東芝は2019年1月21日、世界で初めて亜酸化銅(Cu2O)太陽電池セルの透明化に成功したと発表した。結晶シリコン(Si)を使用した既存の太陽電池と重ね合わせることで、変換効率を大きく高めることができるという。
図 東芝が開発に成功したCu2O太陽電池セル
出所 東芝
Cu2Oの薄膜を作る際には、酸化銅(CuO)や銅(Cu)などの不純物が発生しやすく、不純物とCu2Oが混ざりやすいという性質があり、これまでは透明なCu2Oの膜を作ることはできなかった。
今回東芝は、Cu2Oの薄膜を形成する工程で、酸素の量を精密に制御する独自の成膜法を考案した。この方法を利用することで、薄膜内部でCuOやCuの発生を抑え、透明なCu2O薄膜の作製に成功した。Cu2Oは世界中に大量に存在するCuの酸化物であり、低コストで生産でき、高い効率で発電すると期待できるという。
そして、Cu2Oの最大の特徴は、一般的な結晶Si太陽電池よりも短い波長の光を受けて発電すること。今回、透明なCu2O太陽電池の開発に成功したことで、結晶Si太陽電池の上面に重ね合わせる「タンデム型太陽電池」を低コストで生産できる可能性が高まった。
透明なCu2O太陽電池は波長がおよそ600nm以下の光を受けて発電し、結晶Si太陽電池は600nm以上の光で発電する。今回東芝は、製造に成功した透明なCu2O太陽電池セルと結晶Si太陽電池を重ね合わせたタンデム型太陽電池を試作し、実験で検証したところ、Cu2O太陽電池セルの層が600nm以上の長波長光を約80%透過させることを確認している。また、透過光を受けた結晶Si太陽電池が単体で動作させたときと比べておよそ8割の出力を維持しながら発電したという。
図 Cu2O太陽電池セルと、結晶Si太陽電池セルはそれぞれ異なる波長の光を受けて発電する
出所 東芝
東芝は3年後に透過型Cu2O太陽電池を上面に採用し、低コストなタンデム型太陽電池の完成を目指すとしている。また、透過型Cu2O太陽電池を利用したタンデム型太陽電池の発電効率を30%台まで高めるために研究開発をさらに進める。
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東芝