Amazonは2017年11月16日、シアトル市街に新築した本社ビル群の暖房システムを公開した。隣接する他社データセンタービル内で発生する熱の供給を受けて、暖房に使用するというものだ。このシステムは最大で500万平方フィート(約46万5000m2)のオフイスフロアの暖房として利用できるという。
Amazonはかつてシアトル市街の北のはずれにある元病院の建物を改装して本社として利用していたが、業容拡大に伴う従業員増加により、シアトル市街地に新オフィスビル群を建設する計画を立て、2015年12月には最初に完成した高層オフィスビル「Doppler」への移転を始めている。Amazonはその後もビルの建設を続けており、近隣に「Day One」などの高層ビルを完成させている。
Amazonの新オフィスに熱を供給するのはDopplerビルに隣接するデータセンタービル「Westin Building Exchange」。250社以上の通信事業者やインターネットサービス企業が利用しており、多数の業者がネットワークを相互に接続する全米でも有数の拠点となっているビルだ。ちなみにこのデータセンターはAmazonが運営しているものではない。
図 中央のひときわ高いビルが「Westin Building Exchange」
出所 Westin Building Exchange
Westin Building Exchangeは、地下に敷設した配管を通して熱を温水の形にしてDopplerビルの地下に送る。この時点でDopplerビルに届く温水はおよそ18℃(華氏65度)。これでは暖房に使うには温度が低いため、地下に設置してあるチラー(冷却水循環装置)を利用して約54℃(華氏130度)まで昇温し、DopplerビルのほかAmazonが利用している近隣のオフィスビルに地下の配管を通して届ける。ちなみにチラーとは、冷媒を圧縮膨張させながら循環させることで、対象物を冷却あるいは加熱する機器だ。
図 地下の配管を通して受け取った温水をチラーで昇温して、各ビルに送る。図中左がDopplerビルで、熱供給源であるWestin Building Exchangeは、通りをはさんだ手前にある
出所 Amazon
Amazonによると、この手法は一般的な暖房よりも4倍近く効率が高い。オフィスビルを新築する時はこの暖房システムに加えて、極端に寒いときに備えてボイラーも設置した。しかし、移転から2回冬を過ごしたが、ボイラーを使うことはめったにないという。
消費電力量を節約する効果も大きなものがある。Amazonの試算によると、データセンターからの熱を利用することで、今後25年間でおよそ80GWh(8000万kWh)を節約できる見込みとなっている。熱を供給するWestin Building Exchangeも、従来はビル屋上から熱を室外機で放散していたが、その必要がなくなるので、消費電力を大きく削減できるという。
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