2016年10月5日、福島大共生システム理工学類の野毛宏特任教授は、自身の研究チームが厚さ53ミクロンの太陽電池の開発に成功したと発表した。新聞紙(約60ミクロン)よりも薄くなったことで、太陽電池が安価になること、パネルの重量が軽くなること、曲げて使うことができるといったことが期待できる。
図1 試作に成功した太陽電池
出所 福島大学
今回開発に成功した太陽電池は単一のシリコン結晶からなる層にアモルファスシリコンの層を接合させた「ヘテロ接合シリコン太陽電池」。パナソニックが「HIT」の名称で製品化しているものと同じ構造のものだ。
この種類の太陽電池は元々発電効率が高く、2014年にパナソニックが25.6%、カネカが26.3%という記録を達成している。今回の研究は、発電効率が高いヘテロ接合シリコン太陽電池を薄くすることで低価格化につなげたいという考えから始まった。
最近のヘテロ接合シリコン太陽電池は電極を裏面に作り、表面の太陽光を受ける部分の面積を広くしてより多くの太陽光を受けられる作りになっている。今回開発に成功した太陽電池も裏面電極型だが、実現には障害があった。
一般的な製品の場合、裏面に電極を作るには半導体製造で利用するフォトリソグラフィ技術を使う。しかし、フォトリソグラフィ技術を利用するには高価な装置が必要になり、製品価格が上がってしまう。また、フォトリソグラフィ技術の装置で電極を作るときはシリコン基板にある程度圧力がかかる。シリコン基板を薄くしてしまうと製造工程中に破損してしまうという問題もあった。
そこで今回の研究ではインクジェット印刷技術を利用することにした。インクジェット印刷ならシリコン基板に触れることがないので基盤を破損させる恐れがない。また、インクジェット印刷技術は家庭に広く普及しているものであり、低コストで利用できる。
図2 今回の研究に利用したインクジェットプリンタ
出所 福島大学
試作では、インクジェット印刷でパターンを描き、エッチング(腐食処理)することを 3回繰り返して裏面の電極パターンを作った。この方式で太陽電池の作成に成功したのは世界初のことだという。
今回試作した太陽電池の変換効率は10.7%。市場に流通している製品に比べるとまだまだ低いが、野毛特任教授は「今後2~3年で、同じ薄さのままで変換効率を20%程度まで上げたい」と語る。
このように薄型で変換効率が高い太陽電池を量産できれば、建築物の曲面や自動車、ウェアラブルデバイスなど、現時点では太陽電池を利用できないような曲面でも有効に活用できると期待できる。野毛特任教授は、開発した技術を企業などに展開していくことも考えているとしている。
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福島大学