Q23:テレビ・コマーシャル(CM)の形態は変わる?
地上波デジタル放送が始まるとテレビ・コマーシャル(CM)の形態が変わる、またはなくなるのでしょうか?
「Q21 デジタル放送における新しいビジネス・チャンスは?」の回答でも若干触れましたが、テレビ・コマーシャルは、現在の無料放送原理の根幹を成すものです。
≪1≫個人別に違う番組を見る時代へ
蓄積型放送もしくはサーバー型放送を考えると、従来のコマーシャルの意味が薄れてしまいます。つまり、VTRでコマーシャルをスキップする(早送りして飛ばして見ない)ように、蓄積されたコマーシャルをスキップすることができます(図1-7)。これでは無料放送を行っている前提条件が崩れるわけですから、コマーシャル・スキップをさせない機能を入れることが議論されています。もちろん、無料で放送を受信しているわけですから、このような機能は当たり前かもしれません。
しかし、いくらかのお金を払えば、その人だけコマーシャルなしの番組が見られるということも技術的には可能ですし、そのような選択肢を視聴者サービスとして積極的に導入するところもあるかもしれません。また、「Q21 デジタル放送における新しいビジネス・チャンスは?」でも述べたように、視聴者の好みなどによって見せるべきコマーシャルを入れ替えるということも可能になりますから、従来のテレビで、コマーシャルも含めて万人が同じ番組を視聴していたのとは異なり、個人によって少しずつ違う番組を見るという現象が起こり得るでしょう。
以上のことは、いずれもデジタル放送において技術的に可能になっているため、後は番組制作者と提供者がコマーシャルをどのように見せたいのかにかかっています。
≪2≫従来型のCMビジネス・モデルはどう変わるか?
テレビの商用放送が始まって約50年が経ちます。そのテレビの歴史の中で、コマーシャルは初期の頃からあったビジネス・モデルです。基本的なその形態は、約50年間変化しませんでした。このビジネス・モデルが今後も続くのか、それともまったく新しいビジネス・モデルが登場するのか、ここしばらくは模索していく状況が続くことでしょう。しかし、強調しておきたいことは、デジタル放送は、その他のさまざまなビジネス・モデルに基づいたサービスも可能とする柔軟性を備えているということです。
今後、テレビがどう変わっていくのか、どう進化していくのか。その核心をデジタル放送が握っているといっても過言ではないでしょう。
※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(下)」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。
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