4億台を超えた中国の携帯市場
TELECOM2006は、中国・香港(人口:約700万人)で開催されたこともあり、展示会場は中国の通信事業者・通信機器メーカーが大量に出展して他を圧倒し、通信分野でいよいよ中国の時代が到来しつつあることを実感させた。
事実、中国(人口:約13億人)では4億台以上の携帯電話が普及(この他PHSを加えて5億1300万台;2006年5月末時点)するなど世界第1位の市場をもち、さらに2008年の北京オリンピックに向けて第3世代(3G)の導入が本格化しようとしていることもあり、大きな注目を集めた。
香港では、すでに3GのW-CDMAはサービスが開始されているが、中国本土は、3Gの導入は認可されていない(ライセンスが発行されていない)ため、第2世代(2G)のGSM方式が90%以上の市場をもち、残りがCDMA(cdmaOne)方式となっている。
TDIA(TD-SCDMA産業連盟)のもとに
大デモンストレーション
現在、中国では、W-CDMAやCDMA2000と並んで、1999年にITU-Rで勧告化されたIMT-2000インタフェースのひとつである「TD-SCDMA」(3GPP標準)方式の導入に向けて、活発な取り組みが展開されている。
この第3世代(3G)モバイルのTD-SCDMAとは、Time Division Synchronous Code Division Multiple Access の略で、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式による同期符号分割多元接続と訳される。
すなわち、W-CDMAやCDMA2000のように、上りと下りの通信に異なる周波数を使用するのではなく、同一の周波数を時間的に分割し、「上り」と「下り」を交互に切り替えて通信する双方向通信方式である。W-CDMAなどと比較して、時分割でユーザーを管理でき、周波数効率がよいところから、北京や上海のような大都市に向いた方式といわれている。
TD-SCDMAは中国の通信史上でもめずらしく、中国から提案され勧告化(標準化)された、歴史的な無線インタフェースであるため、中国政府はTD-SCDMAによる商用サービス開始に向けて、国をあげて積極的な取り組みを展開している。TELECOM2006会場では、2002年初頭に通信関連企業によって設立された、TD-SCDMAの標準化のための研究開発や製品開発を行う「TDIA」(TD-SCDMA Industry Alliance、TD-SCDMA産業連盟)の主導のもとに、多くの企業を集め集中的な展示・デモを行った。
5都市で1万人以上がフィールド試験へ
現在、商用サービス開始に向けてTD-SCDMAのフィールド試験が、表1に示すように、北京(ペキン)、上海(シャンハイ)、青島(チンタオ)、保定(ホテイ)、厦門(アモイ)の5都市で行われている。すでに、通信機器メーカーである大唐移動(ダタン・モバイル:DT mobile 写真4)、ZTE(中興通訊 写真5)、TD Tech(シーメンスとファウェイの合弁会社 写真6)などによって無線基地局やサービスなどが提供されている。
さらにZTE、モトローラ、サムスン、LG、T3G、ヘア(Haier)、レノボ(写真7)、展訊通信(SPREADTRUM 写真8)など20社の端末メーカーから30種類以上のTD-SCDMA対応の携帯端末などが作成され、1万人以上のモニターに配布されてフィールド実験が行われている。フィールド実験におけるサービスとしては、音声のほかに、テレビ電話や映像のストリーミング、SMS(ショート・メッセージ)などが提供されている。