≪2≫地域ごとに異なるサービス・プラン
最近では、中国移動の全国統一カードである神州行が販売されなくなり、各地方ごとに独自の神州行のプランに移行しています。例えば、広東省の「神州行 暢听カード」は、月額の基本料金が10元かかりますが、着信は無料です。「神州行 零月租カード」は、基本料は無料ですが、市内からの着信にも料金がかかります。「神州行 大衆プラン」は、市内通話しかできませんが着信時に課金されません。
日本と違い、多くのプランでは、発信者にも着信者にも同額が課金されるのですが、最近では発信者だけに料金がかかるオプションも用意されています。
チャージの残高の確認は、サービスセンターの電話番号「1380013800」に電話をして音声で確認するほか、SMS(ショート・メッセージ・サービス)で確認することもできます。
SMSの場合、本文に「yecx」と書いたショート・メッセージを「1861」へ送ると残高をメッセージで返してくれます。この「1861」という番号は、メッセージの内容で各種のサービス・オプションを変更したり、プランを変更するために使われる番号です。例えば、ショート・メッセージでチャージをしたい場合には、「1861」へ「CZ」に連続させて18桁の数字を送ると「充値成功!」というショート・メッセージが返ってきます。
ひとつ、プリペイドのチャージについては、重要な注意があります。
SIMカードと充値カードの購入地域が同じでなければ、チャージできないということです。例えば、広東移動通信のSIMカードには、広東移動通信の充値カードでチャージできますが、北京移動通信のカードではチャージできません。
【コラム】
GSMネットワーク・システムについて
ここでは、中国を含め、世界中で運用されているGSMネットワークのシステムについて説明します。
GSMネットワークでよく使う用語を表1にまとめました。
図2に示すように、GSMネットワークは階層化されており、もっとも下位の層は無線区間のセル(通信領域)です。セルのグループはロケーション・エリアと呼ばれ、さらにロケーション・エリアの集合がGSMネットワーク全体を形成しています。
ロケーション・エリアごとに、配下の端末を管理するMSC(Mobile Switching Center、移動交換局)とデータベースVLR(Visitor Location Register、在圏網加入者管理レジスタ)があります。また、全体を管理するデータベースとしてHLR(Home Location Register、ホーム・ロケーション・レジスタ)があります。
なお、このほかに、無線区間の制御を行うBSC(Base Station Center、基地局制御装置)や端末の管理を行うEIR(Equipment Identity Register、機器IDレジスタ)などがありますが、図2では省略しています。
加入者の電話番号MSISDN、対応するSIM番号IMSI、サービスなどの端末の情報は、IMSIを基本に管理されており、HLRに登録されています。この登録は、携帯電話の加入処理の際に行われます。IMSIはあらかじめSIMで決まっていますが、電話番号MSISDNはその加入者がその場で決めます。
ローカル・データベースのVLRは、HLRと機能が似ています。端末がホーム・ネットワークから別のエリアに移動すると、そのエリアを担当しているVLRがHLRにデータベースの情報を求めて、一時的にローカルのデータベースにIMSIを含む端末の情報をコピーしておきます。また、HLRは、そのネットワークで加入者に利用資格があるかどうかをVLRに返します。
GMSC(関門移動局)は、電話網、ISDN、他の移動通信網と相互接続するための関門交換機能です。固定電話との通話も、GMSCと介して行われます。
端末はSIM番号であるIMSIを基本に管理されていますが、呼制御はホーム・ネットワークのMSCまでは、端末利用者のMSISDNで、端末の移動先エリアのMSCまではMSRNで、そして無線区間では、IMSIとそれに対応するTIMSI(Temporary IMSI)が使われます。
固定電話から携帯電話に電話をかける場合を例に、図2で説明しましょう。
固定電話の加入者がMSISDNの電話番号あてに電話をかけると、GMSCを介しHLRで識別される事業者の端末交換機MSCに通知されます(1)。MSCはHLRに対し、経路情報を要求します(2)。HLRでは、電話番号MSISDNに対するSIM番号IMSIを知り、同時に、目的の端末が現在どのVLR配下にいるのかを調べます。そして、携帯端末が圏内にあるVLRに対して、MSRN(Mobile Station Roaming Number、移動機ローミング番号)を要求します(3)。MSRNは、端末が当該MSC配下にある時だけその端末に割り当てられる一時的な電話番号です。これがHLRに返され、更にもとのMSCに返されます(4)。そのMSCは、MSRNに対して、(即ち、現在、端末が配下にあるMSCに対して)接続処理を行います(5)。そのMSCではMSRNからIMSIへ変換を行います(6)。さらに、IMSIはTMSIと変換されることになり、目的の端末が呼び出されます(7)。
これら一連の通信は、従来の固定電話網の制御プロトコルSS7群のMAP(Mobile Application Part、移動管理信号)で規定されたプロトコルに従ったものです。なお、携帯端末が移動して別のVLRの圏内に入った場合には、そのVLRはHLRに対して、携帯電話の所在地に関する更新情報を送っています。更新があった場合には、HLRは、旧VLRに対して、割り当てていたMSRNを解放するように通知します。
以上のように、MSCとHLRはGSMネットワークの中で中核の機能を果たします。
なお、現在主流になりつつある第3世代3GPP(3rd Generation Partnership Project)の移動通信システムUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)は、上記のGSMネットワークをベースとして標準化されています。
プロフィール
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陶一智(とう・いちち)
7年前に来日し、2006年に法政大学ビジネススクールにおいてMBA(経営学修士号)を取得。
現在、株式会社TERMONYのインターネットビジネス事業部代表として、女性のためのウィッグ販売サイトhttp://www.igennki.comのオペレーションを行っている。