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再生材の大規模供給に向け資源循環システムを構築へ、経済産業省

大都市圏・地方都市・中小地域ごとに実証開始
2025/11/06
(木)

地域特性に応じた資源循環システム構築に向け実証開始

 経済産業省は、大都市圏や地方都市、中小地域ごとの地域特性に応じた資源循環システムの構築に向けた実証事業を開始した(図1)。再生プラスチックをはじめとする再生材を大規模に供給するための体制を構築するのが目的。株式会社三菱総合研究所(以下、三菱総合研究所)が受託し、2025年10月21日に発表した。

図1 経済産業省「令和7年度資源自律経済確立産官学連携加速化事業費(広域自治体における資源循環システムの構築に向けた実証事業)」の対象地域(予定)

出所 株式会社三菱総合研究所 ニュースリリース 2025年10月21日、「三菱総合研究所、「令和7年度 広域自治体における資源循環システム構築の実証事業」を開始」

 

2026年以降に循環型ビジネスモデルを全国展開へ

 経済産業省の「令和7年度資源自律経済確立産官学連携加速化事業費(広域自治体における資源循環システムの構築に向けた実証事業)」注1では、再生材の回収から再資源化までのスキームを、(1)大都市圏、(2)地方都市、(3)中小地域といった地域特性に応じて構築し、各地域の関係事業者とともに実証を実施する。

 大都市圏では、オレフィン樹脂注2やPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂注3などを対象に、ケミカルリサイクル注4とマテリアルリサイクル注5を実証し、首都圏全体での循環型サプライチェーンのモデル構築を進める(図2)。対象地域は、首都圏およびその周辺などを想定している。

図2 大都市圏での高度なリサイクルチェーンのイメージ

出所 株式会社三菱総合研究所 ニュースリリース 2025年10月21日、「三菱総合研究所、「令和7年度 広域自治体における資源循環システム構築の実証事業」を開始」

 大都市圏は、人口密度が高く、家庭・オフィス・店舗・工場等から大量に廃棄されている。その中で、プラスチック製容器包装といった特定の廃棄物を大量に回収できるが、全量を受け入れられる大規模選別施設の新設が困難な状況だ。既存または計画中のリサイクル施設ごとに回収ルートを構築することにより、効率的な回収・再資源化が可能となるという。

 地方都市では、家庭排出の廃プラスチックを集約し、大規模選別施設での高度選別を実施し、高品質再生材の製造と効率的な循環モデルを検証する(図3)。対象地域は、岡山県内の自治体、茨城県内の複数自治体を想定。

図3 地方都市での高度なリサイクルチェーンのイメージ

出所 株式会社三菱総合研究所 ニュースリリース 2025年10月21日、「三菱総合研究所、「令和7年度 広域自治体における資源循環システム構築の実証事業」を開始」

 地方都市の特徴として、家庭からの廃棄が中心であるため、一定量の回収が可能という点が挙げられる。そのため、プラスチック製容器包装といった特定の廃棄物を1つの選別施設へ集約できるため、選別施設での選別を高度化することでリサイクル効率の向上が望めるとしている。

 中小地域では、住民参加による分別排出を基盤とした広域回収システムを実証する(図4)。これにより、地域コミュニティを活かした協働型循環モデルを構築する。対象地域は、鹿児島県薩摩川内市などを想定。

図4 中小地域での高度なリサイクルチェーンのイメージ

出所 株式会社三菱総合研究所 ニュースリリース 2025年10月21日、「三菱総合研究所、「令和7年度 広域自治体における資源循環システム構築の実証事業」を開始」

 中小地域は、家庭からの廃棄が中心のため回収量は少ないが、地域コミュニティが強く、分別排出などへの参画意識の醸成が比較的容易である。そこで、住民によるきめ細やかな分別排出により、リサイクル可能な資源を排出段階で分別してもらうことで、選別工程をできる限り省力化しリサイクルすることが可能。また、近隣の複数自治体で同様の分別排出を促すことで、広域回収を実現し回収効率の向上が望めるという。

 同実証事業は2026年2月まで実施し、成果報告書を取りまとめる。2026年度以降に、実証事業の結果をもとに循環型ビジネスモデルの社会実装と全国展開を目指す計画だ。


注1令和7年度資源自律経済確立産官学連携加速化事業費(広域自治体における資源循環システムの構築に向けた実証事業):再生材の供給量拡大を目的に、経済産業省が実施する事業。廃棄から再資源化までの各工程で実証を実施し、再生材の回収から再資源化、製造に至るスキームの構築と、そのコスト構造や現状を明らかにする。
注2:オレフィン樹脂:ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)など、プラスチック製品に広く使われる樹脂。
注3:PET樹脂:ポリエチレンテレフタレート。ペットボトルなどに使われる。
注4:ケミカルリサイクル:廃棄物を化学的に分解し、原料に戻して再利用する手法。
注5:マテリアルリサイクル:廃棄物を洗浄・粉砕するなど物理的に処理し、再び製品の材料として利用する手法。

参考サイト

株式会社三菱総合研究所 ニュースリリース 2025年10月21日、「三菱総合研究所、「令和7年度 広域自治体における資源循環システム構築の実証事業」を開始」

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