再資源化が難しかったFRPを「電炉CCS法」で処理
FRP(繊維強化プラスチック)製品を製造・販売する天龍コンポジット株式会社(以下、天龍コンポジット)は、製造工程で発生するFRP廃棄物を再資源化する取り組みを2025年2月から開始した。従来、再資源化が難しく埋立処理されていたFRPをケミカルリサイクル技術「電炉CCS法」で処理し、製鋼工程で再利用する。同6月11日に発表した。
図1 天龍コンポジットによるFRP廃棄物を再資源化する流れ
出所 天龍コンポジット株式会社 ニュースリリース 2025年6月5日、「常識を覆す、FRPの循環利用。天龍コンポジットが電炉CCS法で再生困難物の再資源化を達成。」
FRP業界における環境課題への挑戦
FRPは、軽量性、高強度、耐腐食性といった特性を持ち、金属の代替素材として種々の分野で需要が拡大している。しかし、熱硬化性樹脂を使用しているため、再加熱による溶解や分解が困難であり、他の素材との複合使用も多いため、不用になったFRPの多くは埋立処分されている。近年、最終処分場の埋立容量の逼迫や処分費用の高騰、環境配慮への要求の高まりから、FRP廃棄物の再資源化が課題になっている。
天龍コンポジットは、FRP製のパイプを製造する際に発生する端材を再資源化するために電炉CCS法を導入した。
電炉CCS法では、FRP端材を鉄粉とともに破砕、圧縮成形し、製鋼工程で鉄の硬度を高めるために使用されている加炭材を生成する。生成した加炭材は電炉メーカーに供給し、鉄スクラップとともに電炉で溶融される。これにより、鉄中の炭素量を調整し、鉄の強度と加工性を高める。
従来、炭素量の調整には、石油由来のコークスが使用されてきた。加炭材で代替することにより、廃棄物の排出抑制とCO2排出削減につながるという。
図2 FRP端材の処理フロー
出所 天龍コンポジット株式会社 ニュースリリース 2025年6月5日、「常識を覆す、FRPの循環利用。天龍コンポジットが電炉CCS法で再生困難物の再資源化を達成。」
電炉CCS法の運用開始後、4カ月で合計1トンを超える資源を回収した。これにより、天龍コンポジットでは、廃棄に依存しないFRP端材の処理体制の構築が進んだという。
図3 天龍コンポジットの本取り組みにおける資源回収量
出所 天龍コンポジット株式会社 ニュースリリース 2025年6月5日、「常識を覆す、FRPの循環利用。天龍コンポジットが電炉CCS法で再生困難物の再資源化を達成。」
本取り組みにおける資源物流のスキーム構築と運用を、廃棄物マネジメントや環境コンサルティングを手掛けるサティスファクトリーが支援した。
天龍コンポジット株式会社 ニュースリリース 2025年6月5日、「常識を覆す、FRPの循環利用。天龍コンポジットが電炉CCS法で再生困難物の再資源化を達成。」
株式会社サティスファクトリー お知らせ 2025年6月5日、「常識を覆す、FRPの循環利用。天龍コンポジットが電炉CCS法で再生困難物の再資源化を達成。」