TD-SCDMA対応の計測器、半導体チップの開発
また、TD-SCDMA試験用の信号発生器や変調解析などの計測器については、アジレントやローデ・シュワルツなどと並んで、アンリツ(写真9)が日本として唯一善戦しているところが印象的であった。とくにTD-SCDMA用のシグナリング・テスタについては、他社にプロトコル解析の機能がないため競合がない状況にあり、中国政府の端末認証機関に納入しTD-SCDMA端末の試験に使用されているという。
チップの外観
さらに、すでにTD-SCDMA対応の端末/基地局向けの半導体チップも開発され、例えば、通信機器メーカーの展訊通信(SPREADTRUM Communications)からはSC8800シリーズのTD-SCDMA/GSM/GPRS用のデュアル・モード・マルチメディア・ベースバンド・チップ(写真10)や、フリースケール(Freescale)のTD-SCDMA基地局用DSP(Digital Signal Processor、大唐移動が採用)のほか、テキサス・インスツルメントなどからもTD-SCDMA用のチップセットが提供されている。
TD-SCDMAのライセンスは2007年2月頃か
このTD-SCDMAのフィールド実験は、今年(2006年)2月から試験の終了期限を10月に設定して行ってきたが、端末の安定度が不十分なところもあり、さらに延期されることになった(これまでもたびたび延期されてきている)。
ただし、北京オリンピックで、スポーツの実況放送などをTD-SCDMAの3G携帯電話で提供できるようにするには、ネットワークの構築を含めて、2007年の旧正月に当たる2月あたりがリミットとされている。このようなこともあり、TELECOM2006のセレモニーに参加した中国・情報産業部の責任者が、TD-SCDMAサービスの開始時期について「2008年の北京オリンピック以前に開始できると思う」と発言したことは、大きな注目を集めた。
中国政府は、3Gへの移行については、中国から提案し国際標準化されたTD-SCDMA方式という国産技術の普及を最優先に位置づけているため、TD-SCDMAのライセンスを出す前に、W-CDMAやCDMA2000にライセンスを出すことはありえない状況となっている。これは、すでに十分技術が確立しているW-CDMAやCDMA2000に先にライセンスを出すと、市場をこれらに取られてしまう懸念があるからである。
以上のように、TELECOM2006は、第3の3G方式であるTD-SCDMAの離陸が間近いことを実感させたが、同時に来たる2007年はモバイルの世界に歴史的転換を予感させるものがあった。今後、TDIAではTD-SCDMAについて、サービス開始後はまず大都市を中心に普及させ、3年間で約5,000万人の加入者を見込んでいるという。
さらに、中国の電話市場は2010年に10億ユーザーになり、そのうちの約6億人以上が携帯電話ユーザーとなると想定されている。そして、その全体的な売上高は、1,000億USドル(12兆円)に達すると見られている。