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「赤外線の透過率を変えられる窓」、オランダの学生が開発ー省エネビルへの応用も

2017/05/17
(水)
SmartGridニューズレター編集部

アイントホーフェン工科大学は、同学の大学院生が、赤外線の透過率を自在に変えられる「Smart Windows」を開発したと発表した。

オランダ・アイントホーフェン工科大学(Eindhoven University of Technology)は2017年5月10日、同学の大学院生であるHitesh Khandelwal氏が、赤外線の透過率を自在に変えられる「Smart Windows」を開発したと発表した。Khandelwal氏はこの研究によって、博士号(Ph.D)を得ることになるという。

図 Khandelwal氏が開発した「Smart Windows」

図 Khandelwal氏が開発した「Smart Windows」

出所 Eindhoven University of Technology

Smart Windowsは、波長が700nmから1400nmの光のみを遮断する。この波長の光は一般に言う「赤外線」、つまり「熱」を伝える光だ。これを遮断することで、冷房の出番が少なくなる可能性がある。そしてSmart Windowsは、赤外線を遮断する能力を調節することができる。さらに、赤外線を遮断しても、窓の向こうに見える景色がほとんど変わらないという。

太陽光を反射あるいは遮断する窓はいくつもあるが、そのどれもが太陽光を遮断する代わりに可視光線も遮断してしまっている。太陽光を遮断する窓は、その向こうを見通すことができない、あるいは向こうの風景が薄暗くなってしまうのだ。

赤外線を反射する層には高分子液晶を利用しているという。Khandelwal氏は、研究中にまったく違う種類の液晶分子を混合させたところ、赤外線をほぼ100%遮断できるようになったという。

実際の建物に応用すれば、室内の温度によって赤外線透過率を変えられる窓ができそうだ。しかも、赤外線透過率を変えても窓の外の景色の見え方は変わらない。夏は赤外線をしゃ断して、寒い冬は赤外線を取り込むという具合に使えば、空調設備に使う電力を減らせそうだ。コンピュータシミュレーションの結果、Smart Windowsを建物の窓に応用すると、12%以上のエネルギーを節約できるという。

図 季節に応じてSmart Windowsを使い分ける例

図 季節に応じてSmart Windowsを使い分ける例

出所 Eindhoven University of Technology

さらに、このSmart Windowsは自動車の窓ガラスへの応用も期待できるという。真夏の炎天下に、野外の駐車場に長時間駐車した自動車は、車内がかなり高温になっていて、すぐに乗り込むことは不可能だ。そこでSmart Windowsを利用して、窓ガラスから入り込む赤外線を遮断すれば、少しは温度上昇を抑えられるかもしれない。また、Khandelwal氏は自動車にSmart Windowsを応用すれば、車内の冷暖房のために消費しているエネルギーを節約できるだろうと語っている。さらに、植物を育てる温室でも役立つだろうとしている。

Khandelwal氏はSmart Windowsの試作品を完成させており、その試作品ではなるべく既存の材料を利用し、製造コストが下がるように工夫したという。


■リンク
Eindhoven University of Technology

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