[スペシャルインタビュー]

NTTぷららのNGN/IPTV戦略を聞く(2):地上デジタル放送IP再送信を実現した「ひかりTV」

2008/08/04
(月)
SmartGridニューズレター編集部

NGNの商用サービス開始を背景に、ITU-TのIPTV-GSIで進むIPTVの標準化も急ピッチで進められています。国内でもIPTVの国内仕様の標準化を推進する有限責任中間法人IPTVフォーラムが発足するなど、IPTVを取り巻く環境は大きく動き出しました。そうした中、NTTぷららは、国内のIPTV事業者として、初めてNGNに対応した地上デジタル放送のIP再送信サービスを開始、さらに2008年12月からNHKの番組「NHKオンデマンド」(有料配信)を提供する計画を発表するなど、IPTVサービスで先行しています。同時に、通信と放送の融合が本格化する大きな契機にもなります。そこで、NTTぷらら 代表取締役社長 板東 浩二(ばんどう こうじ)氏に、NTTぷららが提供するIPTVサービス「ひかりTV」の特長や同業他社とのサービスの違いから、今後のIPTV市場の展望や課題などについてお聞きしました。
第2回は、
第1回 NTTグループのIPTV戦略の核となる「ひかりTV」
に続き、「ひかりTV」のネットワーク構成や、具体的なサービス・メニュー、地上デジタル放送のIP再送信などについて、お話いただきました。

NTTぷららのNGN/IPTV戦略を聞く(2):地上デジタル放送IP再送信を実現する「ひかりTV」"

≪1≫「ひかりTV」のネットワーク構成

■2008年5月9日に「ひかりTV」は日本初となる地上デジタル放送IP再送信のサービスを開始されましたが、「ひかりTV」を利用するためには、どういう条件が必要なのでしょうか。

板東浩二氏(NTTぷらら 代表取締役社長)
板東浩二氏
(NTTぷらら
代表取締役社長)

板東 そうですね。「ひかりTV」を利用するためには、まずNTT東日本、NTT西日本が提供する光回線サービスである、

(1)フレッツ 光ネクスト
(2)Bフレッツ
(3)フレッツ・光プレミアム

のいずれかに加入することが必要です。そして、「ひかりTV」の対応チューナー(セット・トップ・ボックス:STB)も必要となります。

写真1および表1に「ひかりTVチューナー」の画像と製品仕様を示しました。


写真1 「ひかりTV」のSTB(クリックで拡大)



表1 「ひかりTV」のSTB(セット・トップ・ボックス)の製品仕様(クリックで拡大)


■「ひかりTV」はどのようなネットワーク構成でサービスを提供しているのでしょうか。

板東 図1に示したように、「ひかりTV」は、NGNのユーザーにも、従来のフレッツのユーザーにも、利用していただけます。「ひかりTV」用の新しい「ひかりTVチューナー」(STB)が4月から提供されていますが、このチューナー(STB)は、H.264/AVCとMPEG-2の両方に対応しています。また、NGNでも従来のフレッツでも、両方のネットワークで使えます。新しい「ひかりチューナー」で「ひかりTV」を使っていただく場合には、ハイビジョンにも対応することができます。さらにNGNのユーザーには、一部地域で地上デジタル放送のIP再送信のサービスも提供しています。


図1 「ひかりTV」のネットワーク構成〔NTTぷらら資料より引用〕(クリックで拡大)


■従来のIPTVサービスを利用しているユーザーの場合、従来サービスに対応したSTBはどうなるのでしょうか。

板東 従来のサービスを利用されているユーザーは、「4th MEDIAチューナー」「オンデマンドTVチューナー」「OCNシアターチューナー」というSTBを持っているわけですが、オンデマンドTVの一部のSTBを除き、基本的に従来のサービスでご利用いただいているSTBのファームウエア(※1)をバージョンアップすることによって、新しい「ひかりTV」のサービスを使っていただけます。ファームウエアをネットワーク側から書きかえて、「ひかりTV」に対応できるように考えています。ただし、オンデマンドTVのSTBのうち、一部の機種については交換が必要です。

また、従来のサービスにおいては、オンデマンドTVのSTBの一部機種がハイビジョン(HDTV ※2)とH.264/AVCに対応していますが、ほとんどの従来STBは、MPEG-2で、通常の画質(SDTV ※3)となっています。

※1 ファームウエア:Firmware。電子機器に組み込まれた制御用のソフトウェア
※2 HDTV:High Definition TeleVision、ハイビジョン画質のテレビ
※3 SDTV:Standard Definition Television、標準画質のテレビ

■ユーザーは、「ひかりTV」を視聴するために、STBが必ず必要となるのでしょうか。

板東 そうでない場合もあります。当社では、「ひかりTV」用に新しくIPTVのプラットフォームを構築したわけですが、これは、日本のIPTVの標準化団体であるIPTVフォーラムで検討されている技術仕様を踏まえています。IPTVの標準そのものはまだ策定されていませんが、策定後、その仕様が公開され次第、「ひかりTV」も、IPTVフォーラムの規格に準拠していきたいと考えています。

IPTVフォーラムの標準に準拠すれば、それに合わせて、いろいろな端末メーカーが標準仕様に合った端末を作ってくれるでしょう。すでに、「ひかりTV」のチューナー(STB)をテレビの中に内蔵した東芝の「REGZA」という製品もあります。この製品は、LANケーブルをテレビにつなぎ、ユーザー登録をしていただければ、STBなしで「ひかりTV」を視聴することができます。

このように標準の規格に準拠していれば、いろいろな家電製品に「ひかりTV」のチューナー(STB)を組み込んだ製品を作ってもらえると期待しています。

■現在はまだ、IPTVの標準が決まってないわけですが、「ひかりTV」のSTBは、御社の独自仕様に基づいて作られた製品なのですか。

板東 確かに、現在はまだIPTVの標準仕様は策定されていませんが、NTTグループを含む通信事業者、家電メーカーなどが参加しているIPTVフォーラムで標準化を進めているIPTVの技術仕様をベースに映像配信プラットフォームを構築しており、「ひかりTV」のSTBも、その技術仕様を視野に入れて作られています。

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...