≪4≫TD-SCDMAの料金体系とサービス
〔1〕TD-SCDMAの通話料金
表2に中国移動のTD-SCDMAの基本料金体系を示します。なお、第2世代の通信料金については、本WBB Forumに連載された「中国ケータイ最前線」の第5回に表を掲載していますので参考にしてください。通信費用の体系や額はほぼ第2世代と同じですが、異なるのは、市内での使用料のうち着信には課金されないということです。第2世代では、市内でも着信側で利用料を支払う体系となっていますので注意が必要です。なお、みなさんご存知のように、日本では、携帯電話の着信に費用はかかりません。
〔2〕TD-SCDMAの料金プラン
TD-SCDMAに加入する際には、表3に示す3つの料金プランから選択することになります。プランは月額の基本料金ごとに3つのコースがあります。TD-SCDMの料金プラン各コースの内容は、無料通話時間、第2世代のGSM方式の利用料金などから構成されます。GSM方式が入っているのは、すでに述べたように、端末がTD-SCDMAとGSMの両方が利用できるようになっており、TD-SCDMAの電波が入らない場合にはGSMで電話をかけられるからです。第2世代のGSMの料金については、本WBB Forumに連載された「中国ケータイ最前線」の第5回を参照してください。
これらのプランで異なるのは、主に無料の通話時間です。無料料金には市内通話とテレビ電話の通話時間も入っています。なお、28元(450円)のプランについては、"彩鈴機能"のサービスが使えません。この彩鈴機能とは、他人に電話をかけるときに相手が出るまでに、その相手が設定した音楽が聞こえるようになっている機能です。着メロというのは、着信の時に聞こえますが、彩鈴機能は発信の時に聞こえるので"発メロ"(※6)と言ってもいいでしょう。発メロは、自分に電話をかけてくる人に聞かせるもので、自分で時間や相手に応じた曲を設定しておきます。つまり、ある人へ電話をかける時には、呼び出し音の代わりに相手が設定した発メロが鳴るというわけです。音楽を設定しておく人もいれば、面白いメッセージ(例えば、"電話なんかしてくるなよ"、とか)を設定している人もいます。発メロに使うコンテンツは、さまざまな会社が提供しています。例えば、雷霆万均、滾石移動、新浪、捜狐(Sohu)、QQ、網易、華友世紀などのたくさんの会社があり、ここから曲やメッセージをダウンロードして使うことになります。なお、彩鈴機能を使うには、月5元(90円)の利用料金の契約をしなければなりません。
※6 発メロ:日本でも、2003年9月からNTTドコモが「メロディーコール」というサービス名で、また、2005年2月からau(KDDI)が「EZ待ち歌」というサービス名でサービスを提供している
〔3〕TD-SCDMAのテレビ電話サービス
TD-SCDMAでは、テレビ電話サービスも提供されています。ただし、この機能は、相手もTD-SCDMAの携帯電話を使っていなければ利用できません。相手がTD-SCDMAの電波が届かない場所にいた場合や、テレビ電話機能のない端末を使用していた場合には、通常の音声だけの電話でつながることになります。この料金体系を表4に示します。表3にも一部載せていますが、通常の音声だけの通話に比較し、テレビ電話サービスは約3倍の料金がかかります。また、ローミングがない場合には、着信料金はゼロですが、ローミングが行われた場合には、1分当たり0.6元(9.6円)を着信側も払わなければなりません。
〔4〕マルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)
日本と異なり、中国ではEメールよりもショート・メッセージ(SMS)での通信が盛んです。SMSはメッセージの宛先を携帯電話番号にして送るメールのようなものです。メッセージの長さは140バイト程度に制限されています。最近では、メッセージ長の制限が緩く、音、画像、写真、動画を含めたマルチメディアのメッセージ「マルチメディア・メッセージング・サービス」(MMS)が使われるようになりました。このMMSは、第3世代の携帯電話機能として標準化されています。カラーのメッセージも送信することができることから、中国ではMMSのことを"彩信"と呼んでいます。MMSではSMSと異なり、メール・アドレス宛の転送もサポートされました。
SMSやMMSでは、メッセージを直接携帯電話同士でやり取りしますが、その機能を利用して、コンテンツ提供会社からニュース、ゲーム、着メロ、音楽などのコンテンツをダウンロードするためにも使われています。ただし、あらかじめサービス提供会社とは契約をしておく必要があります。日本では、例えば、iモードなどの機能を利用して、コンテンツをダウンロードしますが、中国では、iモードに相当するWAP(Wireless Application Protocol)があるものの、データやメッセージ配信にはSMSやMMSもかなり使われています。ただし、第3世代の携帯電話の普及が進むと、SMSやMMSはWAPにとって代わられるのではないかという見方もあります。表5にSMSとMMSでコンテンツを提供している主な会社を示しておきます。
よく利用されているサービスに、携帯で配信される新聞があります。これは、"手機報"と呼ばれており、全国の主要メディアのニュース、スポーツ、娯楽、文化、生活、経済、政治などの記事を提供します。写真も入ったMMS形式の新聞になっていますが、その利用料金は、各新聞社によって違います。
MMSの利用料金は、TDネット(TD-SCDMAネット)内への発信は1通当たり0.60元(9.6円)となっており、TDネットの外への発信は1通当たり0.80元(12.8円)となっています。また、SMSと同様にメッセージの着信は無料です。
〔5〕WAPのデータ通信サービス
日本のドコモがiモード・メニューでポータルを提供しているように、中国でもWAP上でポータルを提供しています。例えば、中国移動の場合は、「Monternet」と呼ばれており、接続するとコンテンツごとに分類されたメニューが表示されます。日本のサービスと同じように、ニュース、ゲーム、情報、娯楽、生活、財政経済などのあらゆる情報をオンラインで見たり、ダウンロードすることができます。また、メール、ネットワーク・ゲーム、チャットなどもできるようになっています。表6にその料金表を示します。これらすべてのコースには、インターネット・アクセスやWAPの利用料も含まれます。また、定額をオーバーしても、上限が決まっており、最高額が1000元(1万6000円)で押さえられます。なお、テスト期間中のTD-SCDMAの通信費は半額になっています。ただし、GSMでもデータ通信をした場合には、GSMの通信費を別途払わなければなりません。
≪5≫中国携帯通信事業者の新しい動向
2008年6月2日、固定系の中国網通グループ(香港)の有限会社(略称の"中国網通"で英語ではChina Net)と携帯系の中国聯通株式有限会社(略称の"中国聯通"で英語ではChina Unicom)の2社が合併することを発表しました。中国網通は1株につき中国聯通の1.508株との交換を行うことによって合併を行います。また、中国網通の米国株については1株を中国聯通の米国株3.016株と交換します。中国網通は、2002年の通信事業再編によって生まれたもので、中国の北部10省を中心として主に固定電話サービスやインターネットサービスの提供を行ってきました。一方、中国聯通のほうは、中国全土を対象として携帯電話のサービスを行ってきました。両社の合併の結果、携帯と固定の両方のサービスを行う新しい中国聯通が誕生することになります。
なお、中国聯通はGSM方式とCDMA方式の両方のサービスを提供していますが、利益の高くないCDMA事業とそのネットワークを合計約1100元(17800億円)で固定系の中国電信に売却することを発表しました。これは双方にとって利益となることです。つまり、中国聯通にとっては、利益の上がらないCDMAから撤退し、大きな利益を獲得できるGSM方式の携帯電話事業に資源を集中させることができます。一方、中国電信にとっては、CDMA業務を展開することによって、移動通信サービスに参入することができます。中国電信は、2002年の通信事業再編によって生まれたもので、中国南部を中心とした21省市を中心として固定電話とインターネットサービス事業を行ってきました。
これで、中国の通信業界は、中国網通、中国電信、中国聯通、中国移動の4事業者体制(※7)から、中国聯通(中国網通と合併)、中国電信、中国移動の3グループに再編されることとなりました。
※7 4事業者体制:この4事業者以外にも、鉄道沿線に固定電話やネット接続サービスを提供している中国鉄通(China Railcom)と衛星通信関係のサービスを提供している中国衛通(China Satcom)があったが、前者は中国移動に吸収された。また、後者は、映像配信と衛星関連の通信に特化し、その他の基本的な通信サービス設備を中国電信に売却することになると見られている
【参考サイト】
中国網通:http://www.cnc.cn/mj/news.asp?Unid=11703
中国聯通:http://www.chinaunicom.com.cn/
中国電信:http://www.chinatelecom.com.cn/
中国移動 TD-SCDMA社:http://tdtest.chinamobile.com/news/news_080330001.html
【コラム】
オリンピック関連サイトリンク集
いよいよ北京オリンピックの開催がせまってきました。そこで、コラムでは、オリンピックに関する情報をインターネット上で提供しているサイトを表にして紹介します。みなさんがオリンピックを楽しんでいただくための参考になれば幸いです。なお、オリンピックのことを中国では漢字で"奥運"と書きます。表にその漢字がたくさん出てくるのはこのためです。
北京2008年奥運官方網 http://www.beijing2008.cn/ オリンピックのオフィシャルサイトで、試合の日程、試合場所、ニュース、チケット販売、ボランティア等の情報を提供しています。英語、フランス語、スペイン語、アラビア語のサイトもあります。 |
中国奥運委員会の専門サイト http://www.olympic.cn/ オリンピックの準備、実行活動などを紹介している専門サイトです。 |
捜狐奥運頻道 http://2008.sohu.com/ オリンピックに関する動画、画像、ブログ、活動などの情報を提供しています。 |
CCTV奥運網 http://2008.cctv.com/ 中国中央テレビ局のサイトで、オリンピックに関する動画、ニュースなどの映像をオンラインで見ることができます。 |
奥運図片庫 http://www.beijing2008.cn/photo/ オリンピックに関する画像を見ることができます。 |
奥運視頻 http://2008.baidu.com/video/index.html オリンピックに関する動画の専門サイトです。 |
奥運吉祥物 http://2008.sohu.com/s2005/jixiangwu.shtml オリンピックの5つのマスコットに関する専門サイトです。 |
奥運中国 http://www.aoyunchina.com/ 中国でオリンピックに対する活動などの紹介サイトです。 |
08奥運専門商品販売店 http://www.beijing2008.cn/95/06/column211990695.shtml オリンピックの記念物及び販売専門店を紹介するサイトです。 |
奥運票務網 http://www.tickets.beijing2008.cn/ オリンピックの試合チケット販売販売の専門サイトです。 |
奥運地図 http://www.mapbar.com/aoyun/index.html オリンピック試合会場の地図を紹介する専門サイトです。 |
プロフィール
陶一智(とう・いちち)
7年前に来日し、2006年に法政大学ビジネススクールにおいてMBA(経営学修士号)を取得。
現在、株式会社TERMONYのインターネットビジネス事業部代表として、女性のためのウィッグ販売サイトhttp://www.igennki.comのオペレーションを行っている。