積水化学工業は2017年3月29日、フィルム型色素増感太陽電池の量産技術を確立し、2017年度中に製品化すると発表した。500ルクス以下の低照度でも発電し、フィルム上に形成しているため曲げられるという特徴を活かして、デジタルサイネージや、IoTのセンサー機器の電源として売り出す。
図 フィルム型色素増感太陽電池。曲げることも可能だ
出所 積水化学工業
色素増感太陽電池は、二酸化チタン(TiO2)などの酸化物半導体層に色素を吸着させて光電変換層とするものだが、従来はTiO2を含むペーストを基盤に塗り、500℃程度の高温で焼く必要があった。そのため、基盤としてガラスなど熱に強いものしか使えなかった。
積水化学工業は色素増感太陽電池の応用範囲を広げるために、フィルム上に色素増感太陽電池を形成する技術の開発に取り組んだ。その結果、二酸化チタンなどの原料の粒子を音速に近い速度にフィルムにぶつけ、その衝突エネルギーで粒子間を結合させる「AD法」を開発した。加熱する必要がなく、常温で製造可能なため、フィルム上に色素増感太陽電池を作れるようになった。
今回は、二酸化チタンの膜を形成する「電極形成」から二酸化チタンの膜に色素を付加する「染色」、電解質を塗布し別のフィルムと重ね合わせてモジュールとする「モジュール組み立て」まで一連の流れで進められる「ロール・ツー・ロール量産技術」を完成させ、この設備の試作機を同社のつくば事業所に導入した。この設備は年間に2万m2のフィルム型色素増感太陽電池を製造する能力を持つという。
図 ロール・ツー・ロール量産技術の工程
出所 積水化学工業
積水化学工業によると、フィルム型色素増感太陽電池は、簡単に機器に貼り付けられる点や、曲面にも貼り付けられる点を多くの顧客が評価しているという。また、無線通信機能を持つIoTのセンサー端末向け電源としても需要が見込めるという。パートナー企業と連携を進めて、2017年度中に発売する計画だ。
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積水化学工業