写真1 「Interop Tokyo 2007」会場入り口の案内看板
実証実験中の「NGNフィールドトライアル」の紹介からNGNとOCN/Arcstar IP-VPNとの相互接続をトライ
次世代のICT(情報通信)ソリューションを目指して、ダイナミックな展開を開始したNTTコミュニケーションズは、実証実験中の「NGNフィールドトライアル」のデモをはじめ多彩な展示を行った(写真2)。具体的には、NNI(ネットワーク間インタフェース)のISP接続機能でNGNとOCNとの相互接続を、また、NNIのイーサネット通信機能でNGNとArcstar IP-VPNの相互接続をトライした。
さらに、NGNを利用して家族の安否確認するために、被災時の避難住民の安否情報を迅速に公開するデモ展示などを行う一方で、最新の高性能圧縮技術であるH.264/AVCを用いた、ハイビジョン・マルチキャスト配信/ハイビジョンVoDなどのデモを行い、次世代IPTVのイメージをアピールした。
写真2 NTTコミュニケーションズ・ブースのNGNトライアルの状況
ウルトラ3Gをさらに進化させたFMCに放送を融合させた「FMBC」をデモ
KDDI(写真3)は、NGNという用語は使用していないが、「ウルトラ3G構想」を打ち出し、2007年度末を目指してオールIP化の実現を目指して着々と次世代ネットワーク(NGN)の構築を推進している。KDDIは、1社で固定網と移動網の両方を保有しているため、これらを融合させて「FMC」を実現できるネットワーク環境を備えている。また、FMCに放送を融合させる「FMBC」(Fixed Mobile and Broadcast Convergence)のサービスを開発中。
展示では、NGNで急速に注目されている「DLNAを応用した情報家電の広域接続技術」を参考出展デモした(DLNA:Digital Living Network Alliance、情報家電の相互接続に関する規格)。これは、自宅のDLNA環境のホーム・ネットワークに接続されたパソコンやデジタル家電などに保存したコンテンツを、インターネット経由で再生できる仕組みであり、次世代ネットワーク(NGN)のキー・アプリケーションとして期待されている。
写真3 KDDIはユビキタス社会に向けた「ウルトラ3G」を実演
通信事業者・ISP向けから企業向けまでNGN製品を体系的に整理・分類してアピール
NECは、“U can change. NGNでユビキタス社会が加速する”をテーマに、NGN関連製品を体系的に紹介。また展示期間中の3日間は、朝から晩までNGN関連の連続セミナーを行い、大きな注目を集めた。ブースは、見学して体感しやすいように、大きく、(1)通信事業者・ISP向けネットワーク、(2)企業向けネットワーク、(3)企業向けセキュリティに整理・分類して展示。
具体的なNGN製品については、サービスプラットフォーム基盤からトランスポート製品群、さらに認証技術から運用管理に至るまで幅広くそろえ、また、参考出展(写真4)として、マルチレイヤ仮想化技術(インサービスでのシステム拡張/ATCAサービスプラットフォームの拡張)などの新技術も披露した(ATCA:Advanced Telecom Computing Architecture、通信業者向けの次世代通信機器関連の業界標準規格)。
写真4 NGNを体系的に展示したNECの通信事業者・ISP向けネットワークのコーナー
(1)シスコと共同開発のNGN向け次世代ハイエンド・ルータ「CRS-1」
(2)NGN対応のイーサネットOAM試験機能ソフトウェア
富士通は、映像系トラフィックの急増に対応して、米国シスコシステムズと共同開発した次世代OS「Cisco IOX XR」を搭載した、NGN向け次世代ハイエンド・ルータ「Fujitsu and Cisco CRS-1シリーズ」を出展(写真5-1)。CRS-1シリーズでは1スロット当たり40Gbpsをサポート。4/8/16スロット・シャーシ・タイプからマルチシェルフ構成までのラインナップを揃え、システム容量は320Gbpsから92Tbpsまで拡張可能。今秋には、ミドル/ローエンド・タイプの発表が予定されている。
また、「Next Stream SPシリーズ」の第1弾として富士通九州ネットワークテクノロジーズが開発した、NGN対応の「イーサネットOAM試験機能ソフトウェア」(写真5-2)を出展し、話題を集めた。
(注)イーサネットOAM:正式名はIEEE 802.1ag:CFM(Connectivity Fault Management、到達性管理)で、通称「イーサネットOAM」と呼ばれている。OAM(Operation Administration and Maintenance)とは、通信事業網における「運用、管理、保守」を意味している。すなわちIEEE 802.1agは、NGN時代に対応するイーサネットを用いた広域網において、保守・管理の手段を提供するための方式を規定している。
写真5-1 富士通とシスコとの共同開発のNGN向け次世代ハイエンド・ルータ「CRS-1」
写真5-2 NGN対応のイーサネットOAM試験機能ソフトウェア
ルータに統合された業界初のNGN用セッション・ボーダ・コントローラ
シスコシステムズは、富士通と共同開発したキャリア・グレードのNGN対応「CRS-1」とともに、最新のNGN対応製品である「Cisco XRセッション・ボーダ・コントローラ」(SBC)などを展示した(写真6)。この製品は、キャリア・クラスのルータにSBCを統合した業界初の製品で、IMS(SIP)および非SIPサービスの両方がサポート可能。同機は、すでに発売されているマルチサービスブレード型の「Cisco XR-12000シリーズ ルータ」にSBCのブレードをアドオン(追加)できるため、既存のシステムを有効にできること、オーバレイ・ネットワークの必要がない、などの特長を備えている。さらに、Cisco IOS XR(自己回復機能を備えた分散オペレーティング・システム)によって提供されるレイヤ2/レイヤ3サービスも活用可能となっている。
(注)SBCはSession Border Controlの略。NGNの相互接続の場合に、セキュリティを確保しながら、サービス(例:IP電話サービス)を相互接続するために必要な制御を行う装置。
写真6 ルータに統合された業界初のNGN用セッション・ボーダ・コントローラ
NGN対応のサービス・プロバイダ向けコア・ルータ
世界最速1.6Tbpsの「Tシリーズ:T1600」
ジュニパーネットワークスは、既存のT320(320Gbps)、T640(640Gbps)などのTシリーズをアップグレード可能な、世界最高速となるNGN対応の1600Gbps(1.6Tbps)の「T1600」(写真7)を発表、米国に先駆けて日本で世界初のお披露目をした。現在、IPTVやハイビジョンによる映像サービス市場が急成長しており、コア・ルータはこれらに対応した性能の向上が求められている。T1600は、これらの市場に対応してスケーラビリティと、システムの低コストでしかもシームレスなアップグレードが可能な製品となっている。なお、「T1600」には、同社のルータ用のモジュラー型「JUNOS」(ジュノス)オペレーティング・システムが搭載されている。
写真7 世界最速と発表されたジュニパーのNGN対応の1.6Tbpsの「T1600」
(1)NGN対応のイーサネットOAM機能装備の「NetIron M2404F」
(2)NGN対応のマルチサービス・バックボーン・ルータ「NetIron XMR 32000」
ファウンドリーネットワークスは、MPLSメトロアクセス・スイッチ「NetIron M2404F」(F:光インタフェース)を展示(写真8-1)。これはネットワーク・エッジ用のコンパクトなスイッチ・ファミリーであるが、ネットワーク運用管理機能も充実させている。具体的には、IEEE 802ah EFM(アクセス網)のリンクレイヤOAMをはじめ、NGN対応のネットワーク接続を監視するIEEE 802agCFM標準すなわちイーサネットOAMもサポートしている。
また、NetIron XMR 32000は、ISPやインターネット・データ・センター、メトロサービス・プロバイダ向けの新世代のIPv4・IPv6/MPLSマルチサービス・ルータの最上位機種である。写真8-2は、4スロットのXMR 4000(960Gbps)、8スロットのXMR 8000(1.92Tbps)、16スロットのXMR 16000(1.92Tbps)、に続く最大32スロットのXMR 32000(7.68Tbps)の展示。NGN時代のマルチサービス・バックボーン・ルータのイメージをアピールした。
写真8-1 NGN対応のイーサネットOAM機能対応の「NetIron M2404F」
写真8-2 NGN対応のマルチサービス・バックボーン・ルータ「NetIron XMR 32000」
(1)NGN対応のIMS/VoIPプロトコル・テスタ(STP)
(2)NGN対応のEthernetOAM機能ももつSpirent TestCenter
東陽テクニカは、NGN対応の各種の計測器を出展。IMS/VoIPプロトコル・テスタ「STP」(Spirent Protocol Tester)は、SIP端末やMGC(メディア・ゲートウェイ・コントローラ)を擬似し、SBC(セッション・ボーダ・コントローラ)/メディア・ゲートウェイ(MGW)の機能の検証や、IMSのノード(I-CSCF)の検証が可能。このほか、STPではDHCPクライアントを模擬し、DHCPサーバのアドレス払い出し能力なども検証できる。
また、次世代IP高速伝送装置「Spirent TestCenter」も出展(写真9)。これは、各モジュールによりいろいろなソリューションを提供可能で、会場ではITU-T Y.1731勧告(イーサネット・ベースのネットワークに対するOAMの機能と仕組み)/IEEE 802.1ag イーサネットOAMエミュレーション機能をサポートするテスト・ソリューションのデモを行った。いずれの製品とも米国スパイレント・コミュニケーションズ社製)。
写真9 NGN対応のEthernetOAM機能ももつSpirent TestCenter
GE-PON、IPTVのQoS測定効率の向上を可能にするデータクオリティアナライザ「MD1230B」
アンリツは、FTTH(光ファイバ)の普及に伴って市場が拡大しているGE-PON(ギガビット・イーサネットPON)や、NGNのアプリケーションとして注目を集めているIPTVのQoS(サービス品質)測定の効率を向上させるため、データクオリティアナライザ「MD1230B」(写真10)の機能を強化するソフトウェアを開発。このソフトウェアを搭載したMD1230Bを展示、6月13日から受注を開始した。
特に、IPTVにおいては、断続的な視聴チャンネルの切り替えや視聴者の増減など、さまざまな利用状況を擬似的に発生させることができ、大規模な実験網を構築することなく測定が可能となっている。
写真10 IPTV対応のデータクオリティアナライザ「MD1230B」
「トリプル・プレイ・アナライザ」でIPTVのトータル・ソリューションをデモ
アジレント・テクノロジーは、NGNにおける音声・データ・ビデオのトリプル・プレイ・サービスの最適化やトラブル・シューティング・ソリューションや解析用のソフトを搭載したトリプル・プレイ・アナライザ(写真11中央右)のデモを行った。具体的には、キャリア・グレードの通信インフラのテスト/エミュレーションを1台で実現できるマルチサービス・テスタ「Agilent N2X」(写真11左)を使用して、音声(VoIP)やビデオ信号(IPTV/VoD)の信号解析などのデモを行った。
最近、サービス・プロバイダには、QoSよりもQoE(Quality of Experience)と言われる「ユーザーの体感品質」が重視されてきていることから、トリプル・プレイ・アナライザの重要性を強くアピールした。
写真11 IPTVのトータル・ソリューションを提供するトリプル・プレイ・アナライザ
H.264/AVCにも対応したIPTVソリューション(Rolling Stream)
通信事業者やサービス・プロバイダに、NGN構築に関するいろいろなソリューションを提供するUTスターコムは、キャリア・グレードのIPTVストリーミング・サーバ&エンコーディング(圧縮符号化)・プラットフォーム「RollingStream:MediaStation/Contennts Engine」(写真12)を出展。同機は、MPEG-1/2/4からWindows Media 9、H.264/AVCまでをサポートし、IPTVからVoD、音楽配信、テレビ電話などのサービスを低価格で実現可能となっている。また、ブレード型サーバのため拡張性が高く、1ブレード当たり1テラ・バイト(TB)のストレージが可能。
写真12 IPTV向け「RollingStream:MediaStation/Contennts Engine」
NGN Forumをオープンし、最新刊:NGNの心臓部『IMS入門』を発刊・発売
インターネット・テクノロジーを核に、クロスメディア事業を展開するインプレスR&Dは、次世代標準ネットワーク技術の専門サイト「WBB Forum」(http://wbb.forum.impressrd.jp/)をはじめ、IPv6Style、Web担当者Forumなどに続いて「NGN Forum」(http://wbb.forum.impressrd.jp/NGN)のサイトをオープン。また、調査報告書からムック、書籍に至るまで、多彩なメディア事業を展開している。会場では、同社の2007年度の3つのテーマ「NGN、エンタープライズ2.0、セカンドライフ」のもとに、NGN関連の最新刊のNGNの心臓部技術を解説した『IMS入門』をはじめ、『NGN入門』、NGN時代の『SIP入門』、『放送・通信の融合とNGNへの道』『NGN用語事典』を、さらに『インターネット白書2007』、『セカンドライフ 公式ガイド』などを出展・販売した(写真13)。
写真13 NGN Forumを立ち上げ、NGN関連書籍などを展示・販売