〔2〕キャリアが提供する「価値」の変化 ~プラットフォームビジネスへの移行~
続いて、中川氏は、NGNによる「価値」の変化について説明した。NGNでは新しいサービスを作り出すための仕組みSDP(サービス提供基盤)がネットワーク上に用意されており、サービス事業者は、機能ごとのコンポーネントを組み合わせるだけで新しいサービスやアプリケーションを作ることができる。
中川氏は「電話の場合は、通信事業者がインフラからサービスまですべて提供していた。その後登場したインターネットでは、インフラとサービス提供者が分離したが、サービス事業者は、提供するサービスやアプリケーションをそれぞれ独自に開発する必要があり、コストも時間も設備もかかる。これに対して、NGNは、キャリアがサービスを作るための基本的な機能を提供し、サービス事業者はこのネットワーク上に用意されている新サービスを作り出すプラットフォームを利用することで、多様なアプリケーションやサービスを簡単に生み出すことができる。これが機能提供型のプラットフォーム型モデルだ」と説明した。
そして図9を示し、「NGNでは、キャリアが提供する『価値』が大きく変化する。これまでは、キャリアは回線を提供するだけで、アプリケーション事業者がサービスに必要な機能のすべてを自身で構築し、運用していたのに対し、NGNでは、キャリアが提供するプラットフォームが基本機能をもち、アプリケーション事業者はさらにユーザー側の付加価値を提供していくモデルに変化する」と述べた。
こうした、プラットフォームビジネス(機能提供モデル)には、2つの狙いがあると指摘する。
(1)サービス提供者に対してオープンで自由なサービス提供環境を提供
(2)機能単位での課金による新しい収益モデルへの移行(回線料金モデルからの脱却)
そして、英BT(British Telecommunications)の例として、
「BTは、NGNサービス『21CN(21世紀ネットワーク)』の構築を急ピッチで進めている。21CNでは、Web 21CNと称するアプリケーション開発のためのオープンなプラットフォームでAPIやSDK(ソフトウエア開発環境)を提供しており、21CNでアプリケーションやサービスを提供したい企業は自由に利用して新しいサービスを提供できる。なお、BTは通信事業者からサービス事業者への転身を進めており、すでに、BT全体のビジネスのうち、音声収益は10%以下にまで比率を下げている」と説明した。
そして、NTTグループによって提供されるNGNのSDP提供モデルを、図10に示し、「NTTグループの場合は、NTTコミュニケーションズがNGNのサービス提供基盤(SDP)を公開し、ASP事業者や一般企業向けのAPIを提供する。NGNのネットワーク機能を活用したサービスやシステムを手軽に組めるようにすることが狙っているのは、BTと同様である」と述べた。