沖電気工業は2017年12月11日、独自の水中音響センシング技術で、水中、水上から近寄る不審者などを検出する「水中音響沿岸監視システム」を開発したと発表し、評価キットの提供を始めた。評価キットの価格は200万円(税別)から。
同社の水中音響センシング技術は、およそ85年に渡って開発改良を続けてきたもので、防衛分野で高い評価を受け、採用されているものだという。水中の音を拾うマイクを並べた「水中ハイドロフォンアレイ」で受信した音から、「ビームフォーミング技術」で指向性を算出し、周波数分析などのさまざまな信号処理を加えて音の特徴を検出する。検知した音をデータベースに格納して管理することで、近づいてくる不審物を音から具体的に特定できるという。
センサーとなるマイクは、水中に沈むようにブイ(浮き)に取り付けてあり、ブイの上部、水面から露出している部分には、無線通信機能とアンテナが付いている。マイクが拾った音声信号を、陸上に設置したモニター装置に無線信号で送信するわけだ。モニター装置は信号処理などなどの技術を駆使して、対象の位置を特定して画面に表示する。
図 「水中音響沿岸監視システム」の基本的な構成
出所 沖電気工業
沖電気工業は今回提供を始める「水中音響沿岸監視システム」評価キットを検証する施設として、駿河湾に会場計測用のバージ(はしけ)「SEATEC II」を用意している。この環境を利用することで、実環境への導入と実環境での試験の前に、実際の海域で水中音響沿岸監視システムを評価できる。
図 「水中音響沿岸監視システム」の実運用イメージ
出所 沖電気工業
現在、世界ではテロが多発しているが、日本は島国という事情もあるせいか、大規模なテロには遭わずに済んでいる。しかし、空港や発電所、液化天然ガス既知、石油基地などの標的となり得る施設では危機管理体制の見直しが進んでいる。さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに来場する多数の訪問客を狙うテロが発生することも否定できない。そして沖電気工業は空港などの施設には侵入監視システムなどの整備が進んでいるが、沿岸部など水中、水上からの侵入への対策はまだ遅れているとし、沿岸部に立地する重要施設などにこのシステムを提案する構えを見せている。
■リンク
沖電気工業