中部電力と三菱UFJリースは2017年4月25日、ドイツの洋上風力発電所向けに海底送電事業を運営している三菱商事子会社の株式を取得すると発表した。中部電力と三菱UFJリースが共同出資で設立するドイツChubu Electric Power & MUL Germany Transmission社が三菱商事から子会社の株式49%を取得する形を採る。Chubu Electric Power & MUL Germany Transmission社の出資比率は中部電力が51%で、三菱UFJリースが49%。
株式を取得する三菱商事の子会社はドイツのDiamond Germany 1. Transmission社(DGT1)とDiamond Germany 2. Transmission社(DGT2)の2社。両社はオランダ国営の送電事業者であるTenneT社と共同で、海底送電事業を運営している。海底送電事業への出資比率はTenneT社が51%で、三菱商事の2つの子会社が合計で49%。
DGT1、DGT2とTenneT社が運営している海底送電線は合計4本。1本目は洋上風力発電所「BARD Offshore 1(合計出力400MW)」からの電力を届ける「BorWin1」。総延長は200kmだ。2本目はBorWin1と同じルートを通って、「Albatros(117MW)」「Global Tech I(400MW)」「Veja Mate(400MW)」「Deutsche Bucht(252MW)」の4つの洋上風力発電所の電力を届ける「BorWin2」。総延長はBorWin1と同じく200km。3本目は「Nordsee One(332MW)」「Gode Wind 1(332MW)」「Gode Wind(252MW)」の3つの洋上風力発電所の電力を届ける「DolWin2」。総延長は135km。4本目は「Amrumbank West(303MW)」洋上風力発電所の電力を届ける「HelWin2」。総延長は130kmだ。このうちDolWin2だけは未完成で、2017年度中に工事が完了する予定となっている。
図 4本の海底送電線のルート。左上が「BorWin1」で右上が「BorWin2」、左下が「DolWin2」、右下が「HelWin2」
出所 TenneT社
4本とも高圧直流送電(High-Voltage Direct Current:HVDC)を採用しており、陸地の交直変換所で交流に変換して系統に電力を流している。HVDCには大電力を長距離送電するときに、交流に比べて送電過程での損失が少ないという利点がある。そして、海底送電線は静電容量が大きくなるため、交流で電力を流すと送電線全体がコンデンサのように働いてしまう。つまり交流で電力を流しても、かなりの部分を送電線にできてしまうコンデンサに充電することになる。一方直流を流すと、コンデンサへの充電が発生するのは電力の流し始めと、電圧を変化させたときのみとなる。海底でも問題なく電力を送ることができる。
送電電圧と送電容量はBorWin1が±150kVで400MW(40万kW)。BorWin2が±300kVで800MW(80万kW)。DolWin2が±320kVで916MW(91万6000kW)。HelWin2が±320kVで690MW(69万kW)。
三菱UFJリースは海外の社会基盤(インフラ)事業への投融資に力を入れるために2016年度に新組織を立ち上げた。今回の出資は海外インフラ事業への投資の第1弾となるという。中部電力は、この事業が長期に渡って安定した収益を期待できることから投資を決めたとしている。さらに、中部電力が保有する送変電保守に関する技術や経験、知見を活用できると考えている。しかし、日本にはまだ大規模洋上風力発電所が存在しない。その電力を地上に送る海底送電線の保守運営によって、今後活用できるノウハウなども得られるのではないだろうか。