表)に、松下、NEC、ソニー、東芝、韓国LG、サムスン、米国SiBEAM社の7社が発足させた業界団体。60GHz帯の無免許帯域を使って、主に家庭内における非圧縮HD映像の伝送を実現する2〜5Gbpsの無線通信規格の策定を目指している。早ければ2007年春にも仕様の第1版を発行する(http://www.wirelesshd.org/ )。
計画スケジュールの変更
標準化完了は2008年5月を予定
次回の英国ロンドン会合(1月14~19日開催)で、ミリ波WPANに関する方式提案の募集(CFP:Call For Proposals)、関連ドキュメントの完成、および発行の予定となった (05/311r11)。それ以降のスケジュールは次のように順延された。
CFPの締め切りは、2007年5月会合(カナダ・モントリオール)の1週間前と決まり、5月会合で全応募提案が発表される。それを受け、2007年7月(サンフランシスコ)に提案の絞り込みが実施され、標準化完了は2008年5月を予定している(図1)。
図1 802.15.3cの標準化作業スケジュール(変更後)
関連リンク
文書資料のダウンロードについて
今回紹介した文書資料は、以下のURLからダウンロード可能。
http://www.802wirelessworld.com/index.jsp (要メンバー登録:無料)
http://www.ieee802.org/15/pub/TG3c.html (登録不要)