東芝は2017年10月3日、同社独自のリチウムイオン蓄電池「SCiB」の次世代品を開発したと発表した。従来品は負極材料にチタン酸リチウム(Li2TiO3)を使用しているが、これをチタンニオブ系酸化物に変えることで、蓄電池としてのエネルギー密度を2倍に高めた。
図 次世代「SCiB」の試作品。蓄電容量は50Ah
出所 東芝
今回東芝が負極材料に採用したチタンニオブ系酸化物は、超急速充電や低温環境下での充電などの悪条件でも電池の劣化や短絡(ショート)の原因となる金属リチウムを析出させることがなく、耐久性と安全性に優れている。さらに、東芝独自の方式で結晶を合成することで、結晶の配列の乱れを極力抑えた。その結果、負極の結晶構造の中にリチウムイオンが効率良く出入りするようになった。その結果、現行のSCiBの特徴である急速充電に対する耐性や安全性、低体温環境への耐性といった特徴をそのまま引き継ぎながら、エネルギー密度をおよそ2倍まで高めることができた。
今回試作した蓄電池で充放電を試したところ、5000回繰り返しても新品状態とくらべて90%の蓄電容量を維持することを確認している。さらに、マイナス10℃の低温環境下で10分間の超急速充電にも問題なく耐えることも確認したという。
現在、一般的なリチウムイオン蓄電池は負極材料に黒鉛(グラファイト)を使用しているが、負極がリチウムイオンを急増する能力を比較すると、新世代SCiBで採用したチタンニオブ系酸化物は2倍の能力を持つ。黒鉛を負極材料に使用しているリチウムイオン蓄電池は、メーカーによって性能がさまざまだ。正極材料を工夫して性能を高めているものもある。このような事情から東芝は、蓄電池単位での性能の単純比較は難しいとしている。
しかし、蓄電容量32kWhの次世代SCiBを電気自動車(EV)に搭載すると、わずか6分間の超急速充電(通常の10倍の電流で充電)でおよそ320km走行できるという。この距離は蓄電容量が同等で黒鉛負極のリチウムイオン蓄電池を搭載したEVに6分間急速充電(通常の3倍の電流で充電)をした場合と比較すると、だいたい3倍になるとしている。
図 次世代「SCiB」と黒鉛負極を使用したリチウムイオン蓄電池の急速充電性能を比較したグラフ。従来型は急速充電時間を12分にしても、次世代SCiBに6分間の超急速充電をしたときの半分以下の電力しか充電できない
出所 東芝
次世代SCiBは寿命が長く安全性に優れ、特に急速充電性能が高いことから、東芝はEVへの搭載に特に向くとしている。今後も開発を続け、蓄電池のエネルギー密度をさらに高めて2019年度に製品化することを目指すとしている。
■リンク
東芝