IETF 67 におけるIPv6関連WGの動向
IETF 67概要
第67回IETFは、2006年11月5日(日)から11月10日(金)まで、アメリカ、カリフォルニア州のサンディエゴにて開催された。
IETF自体の参加人数であるが、下図3に示すように、ここ数回は1,200人程度の人数で推移している。IETF参加者の国別割合を右図4に示す。国ごとの比率は、ここ数回ほぼ同様で、USの参加者が大多数を占め、日本、韓国、ドイツがそれに続いている。
v6ops (IPv6 Operations) WGの動向
v6ops WGは、IPv6/IPv4の共存時における運用や、セキュリティに関する話題を主に扱うWGである。今回は、毎回実施されるWGドキュメントについての議論の他に、NAT-PTの後継プロトコルについての提案、IPv6ネットワークのリナンバリングに関する議論、および、複数アドレス選択に関する議論が実施された。
RFC2766で定義されているNAT-PT(参考:IPv6移行メカニズム概論 第2回 )は、IPv6/IPv4の相互プロトコル変換を実施する仕組みである。NAT-PTは、運用やセキュリティに多くの問題が指摘されており(draft-ietf-v6ops-natpt-to-exprmntl に詳述されている)、この仕様は Proposed Standard から Historic のステータスに変更されることになっている(当初、Experimentalステータスへの移行が予定されていたが、図2 IETFにおける標準化のプロセス に示したように、IETF文書のステータスは、Proposed Standard からはExperimental への移行ができないため、Historicにする方向に変更された)。
しかしながら、IMSネットワークでのアドレス変換の必要性があるとの意見があり、同機能を持ったプロトコルについて、再度提案/議論が実施されることになった。
WGドキュメントの議論では、
(1) 802.16ネットワーク(WiMAX等)におけるIPv6デプロイメントシナリオ
draft-ietf-v6ops-802-16-deployment-scenarios
(2) IPsecを用いた、IPv6トンネルのセキュア化
draft-ietf-v6ops-ipsec-tunnels
(3) IPv6ユニキャストアドレス割り当て
draft-ietf-v6ops-addcon
(4) キャンパスネットワークにおけるIPv6移行シナリオ
draft-ietf-v6ops-campus-transition
(5) IPv6におけるポートスキャン
draft-ietf-v6ops-scanning-implications
の各文書のレビューがあり、それぞれ、関連WGへの意見照会後にRFC化に向けたラストコール(WGLC:ワーキンググループラストコール)が実施されることになった。これらWG文書の議論後、IPv6ネットワークのリナンバリングに関する議論、および、IPv6の複数アドレス選択に関する議論が実施された。
v6opsへの提案文書に関する議論の後、オープンな議論として、IPv6のマルチホーミングについての議論が実施された。マルチホーミングは、IPv6の課題の一つであり、過去から議論が続いている。
最近、「JPNIC通信 第3回 IPv6におけるマルチホームの実現に向けて 」にも紹介されているように、IPv6においてもIPv4と同様にプロバイダ非依存アドレスを配布しよう、という動きが現実のものとなり、実際にARINでは配布が開始され、APNICでも配布される予定となっている。
これらの動きは、マルチホーム問題に一定の解を与える一方で、IPv6の経路情報の増大を招くことが懸念されている。IPv4/IPv6の経路情報増大に関する問題については、IETFの全体会議(毎回、木曜日夕刻に開催されるプレナリセッション)においても提起されており、今後、解決に向けての議論が加速されると思われる。