[標準化動向]

802.1/802.3の標準化動向(9):40Gbps/100Gbpsイーサネット(IEEE 802.3ba)の目標仕様が最終決定

=40Gbpsイーサネットにシングルモード光ファイバ10kmの仕様を追加採択=
2008/06/18
(水)
SmartGridニューズレター編集部

今回は、IEEE 802.3WG(イーサネット)の802.3baタスクフォースにおいて進められている次世代高速化イーサネット(40Gbpsおよび100Gbpsイーサネット)の標準化審議の進展についてレポートする。
なお、次世代高速化イーサネットの動向については、本WBB Forumサイトの連載「802.1/802.3の標準化動向(8):〈802.3ba〉40/100Gbpsイーサネットの標準化動向(その1)」において、標準化のこれまでの経緯を紹介しているので、そちらも参照されたい。

≪1≫IEEE 802.3ba高速化イーサネットの標準化進展

「802.1/802.3の標準化動向(8):〈802.3ba〉40/100Gbpsイーサネットの標準化動向(その1)」に紹介したように、IEEE 802.3baタスクフォース(小委員会)において40Gbpsおよび100Gbpsの2種類の伝送速度のイーサネットについて標準化が進められている。2008年3月に採択された最新の標準化タイムラインを図1に示す。


図1 2008年3月に採択されたIEEE 802.3ba標準化タイムライン〔「IEEE P802.3ba 40Gb/s and 100Gb/s Ethernet
Task Force Agenda and General Information」P23より引用〕(クリックで拡大)

※「IEEE P802.3ba 40Gb/s and 100Gb/s Ethernet Task Force Agenda and General Information」:
http://www.ieee802.org/3/ba/public/may08/agenda_01_0508.pdf#page=23

図1のタイムラインにあるように、去る2008年5月の中間会合(Interim)をもって、新規提案の受け付けが終了した。すなわち、今後、高速化イーサネットの標準化作業は、これまで提案のあった方式の中から、これまで採択されたオブジェクティブ(目標仕様)の要件を満たすための最適な方式案(ベースライン方式)を選定し、それらのベースライン方式に基づいて最初のドラフト仕様(ドラフト1.0)を発行する作業が行われていく。ベースライン方式の採択は2008年7月の総会(Plenary)において完了し、続く2008年9月の中間会合においてドラフト1.0が発行されるスケジュールとなっている。

≪2≫40Gbpsイーサネットにシングルモード光ファイバ10km向け仕様を追加

表1に現在までに採択されているオブジェクティブ(目標仕様)の一覧を示す。

前回「802.1/802.3の標準化動向(8):〈802.3ba〉40/100Gbpsイーサネットの標準化動向(その1)」において紹介した目標仕様に対して、40Gbps動作向けの物理層として『シングルモード光ファイバ10km』の仕様が追加されている。100Gbps方式に対する40Gbps方式の経済性が見直され、40Gbps方式の適用領域を100m以内のクラスタ内接続(サーバ群をスター状に接続)などの用途だけでなく、クラスタ間接続や広域網へのアクセス向け接続用途にまで広げようという議論に基づいて、追加されたものである。


表1 802.3ba高速化イーサネットの目標仕様(クリックで拡大)

* 40Gbpsの10km目標仕様は2008年3月のIEEE 802委員会総会において、追加採択された
※ OTN:Optical Transport Network。ITU-Tにおいて規定される光伝送ネットワーク方式
※ OM3:Optical multimode 3。850nm波長において2000MHz・kmのモード帯域をもつコア径50μmの広帯域マルチモード光ファイバ
※ モード帯域:伝送速度に関わるマルチモード光ファイバの品質の指標。波長帯ごとに規定される

図2に、40Gbps/100Gbpsイーサネットの光インタフェースとそれぞれがカバーする市場領域を示す。

10km向けの40Gbpsイーサネットの仕様追加により、100Gbpsイーサネットに比べて廉価な40Gbpsイーサネットを、従来想定されていたデータ・センター以外の領域においても適用できることになる。企業内の幹線網用途や通信事業者の局舎内や短距離の局舎間接続などにも用途が広がることが想定される。


図2 40Gbps、100Gbpsイーサネットの光インタフェースと市場領域(クリックで拡大)


参考文献

(1)"IEEE P802.3ba 40Gb/s and 100Gb/s Ethernet Task Force Agenda and General Information", John D'Ambrosia (Force10 Networks), 2008/5, http://www.ieee802.org/3/ba/public/may08/agenda_01_0508.pdf

(2)"40GbE SMF for Carrier Applications", Jesse Simsarian (Alcatel-Lucent), et.al, 2008/03, http://www.ieee802.org/3/ba/public/mar08/simsarian_01_0308.pdf

(3)"40G SMF Ad-Hoc Summary", Alessandro Barbieri (Cisco Systems), 2008/03, http://www.ieee802.org/3/ba/public/mar08/barbieri_01_0308.pdf

(4)"Approved Minutes IEEE 802.3ba Task Force March 18-20, 2008", George Oulundsen, 2008/3, http://www.ieee802.org/3/ba/public/mar08/minutes_01_0308_approved.pdf

(5)"IEEE Std 802.3?-2005 - Part 3: Carrier sense multiple access with collision detection (CSMA/CD) access method and physical layer specifications", 2005/12/9

(6)改訂版10ギガビットEthernet教科書、石田・瀬戸、2005/4、インプレス、 http://internet.impress.co.jp/books/2092/

 
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