「川崎未来エナジー株式会社」2023年10月発足
神奈川県川崎市では2022年3月から、「市域の再生可能エネルギー等利用拡大に向けた廃棄物発電有効活用計画」注1をもとに地域エネルギー新会社の設立を計画し、そのパートナーとなる事業者を公募していたが、今年(2023年)8月に計7つの事業者を決定。あわせて新会社「川崎未来エナジー株式会社」の発足も公表された。
新会社のプロフィールを表1に示す。
表1 新会社「川崎未来エナジー株式会社」の概要
出所 https://www.city.kawasaki.jp/300/cmsfiles/contents/0000153/154000/siryou.pdf
市内で作り出す再エネ電源の地消化を手始めに
川崎市では、同市の廃棄物処理センターで発電した余剰電力を、これまで小売電気事業者を通して販売していたため、市外に流出していた。これを新会社によって、同市内の需要家に供給する。加えて、川崎市域内外の再エネ由来の電力も幅広く地産地消を推進することで、川崎市域の温室効果ガス排出量の削減を図る。
ゆくゆくは、川崎市民や事業者、金融機関などの多様なステークホルダーによる地域エネルギープラットフォーム構築も視野に入れている。これらの事業を、地域新電力事業などの経験をもつNTTアノードエナジー株式会社、川崎市エリアで多彩な事業を展開している東急株式会社(以下、東急)、株式会社東急パワーサプライ、さらに川崎信用金庫などの金融機関が連携・支援しながら事業展開を行う。
図1 川崎未来エナジー株式会社における事業の仕組み
相対電源:あいたいでんげん。1対1の個別交渉で契約する再エネ電源。
再エネアグリ:再エネアグリゲーション。再エネを集約して束ねて提供する電源。
オンサイトPPA:PPA(Power Purchase Agreement)とは電力販売契約のこと。オンサイトPPAとは、発電事業者が発電事業者の費用によって 需要家(企業等)の敷地内(オンサイト)の屋根等に太陽光発電設備を設置し、運用・管理をしながら、発電設備から発電された電気を需要家に供給する契約。
出所 川崎市 市長記者会見資料 令和5年8月24日「市域への再生可能エネルギー普及拡大を目指して本年10月に「川崎未来エナジー株式会社」を設立します!!」をもとに編集部で加筆
「かわさきカーボンゼロチャレンジ 2050」の一環として
川崎市では、すでに、2020年に脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ 2050」を策定注2、政府の2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)を目指して取り組みを進めている。
ちなみに、政令指定都市注3が脱炭素戦略を策定したのは、横浜市に次いで同市が2つめ。またこの戦略は、民間事業会社と一体となって進められている点も特徴で、今回の新会社設立に関わった東急や川崎信用金庫なども参画している。全体の戦略展開にあたってはマイルストーン(中間目標地点)として、2030年までに市内の主要公共施設の使用電力をすべて再エネに切り換えることを目標としており、今回の新会社設立はその目標達成の一環として位置付けられる。
注1:「市域の再生可能エネルギー等利用拡大に向けた廃棄物発電有効活用計画」の策定について(2022年3月31日)
注2:脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」策定(2022年3月31日)
注3:政令指定都市:地方自治法では指定都市という。地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のこと。全国には20の指定都市がある
参考サイト
市域への再生可能エネルギー普及拡大を目指して本年10月に「川崎未来エナジー株式会社」を設立します!!
川崎市 市長記者会見資料(令和5年8月24日)
300 を超える事業者・団体等の御賛同をいただいた脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ 2050」を策定しました!!
川崎市 市長記者会見資料(令和2年11月12日)
川崎市域への再生可能エネルギー普及拡大をめざして 川崎市を含む7者と「川崎未来エナジー株式会社」設立に合意
NTT アノードエナジー株式会社(2023年8月24日 ニュースリリース)
川崎市域への再生可能エネルギー普及拡大を目指して川崎市を含む8者で「川崎未来エナジー株式会社」を設立します
東急株式会社/株式会社東急パワーサプライ(2023年8月24日ニュースリリース)
川崎市「川崎未来エナジー株式会社」への出資について
株式会社東京きらぼしフィナンシャルグループ(2023年8月24日ニュースリリース)