質への転換点となったTELECOM2006
本格的な開幕に先立って、2006年12月4日(月)、ITU TELECOM WORLD 2006(略称:TELECOM 2006)の初日、ITU主催の記者会見が開かれ、今回のTELECOMの特徴が発表された(写真1)。記者会見には、ITU事務総局長の内海善雄氏(Mr. Yoshio Utsumi;写真1中央)、ITU TELECOMエグゼクティブ・マネージャのフェルナンド・ラグラナ氏(Mr. Fernando Lagrana;写真1左)、そしてITUディレクタ 企業通信担当のフランシーヌ・ランバート氏(Ms. Francine Lambert;写真1右)らが参加した。
写真1 記者会見の様子 (左からラグラナ氏、内海氏、ランバート氏)
3Gモバイルの標準化が最も印象に残る出来事
2006年12月末で、8年間のITU事務局長の任務を終了する内海氏は、自身の就任期間を振り返り、「8年間の役目を無事に終了することができて大変満足している。その中で最も印象的なことは、3Gモバイルの標準化という成果を上げられたこと」「しかしその一方で、その後の3Gの周波数オークションについては、多くの混乱を招いたことは遺憾であった」と語った。
さらに「就任後初めてのTELECOM 99は、ITUのイベントとしては一番盛り上がりを見せた年でありTELECOM史上最大の出展者数、来場者数を記録した。その次のTELECOM 2003は、電話(PBX)からインターネット(IP)へ、ダイヤルアップからブロードバンドへと歴史的な転換点の年となり、ITUとして今後の課題の見えたイベントであった」と続けた。
また、「ITUが果たす役割は、参加国に対して情報を提供したり議論したりする場を提供するなど、あくまでも支援する立場である」と述べ、「今回、初めてTELECOMをジュネーブから中国の架け橋である香港に場所を移したことは、ICT産業の発展にとっては大変意義のあることであった」とした。
写真2 来場者で活気づくメインHall 1の様子
数字から見たTELECOM2006の特徴
ITUによれば、過去35年間の累積で、TELECOMへの来場者数は80万人、出展社数は6,000社を超えている。また、今回のTELECOM 2006の出展社数は、40カ国から695社、来場者数は160カ国から3万5千人~5万人が見込まれている。これは、前回のTELECOM 2003の出展社数が911社、来場者数が10万1千人という数値と比べると大きな差が見られる。
ジェネラル・マネージャのF. Lagrana氏は、「今回発表した数値は現実的な数値であり、来場者、出展者の数は少なくなってきているが、全体の質は上がり、我々が目的とする方向に向かっている」と、今回のTELECOM 2006が数から質への転換点になっていることを強調した。
今回の来場者の国別の構成比は、米国が20%、欧州が18%、中東・アジアが60%、アフリカが2%。業界・政界のVIPは150カ国から2,000人、またジャーナリストは、45カ国500メディアから1,000人が参加している。
今回の特徴として、初めてのテーマ・パビリオンが設置された。具体的には、「ITU G-PON」パビリオンや「The INTERNET」パビリオン、「WiMAX Forum」パビリオンなどである。
さらに同氏は、「TELECOMは、あくまでもベンダ・ニュートラルな立場であり、テレコム産業全体の旗手的な視野にたって運営する非営利のイベントである」と続けた。
ITUの活動のターゲットとしては、これまでインフラの整備や各国に対しての政策的な働きを主に行ってきたが、「今後は人材の教育が重要である」と述べた。これに関連して、すでにシスコシステムズが、トレーニング・センターを通じて人材育成のための支援をしていることも発表された。
今回のTELECOM 2006のテーマは“Living the Digital World”。すなわち、これまでのICTのインフラを構築するというフェーズから、今後は実生活の中でICTを「活用する」というフェーズに進化していくということである。数から質の向上を目指すという新しい課題が明確となった、TELECOMの今後の新しい取り組みが期待される。次回のTELECOMは、3年後の2009年にスイス・ジュネーブで開催されることになった。