[スペシャルインタビュー]

NTTぷららのNGN/IPTV戦略を聞く(1):NTTグループのIPTV戦略の核となる「ひかりTV」

2008/07/25
(金)
SmartGridニューズレター編集部

≪2≫NTTグループのIPTV戦略の核となる「ひかりTV」

■NTTぷららのIPTVサービス「ひかりTV」は、世界でも画期的なサービスだと思いますが、まず「ひかりTV」というIPTV(映像配信)サービスの内容について、説明していただけますか。

板東浩二氏(NTTぷらら 代表取締役社長)
板東浩二氏
(NTTぷらら
代表取締役社長)

板東 当社の「ひかりTV」について、経緯を含めて話をします。

IPTV(映像配信)サービスについては、NTTグループの戦略として2つの目的がありました。

1つは、2008年3月31日のNGNの商用サービス開始に合わせて、NGNに対応した新しいIPTVサービスを開始することです。これがすなわち「ひかりTV」で、2008年3月31日に開始しました。「ひかりTV」はNGNに対応したサービスで、H.264/AVC(※)という先進的な画像圧縮技術を使い、ハイビジョン等も提供できますし、さらに地上デジタル放送のIP再送信についても、当初は東京と大阪だけですが、提供しています。

もう1つの目的は、これまでNTTグループにあった「4th MEDIA」(NTTぷらら)「OCNシアター」(NTTコミュニケーションズ)「オンデマンドTV」(オン・デマンド・ティービー)の3つのIPTVサービスを、1つのプラットフォーム、ワンサービスにまとめて、効率化を図るということです。この3サービスは、それぞれがプラットフォームを作り、ばらばらにサービスを提供していました。コンテンツ調達やネットワークのオペレーション、番組ガイドの制作のようなものまで、同じグループ内で、それぞれが別々に行っていたわけです。そこで、この3つの従来サービスを「ひかりTV」という新しいサービスで、2008年7月末に全部、巻き取って統合していくというのが大きな計画です。

図3に、当面のNTTグループのIPTVサービス(ひかりTV)の事業計画を示します。

H.264/AVC:Advanced Video Coding。ITU-T(国際電気通信連合-電気通信標準化部門)とISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)で標準化されたMPEG-2に比べて約2倍圧縮率が高い技術
MPEG-2:ISO/IEC JTC1(第1合同技術委員会)によって標準化された動画像圧縮符号化技術の1つ


図3 NTTグループのIPTVサービスの全体スケジュール〔NTTぷらら資料より引用〕(クリックで拡大)


■そうしますと、従来の3つのサービスは「ひかりTV」の中に統合、吸収されていくことになるのですね。

板東 そうです。NTTぷららの「ひかりTV」1本という格好になるわけです。図4に、それぞれの現在のサービス内容をまとめました。「オンデマンドTV」「OCNシアター」「4th MEDIA」は、それぞれサービスの中身が違っていますが、1本に統合する以上は、どのサービスのユーザーから見ても、新しいサービスの質が上がるようにすることが重要です。このため、「ひかりTV」は、全部のサービスの「いいとこ取り」をしたサービス内容となっています。


図4 現行3つのIPTVサービスと新しい「ひかりTV」のサービスの比較〔NTTぷらら資料より引用〕(クリックで拡大)


■「ひかりTV」の運営体制について、現行の体制とこれからの体制を教えていただきたいのですが。

板東 図3の下段に示しますように、NTTグループのIPTVサービスは、コンテンツ配信のためのプラットフォームの事業者と、そのプラットフォームの上で、放送サービスを提供する事業者(電気通信役務利用放送事業者)の2つで提供しています。

プラットフォームの運用については、先ほども述べたように、今後はNTTぷららに一本化します。

放送サービスについては、これまで「オンデマンドTV」の放送サービスを運営していたアイキャストと、「4th MEDIA」「OCNシアター」の放送サービスを運営していたオンラインティーヴィという2つの役務利用放送事業者が合併し、新生のアイキャストが存続会社として事業を継続します。

VoD(ビデオ・オン・デマンド)についても、従来サービスではそれぞれに提供していましたが、今後はNTTぷららが提供します。また、今後、登場するであろういろいろなサービスを考えますと、見逃した番組の視聴やチャンネル・オン・デマンドなどのように、放送サービスとVoDサービスは、番組編成上も非常に結びつきが強く、一体となって提供していく必要があると考えています。そこでNTTぷららは、新生アイキャストに対して、20%出資をしています。もちろん、別会社ですから、お互いに保護するべき情報は保護するといったセキュリティの面でのファイアウォールはきちんと整備したうえで、ユーザーに対しては、極力一体となった運営ができるようにやっています。

■放送サービスとVoDサービスを一体としてサービスするというのは、具体的にどういうことでしょうか。

板東 例を挙げれば、多チャンネル放送のドラマチャンネル「AXN」で放送されている「LOST(ロスト)」シリーズという人気ドラマがあります。もともと人気が高い番組ですが、放送のほうで「LOST(ロスト)」シリーズの「シーズン3」が開始されるときに、VoDで昔の「シーズン1」とか、「シーズン2」などを連動させると、視聴率がまたポーンと上がります。

ですから、「ひかりTV」のコンテンツの提供も、やはりIPTVとVoDの両者は、番組の編成上、極力一体となってやっていくのが望ましいと考えています。

■これまでのところを、整理させていただくと、

(1)IPTVサービスは光回線サービスの「ひかりTV」に一本化する
(2)放送事業者は新生のアイキャストに一本化する
(3)プラットフォームの運営はNTTぷららに一本化する

こういう運営体制になるということでよろしいでしょうか。

板東 そうですね。付け加えますと、VoDサービスの提供もNTTぷららに一本化して「ひかりTV」で提供していくことになります。

>>「第2回 地上デジタル放送IP再送信を実現した『ひかりTV』」へつづく


プロフィール

板東浩二氏(株式会社NTTぷらら 代表取締役社長)

板東 浩二(ばんどう こうじ)

現職:株式会社NTTぷらら 代表取締役社長

【略 歴】
1977年4月 日本電信電話公社(現NTT)入社
1991年2月 九州支社 ISDN推進室長
1993年3月 長距離事業本部 通信網システム部 担当部長
1996年3月 マルチメディアビジネス開発部 担当部長
1998年7月 現職就任

【表彰等】

2001年5月 社団法人 日本インターネットプロバイダー協会 常任理事
2003年5月 電気通信協会 IT事業奨励特別賞 受賞
2008年   ブロードバンド・アソシエーション 理事


 

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