トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、JXTGエネルギー、出光興産、岩谷産業、東京ガス、東邦ガス、日本エア・リキード、豊田通商、日本政策投資銀行の計11社は2017年5月19日、燃料電池車(FCV)向け水素ステーションを本格的に整備することを目的とした協業を検討すると発表した。2017年内に共同出資で新会社を設立し、水素ステーションの整備を促進していくとしている。
今回の協業では、経済産業省の水素・燃料電池戦略協議会が2016年3月に改訂した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の目標を念頭に置いている。2020年度までに水素ステーションを160カ所に設置し、燃料電池車(FCV)の登録台数を4万台程度とし、FCVが一般に普及したと言えるレベルに到達させるというものだ。
協業に参加した11社のうち、石油元売業者やガス業者は主に水素ステーションの整備、運営を担当する。自動車メーカーはFCVの普及拡大と、普及初期の水素ステーションの運営支援を担当する。そして、参加企業中唯一の金融機関である日本政策投資銀行は、事業を資金面で支援する。
協業に参加した11社のうち、最もFCV普及に積極的なトヨタ自動車は、すでに2020年までの量産計画を立てている。同社は2014年12月15日にFCV「MIRAI」の受注を開始したが、2015年年産700台、2016年は年産2000台の体制で生産に取り組んでいたという。2017年は3000台を生産できる設備を整えて、生産を続けている。そして、2020年には年産3万台の体制となることを目標としているという。
図 トヨタ自動車のFCV「MIRAI」
出所 トヨタ自動車
協業に参加した11社のうち、これまで積極的に水素ステーションを建設してきたのはJXTGエネルギーと岩谷産業だ。JXTGエネルギーは全国40カ所に、岩谷産業は全国17カ所に水素ステーションを開設して運用している。
最近では岩谷産業が2017年3月に開設した「イワタニ水素ステーション 東京有明」が注目を集めた。東京都交通局がトヨタ自動車から燃料電池で動く「トヨタFCバス」を導入し、東京駅丸の内南口から東京ビッグサイトを結ぶ路線で運行することが決まったときに、新設のイワタニ水素ステーション 東京有明が燃料電池バスの水素補給拠点となった。
図 「イワタニ水素ステーション 東京有明」。東京都交通局の燃料電池バスが停車している
出所 岩谷産業
このように、これまで水素ステーションの整備は単独の企業によるものが多かった。水素ステーションを設置しようにも、利用してくれるFCVがなければ設置は難しいというのが本音だろう。しかし今回、自動車メーカー、石油元売、ガス会社、金融機関11社が協業体制を作り、水素ステーションの本格整備に向けて動き出す。日本全国、どこでもFCVを気軽に利用できる社会の実現を目指して、ステーションの整備と、手頃な価格のFCVの開発販売を期待したい。
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