標準化の経緯と現状
インターネットは、IETF (Internet Engineering Task Force)における技術の標準化、RIR(Regional Internet Registries)によるIPアドレス等の資源管理ポリシー策定、およびNANOG(North America Network Operator's Group)等の地域ネットワーク運用コミュニティにおける運用技術に関する議論という、技術/資源管理/運用の3つの大きな軸により進展している。
IPv6においては、従来はIETFでの技術標準化が中心的存在であったが、資源管理組織におけるIPv6アドレス配布の開始後、IPv6アドレス配布ポリシーに関して活発に議論されるようになり、またIPv6ネットワークの世界的な進展により、運用コミュニティのミーティングでもIPv6に関する話題が取り上げられるようになってきている(RIRにおけるIPv6関連ポリシーの動向については「JPNIC通信」に詳しい)。
IETFでは従来、ipng wg(IP Next Generation Working Group)とngtrans wg(Next Generation Transition wg)にてIPv6技術の標準化作業が行なわれてきた。標準化の進展に伴い、ipng wgはipv6 wgが引き継ぎ、またngtrans wgは移行技術からオペレーションに特化したv6ops wgに引き継がれた。
現在では、IETFにおいては各種プロトコル仕様策定の際、IPのバージョンに依存しない標準化を実施することが基本要件になっており、IPv6に関連した標準は多くのワーキンググループで議論されている。図1に、IETFにおける主なIPv6関連WGの変遷を示す。
2005年11月にカナダのバンクーバで開催された ipv6 wg のミーティングにおいて、ipv6 wgは収束フェーズに入り、今後IETFにおけるface-to-faceミーティングを実施しないことが決定した。これは、ipv6がプロトコルとしては完成していることを内外にアピールすることを一つの目的としている。
2005年11月のこの時点で、ipv6 wgは、以下の項目を終えたあと、WGを終了することとされている。
(1) RFC3041のIPv6プライバシーアドレスの改版(Draft Standardへ)
(2) ICMP name lookup のRFC化
(3) IPv6 over PPP(RFC2472) の改版 (Draft Standardへ)
(4) RFC2461 におけるMフラグとOフラグの扱いの明確化
(5) アドレス選択(RFC3484)の改版
(6) IPv6のベース仕様とされているRFC(現RFC2460のコア仕様、RFC2461の近隣探索、RFC2462のステートレスアドレス自動設定、RFC2463のICMPv6など、現在はDraft Standard状態)を、標準化の最終段階であるStandardにする作業の実施
2006年12月時点では、上記の(1)と(3)は改版作業が進行しておりRFC化が目前、(2)はRFC4620として発行済、(4)は改訂文書を新ドラフトに反映済、(5)は議論中となっている。(6)についても、それぞれの文書のステータスはまちまちであるものの、改版作業が進行している。
参考までに、IETFにおける標準化のプロセスを図2に示す。現在、4,000を超えるRFCが発行されていまるが、StandardまでになっているものはIP(インターネットプロトコル)、UDP、TCPなど70個弱にすぎず、多くがProposed StandardやDraft Standardの状態で広く使われているのが現状である。