[標準化動向]

802.15.3c(無線PAN)の標準化動向(3):802.15.3c MACの標準化の検討へ!

2006/10/04
(水)
SmartGridニューズレター編集部

IEEE 802.15.3c(以下、802.15.3c)は、60GHzのミリ波WPAN(Wireless Personal Area Network)の物理層の標準化を行うことを目的としたタスク・グループ(TG)である。現行規定(PAR:Project Authorization Request)上は、802.15.3cのMAC層に関しては,既存の802.15.3 MACを使用することになっており、MAC層の標準化は作業対象になっていない。しかしながら、802.15.3cの物理層の標準化にあたっては既存802.15.3 MACの変更は必要不可欠という共通認識があり、MACの検討も併せて議論されることになった。今回は、このIEEE 802.15.3 MAC(Media Access Control、媒体アクセス制御)の仕組みを説明し、802.15.3cのMACの検討状況を紹介する。

802.15.3ネットワークの概要:PNCとDEV

802.15.3 WPANの構成要素は、デバイス(DEV:Device)と呼ばれる。上位層から指令を受けると、そのDEV(マスター)が周辺にある他の複数のDEV(スレーブ)を束ねてひとつのピコネット(Piconet)を形成する。ピコネットとは、1つのマスターに対して、複数のスレーブを接続して構成されるネットワークである。

この統制役のDEV(マスター)は、ピコネット・コーディネータ(PNC:Piconet Coordinator)と呼ばれる。PNCは、ピコネット内で単にDEVとしても機能する。 また、DEVにはPNCとして機能できるものと、機能できないものがある。

PNCは、ビーコン(Beacon、基準信号)を送出してネットワークのタイミングを調整する機能を備えている。DEVは、ネットワークに従属し、ビーコンを受信してPNCから指定されたタイミングでデータの送受信を行う。

PNCは、各DEVに割り当てるタイム・リソース(時間間隔など)を管理することによって、各DEVの通信路の形成を制御し、これにより任意のDEV間で1対1(ポイント・ツー・ポイント)の通信路が形成され、データ転送が行われる。PNCは、通信が終了するとピコネットを解消し、通信路を開放する。

ひとつのピコネットは、ひとつのPNCによって管理されるが、ピコネット内の1つのDEVがそのピコネット外のDEVを構成メンバーにしてPNCとなり、別のピコネットを形成(従属ピコネット構成)することもできる。

また、PNCは状況によって、他に自分よりも適切なPNC候補のDEVを見つけてPNC役を引き継ぐこともできる。図1に、基本的なIEEE 802.15.3ネットワークの構成例を示す。

図1 802.15.3ネットワークの構成例
図1 802.15.3ネットワークの構成例

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