Q20:デジタル放送における著作権は?
デジタル放送では著作権等の権利はどのように扱われるのでしょうか?
デジタル・データの特徴として、コピーを繰り返しても品質が劣化しないという性質があります。アナログ・データでは、品質が劣化することが必然でしたので、これはデジタルの大変優れた特徴の1つと考えることができます。
しかし、コンテンツ・ホルダーと呼ばれる、各種のコンテンツに関する権利(著作権もそのうちの1つ)を保有している人や団体から見ると、この特徴はあまり歓迎できることではありません。つまり、違法にコピーを繰り返しても元の品質が失われないわけですから、コンテンツの見返りとしての収入が減ってしまうことになりかねないのです。正当な収入を得ることができないと、良いコンテンツを生み出すこともできなくなるという悪循環を生み出すことになってしまいます。
≪1≫権利管理と保護のための情報
これを防ぐために、各種の暗号方式を利用して、コンテンツを暗号化して流通させるという方法があります。そして、コンテンツを視聴する正当な権利をもっている人にだけ、暗号を解くことができるようにすればよいわけです。暗号を解くための鍵を、どのようにして安全に受け渡すことができるのか、どのような暗号方式を用いれば不正使用を防止することができるのかなど、さまざまな研究開発が行われています。
しかし、実際の運用を考えると、権利保護に関する情報も併せて流通させなければならないことに気が付きます。つまり、このコンテンツを見るためには「いくらのお金を払って」、「暗号を解く鍵をどこから入手すればよいのか」というような情報です。また、コンテンツのさまざまな視聴形態を考慮すれば、100円を払って2回までは見てもよいが、それ以上は別途200円が必要になるというような課金方式もあり得るでしょう。
このような情報のことを、国際標準化団体であるTV-Anytimeフォーラム(2005年7月に活動を終了し、その規格はETSI標準となっている)では、権利管理と保護のための情報(RMPI:Rights Management and Protection Information)と呼んでおり、一種のメタデータであるという観点から標準化が進められました。また、国際標準化団体のMPEGでもMPEG-21やMPEG/IPMPとして同様の検討が行われました。
≪2≫デジタル・コンテンツ流通に共通な権利保護方式
このようなデジタル・コンテンツに関する権利保護の問題は、デジタル放送だけに特有の問題ではなく、あらゆるデジタル・コンテンツの流通に関わる問題です。例えば、すでに電子ブックなどが考えられていますが、ここでも同様の問題が内包されています。
このように考えてみると、デジタル放送におけるコンテンツの権利保護方式にある特別な方式を使うのではなく、デジタル・コンテンツ流通のすべてに渡って共通な権利保護方式を用いるのが得策であるということがわかると思います。そうすることによって、同じシステムで権利情報に基づいて権利を保護管理することができ、さまざまなコンテンツの複合的な利用サービスも可能になってきます。
本書の執筆時点で、その共通方式として有望であると考えられているのは、XrML (Extensible Rights Markup Language、拡張可能権利マークアップ言語)と呼ばれているものです。
※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(下)」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。