米国ベライゾンは3月からMediaFLOサービスを開始
クアルコムは、6月8日、ホテルオークラ東京にて「Media FLOカンファレンス2007」を開催し、ケータイなどで新世代の多チャンネル放送サービスを実現するテクノロジー「MediaFLO」の最新状況を公開した。同社は、Media FLOテクノロジーの国際標準化を目指しており、通信と放送を融合する新しい放送サービスの担い手として世界中でパートナーを獲得し始めている。
アルコムジャパンの山田社長
MediaFLOの日本への展開を強調
まず、クアルコムジャパン(株)の山田純代表取締役社長は、開会の挨拶において、放送と通信の融合の重要性を述べた後、米国で実サービスが開始された同社のMediaFLOテクノロジーの日本における今後の展開を強調した。山田氏は、MediaFLOテクノロジーがCDMAやWCDMAによる3Gケータイにインテグレーションされて使われる場合に使用料金を無料とすること、また、MediaFLOテクノロジーを使ったデモジュレータ(復調器)やデコーダ(符号化器)のチップを開発したいというチップセット・ベンダに対しても、使用料金を無料とすることを提案していることをアピールした。
米国ベライゾンが3月からサービスを開始
米クアルコム本社のオマール・ジャベード(Omar Javaid)MediaFLOテクノロジー部門 ビジネスディベロプメント バイスプレジデントは、「Our Global Vision for the Mobile TV Market」と題して米国での状況を説明し、すでに、米国ベライゾンが3月からサービスを開始したことなどを紹介した。
予想外の広い利用状況と「非ケータイ」利用へのアプローチ
同じく米クアルコム本社のジム・コイヤー(Jim Coyer)MediaFLOテクノロジー部門 プロダクトマネージメント スタッフ・プロダクト・マネージャは、「MediaFLOプラットフォーム:特徴と機能」と題して、なかなか見事な日本語でMediaFLOの機能を説明した。また、これまでの利用調査から、同社が想定していた利用イメージよりもはるかに広い利用者層、時間帯、パターンが見られたと発表。加えて、「非ケータイ」利用へのアプローチとして、カーナビや携帯ゲーム機に加えて、携帯電話機能のないMediaFLO専用端末の試作品を紹介した。なお、この試作品は会場に実機が置かれ、実際に触れることができた。
クアルコムとは独立して活動、標準化とメンバーの意向を担うFLOフォーラム
次に、FLOフォーラムのカミール・グライスキ(Kamil Grajski)プレジデントが登壇し、「Introduction to the FLO Forum」というタイトルで、FLOフォーラムを紹介した。このフォーラムは、MediaFLOに関してTIA(米国電気通信工業会)やITU(国際電気通信連合)などへの世界的な標準化をプロモートしている。クアルコムとは独立して活動しており、参加メンバー各社の意向を活かすことで、80社もの参加を得ているという。なお、現在、15社以上が参加を検討中。
KDDIとクアルコムによる市場性、事業性の検証が進む
日本からは、KDDIとクアルコムの共同出資会社であるメディアフロージャパン企画(株)の増田和彦代表取締役社長が「MediaFLOによる新たなビジネスの可能性」と題した講演を行った。増田社長は、MediaFLOが単なるケータイ向け放送サービスではなく、ケータイなど向けのマルチメディア放送システムであり、有償/無償での多チャンネル放送サービスであると説明した。よく尋ねられるというワンセグとの競合については、競合のモデルは成立困難であり、ワンセグと共存が可能なビジネス・モデルの構築と、ワンセグとの連携が必須との回答を示した。なお、ニーズは必ずしもリアルタイム系コンテンツばかりではなく、ストリーミングやキャスティングにもあり、質の高さがポイントになるとも述べた。日本では、地デジ開始によって周波数が空くVHF/UHF跡地利用の検討が始まっていることもあり、2011年の地上波アナログ放送の廃止が待たれるという。
ソフトバンク・グループは待てない、2009年中にも手を打ちたい
最後に登場したのは、ソフトバンクの100%子会社であるモバイルメディア企画(株)の矢吹雅彦代表取締役社長で、「MediaFLOでの新たな携帯向け放送サービス」というタイトルで、同社はケータイ向け放送配信サービスの企画を行うソフトバンク・グループの一員としての見解を示した。
矢吹社長がMediaFLOにおいて注目しているのは、周波数効率の高さ。そして、リアルタイムよりも蓄積型サービスの方がケータイに向いていることが「ワンセグとの違いとして活きるのではないか」と語った。また、ビジネスモデルとして、コンテンツの利用者サイドだけではなく、提供者への課金(アップロード料、帯域買取など)も考えられるのではないかと提案。日本での準備が整うのを待つのではなく、2009年中にもなんらかのサービスを開始したいと語った。
会場後方で実機デモも実施、講演資料とビデオはWebに掲載
当日、会場後方においてLG製とサムソン製のMediaFLO実機によるデモと、アンリツおよびROHDE&SCHWARZ(ローデ・シュワルツ)による関連製品のデモも行われた。
また、クアルコムジャパンは、5月にKDDI、デジタルハリウッドと共催した「BREW JAPAN Conference 2007」と同様に、講演資料とビデオをWebに掲載している。掲載期限は不明だが、興味のある方には早めのダウンロードを勧める。
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■ Media FLO Conference 2007
http://www.mediaflo2007.com/
※ 写真提供:クアルコムジャパン