[特集]

Q&Aで学ぶデジタル放送(23):テレビ・コマーシャル(CM)の形態は変わる?

2008/09/02
(火)
SmartGridニューズレター編集部

このコーナーでは、最新のICT(情報通信技術)のキーワードをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
現在、地上デジタル放送から、BSデジタル放送、CSデジタル、CS110°デジタル放送に至るまで、さまざまなデジタル放送が利用でき、多彩な放送を受信できるようになりました。ここでは、これらのデジタル放送と、今までのアナログ放送やインターネットとの相違点から、デジタル放送時代の法制度までを解説していきます。
今回は、デジタル放送時代のテレビ・コマーシャル(CM)について説明します。

Q&Aで学ぶデジタル放送(23):テレビ・コマーシャル(CM)の形態は変わる?
亀山 渉 早稲田大学大学院国際情報通信研究科 教授
Q23

Q23:テレビ・コマーシャル(CM)の形態は変わる?

地上波デジタル放送が始まるとテレビ・コマーシャル(CM)の形態が変わる、またはなくなるのでしょうか?

A23

Q21 デジタル放送における新しいビジネス・チャンスは?」の回答でも若干触れましたが、テレビ・コマーシャルは、現在の無料放送原理の根幹を成すものです。

≪1≫個人別に違う番組を見る時代へ

蓄積型放送もしくはサーバー型放送を考えると、従来のコマーシャルの意味が薄れてしまいます。つまり、VTRでコマーシャルをスキップする(早送りして飛ばして見ない)ように、蓄積されたコマーシャルをスキップすることができます(図1-7)。これでは無料放送を行っている前提条件が崩れるわけですから、コマーシャル・スキップをさせない機能を入れることが議論されています。もちろん、無料で放送を受信しているわけですから、このような機能は当たり前かもしれません。

しかし、いくらかのお金を払えば、その人だけコマーシャルなしの番組が見られるということも技術的には可能ですし、そのような選択肢を視聴者サービスとして積極的に導入するところもあるかもしれません。また、「Q21 デジタル放送における新しいビジネス・チャンスは?」でも述べたように、視聴者の好みなどによって見せるべきコマーシャルを入れ替えるということも可能になりますから、従来のテレビで、コマーシャルも含めて万人が同じ番組を視聴していたのとは異なり、個人によって少しずつ違う番組を見るという現象が起こり得るでしょう。

以上のことは、いずれもデジタル放送において技術的に可能になっているため、後は番組制作者と提供者がコマーシャルをどのように見せたいのかにかかっています。


図1-7 デジタル放送時代のコマーシャル・スキップ(クリックで拡大)


≪2≫従来型のCMビジネス・モデルはどう変わるか?

テレビの商用放送が始まって約50年が経ちます。そのテレビの歴史の中で、コマーシャルは初期の頃からあったビジネス・モデルです。基本的なその形態は、約50年間変化しませんでした。このビジネス・モデルが今後も続くのか、それともまったく新しいビジネス・モデルが登場するのか、ここしばらくは模索していく状況が続くことでしょう。しかし、強調しておきたいことは、デジタル放送は、その他のさまざまなビジネス・モデルに基づいたサービスも可能とする柔軟性を備えているということです。

今後、テレビがどう変わっていくのか、どう進化していくのか。その核心をデジタル放送が握っているといっても過言ではないでしょう。

※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(下)」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。

関連書籍

デジタル放送教科書〈上〉

好評発売中!
デジタル放送教科書〈上〉
新圧縮方式 H.264/AVCを追加した、進化するデジタル放送の決定版!

監修:亀山 渉・花村 剛
ページ数:400P
サイズ・判型:B5判
価格:3,990円(税込)

〔本書の特徴〕
デジタル放送を支える中核技術としても、広く普及している圧縮符号化技術「MPEG-1、MPEG-2、MPEG- 4」から最新の「H.264 /AVC」までを、体系的にまとめて解説。また、インターネットと放送の融合も視野に入れ、デジタル放送の歴史や変調技術の基礎までを幅広く網羅している、デジタル放送の解説書。「デジタル放送教科書〈下〉」では、MPEG-7、MPEG-21に加えて、注目されるメタデータや1セグメント放送などを解説。

デジタル放送教科書〈下〉

好評発売中!
デジタル放送教科書〈下〉
デジタル放送で加速する放送とブロードバンドの融合!=放送革命の最新コア技術を網羅=

監修:亀山 渉・花村 剛
ページ数:344P
サイズ・判型:B5判
価格:3,990円(税込)

〔本書の特徴〕
デジタル放送で注目されているH.264/AVCによるワンセグ放送やモバイル放送からメタデータ、コンテンツ流通、コンテンツ参照IDや著作権管理保護、サーバー型放送に至るまでを多角的な面から解説。さらに、放送業界における新しいビジネス・モデルやなども紹介しながら、精力的に進められているMPEG-7/MPEG-21/TV-Anytimeなど、最新の国際標準化の内容も解説している。なお、「デジタル放送教科書<上>」では、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4、H.264/AVCを、体系的にまとめている。

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...