帝人とGLMは2017年6月28日、帝人が開発した乗用車用樹脂製フロンドウィンドウを搭載した試作車を公開した。GLMは、同社が販売するスポーツタイプの電気自動車(EV)「トミーカイラZZ」に帝人が開発した樹脂製フロントウィンドウを採用することを明らかにしていたが(参考記事)、今回の試作車もトミーカイラZZを基にしたものだ。
図 樹脂製ピラーレスプロントウィンドウを搭載した「トミーカイラZZ」
出所 GLM
帝人が開発した樹脂製フロントウィンドウは、ガラスに代わってポリカーボネイト樹脂を採用したものだ。ポリカーボネイト樹脂はガラスの半分の重量で、200倍もの耐衝撃性能を発揮する材質だが、1つ弱点があって自動車のフロントウィンドウには採用できなかった。その弱点とは、耐磨耗性。細かいキズが付きやすいのだ。
通常のポリカーボネイト樹脂の表面には、耐磨耗性を高めるためにハードコード材料を均一に薄く塗り付けてあるが、それでも自動車のフロントウィンドウに採用できるレベルの耐磨耗性は実現できなかった。
そこで帝人は、ハードコード材料をガス化して樹脂表面をコーティングする「プラズマCVD法」を利用した。すでにハードコード材料を塗り付けてあるポリカーボネイト樹脂の表面に、さらにプラズマCVD法でハードコート材料の層を形成し、自動車のフロントウィンドウに使えるレベルまで耐磨耗性を高めた。
さらに帝人は、フロントウィンドウ左右に立っている支柱(Aピラー)を排除することを考えた。Aピラーが担っている、フロントウィドウを左右から支えるという役目をフロントウィドウ自体に担わせるために、フロントウィンドウの左右端に余計に厚みを持たせた。これで、Aピラーなしでも十分な強度を確保できたという。ガラスからポリカーボネイト樹脂への材料変更と、Aピラー撤廃で、フロントウィンドウ部分の重量を従来比で36%削減できたという。
また、本来Aピラーが立っているはずの部分が透明なポリカーボネイト樹脂となったことで、前方の見通しが良くなった。その結果、左右のサイドミラーだけで十分な視界を確保できるようになり、一般的な乗用車がフロントウィンドウ中央上部に備えているルームミラーを取り付ける必要がなくなった(元々、十分な視界を確保できれば、ルームミラーを取り付ける義務はない)。
図 樹脂製ピラーレスプロントウィンドウを搭載した「トミーカイラZZ」(左)と、従来のウィンドウを搭載したもの(右)。樹脂製フロントウィンドウ採用車はルームミラーを付ける必要がなくなった
出所 GLM
GLMは樹脂製フロントウィンドウを搭載したトミーカイラZZを公道で走行で走行させるための認可を取得し、今秋にはトミーカイラZZのオプションとしてこのフロントウィンドウの提供を始める予定だ。