国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年11月24日、太陽光発電パネルに水を加熱する機能を加えた「熱電ハイブリッド太陽電池モジュール」の実証実験を開始した。実験の場所は静岡県掛川市の「大東温泉シートピア」で、実験期間は2017年2月まで。この実験は、太陽光発電設備の設置場所と用途の多様化を模索するNEDOのプロジェクト「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」の一環。
実験には、日清紡メカトロニクスが開発した「熱電ハイブリッド太陽電池モジュール」を使う。このモジュールも先述のプロジェクトの一環として開発したものだ。単結晶シリコンの太陽電池セルを36枚組み込んであり、1枚当たりの出力は160W。発電効率にすると15.5%(表面温度が50℃の場合)となる。
図 大東温泉シートピアに設置した熱電ハイブリッド太陽電池モジュール
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
このモジュールの裏側には、渦状に整形した架橋ポリエチレン管を設置してある。架橋ポリエチレン管の長さは40m。この管は全長に渡って、特殊カーボンブラック添加エラストマー材料で包み込んである。このエラストマー材料は光の波長を変換する特質を持っており、パネルを通ってきた赤外線を、水が吸収しやすい遠赤外線に変換する。この工夫により、62.5%という高い集熱効率を発揮する。NEDOによると、市販の温水器の集熱効率は約40~50%。このパネルの集熱効率はかなり高いレベルにあると言える。
実験では、このパネルを合計140枚設置する。そのうち112枚には水道水を通して、通常の温水を作る。残りの28枚には温泉水を通して、足湯に使う温泉水を加熱する。
NEDOはこの実験で、発電効率、集熱効率、信頼性を検証するとしている。そして実験の結果を受けて、熱電ハイブリッド太陽電池モジュールの製造コスト低減、信頼性のさらなる向上に取り組み、早期実用化を目指す。