[特集]

【特集】次世代IT革命:動き出したスマートグリッド(2)

2009/08/28
(金)
SmartGridニューズレター編集部

情報コミュニケーション技術関連メディア事業を手掛ける株式会社インプレスR&D(代表取締役社長:井芹昌信)は、次世代IT革命とも呼ばれる「スマートグリッド」(インテリジェント化した送電網)にフォーカスしたコンファレンスを2009年7月30日(木)、東京国際フォーラム(東京有楽町)にて開催した。経済産業省、三菱重工、VPEC、グーグル、シスコシステムズ、ベタープレイスなどで、先進的に活躍中の講師陣による充実した講演とあって、参加者は200名を超えて大きく盛り上がった。コンファレンスのタイトルは「スマートグリッドとITが切り開く未来=急速に進むスマートグリッドの海外最新動向と、ITによる新しい家電、住宅、自動車、そしてエネルギーシステムの近未来ビジネス=」。ここでは、その講演の中から本WBB Forumの読者に身近な講演のテーマをいくつかピックアップし、スマートグリッドの全体像をとらえます(本文文責:WBB Forum編集部)。
(プログラムと講師陣 http://www.impressrd.jp/smartgrid/program.php

200名を超えた参加者で大きく盛り上がったスマートグリッド・コンファレンス会場
200名を超えた参加者で大きく盛り上がったスマートグリッド・コンファレンス会場

スマートグリッド事情と我が国産業への影響
=すべて、スマートグリッドへの接続が基本となる時代へ=
伊藤 慎介氏 (経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐)

前回(その1)は、スマートグリッドとは何かを説明した後、世界のスマートグリッドの取り組みの例として、米国と欧州(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、デンマーク等)の状況を紹介しました。さらに、活発化するスマートグリッドの国際標準化の例として、IEC、NIST/EPRI、IEEE P2030、IEEE 802.15 SUN TG4g、IETFなどの状況を説明しました。今回(その2)は、スマートグリッドが日本の産業に与える影響や日本の取り組みを中心に紹介します。

≪1≫エレクトニクス産業の分析から
「スマートグリッドが日本の産業に与える影響を考える」

伊藤 慎介氏(経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐)
伊藤 慎介氏
(経済産業省 商務情報政策局
情報経済課 課長補佐)

 

それでは、スマートグリッドは日本の産業にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、スマートグリッドの今後の展開の重要性を理解するために、東京大学の小川紘一教授の分析をもとに、日本のエレクトロニクス産業の現状と教訓を説明しましょう。

この10年間において、日本のエレクトロニクス産業は、国際的に相当苦戦してきています。例えば、少し古い統計資料(2005年JAITA調査)ですが、図1に示すように、世界の市場規模(89.4兆円)が大きいパソコンや携帯電話のような完成品の分野では、かなりシェアが低い状況です(パソコン:10%未満。携帯電話:20%未満。ただしテレビは40%弱)。また、デバイス分野(市場規模:50.3兆円)のうち、電子部品は世界の約50%のシェアをもっているものの、半導体は21%と苦戦してきています。さらに、今後重要となるソフトウェア・ITサービス(SI、アウトソーシングなど)のシェアは、44兆円市場のうち13%とかなり低いものなっています。


図1 我が国のエレクトロニクス産業の現状(クリックで拡大)

図1 我が国のエレクトロニクス産業の現状


図2は、製造業の中でエレクトニクス産業とそれ以外の産業の研究開発費と営業利益を示しています。図2に示すように、情報通信、コンピュータ、半導体・液晶、デジタル家電などのエレクトロニクス産業は、他の産業のライン(直線が右肩上がり)から大きくかけ離れており、大きな投資をしても、儲からなくなってきている状況(直線が右肩下がり)、すなわちROI (Return on Investment、投資利益率)が悪いことが分かります。


図2 我が国ではエレクトロニクス産業だけが異常な経営環境にある(クリックで拡大)

図2 我が国ではエレクトロニクス産業だけが異常な経営環境にある


≪2≫なぜ、エレクトロニクス産業は儲からなくなったのか

なぜ、このようなことが起こっているのでしょうか。これは図3に示すように、欧米のインテルやクアルコム、TI(テキサス・インスツルメンツ)などの部品メーカーが、製品の頭脳に相当するコントロール・チップを商品化し、同時に他の部品との接続部分(インタフェース)を標準化したため、パソコンであれ、携帯電話であれ製品がキット化され、誰でも組み立てられるようになったからなのです。その結果、技術力がそれほどなくても、新興国(韓国、台湾、中国)の企業が完成品の市場に参入しやすくなり、またそのチップ以外の電子部品市場に参入してきたため競合が激しくなり、製品価格が下落して完成品が急速に普及し、市場が拡大していったのです。


図3 インテル型のビジネス・モデル・イノベーション(パソコン/携帯電話のケース)(クリックで拡大)

図3 インテル型のビジネス・モデル・イノベーション(パソコン/携帯電話のケース)


このような中で、欧米の部品メーカーは、ライセンス料(知財)収入で莫大な利益を上げましたが、日本の完製品・部品メーカーは価格低下によって、競争力を失い市場のシェアを奪われ、シェアが低下していったのです。

それでは、このような現象は、エレクトロニクスの世界にだけ起こる現象なのでしょうか。それ以外の世界にも起きるものなのでしょうか。これは、今後、スマートグリッドの市場とも関係してくる重要な側面なのです。

≪3≫世界を制覇する「プラットフォーム戦略」の浸透

〔1〕「プラットフォーム戦略」と新興国の台頭

図4に示すように、日本は製造業に大きく依存しており、自動車、電気機器、機械そして素材などを輸出(2007年度:輸出額合計84兆円)することによって、基本的にエネルギーや食糧を海外から買っているのが現状です。このため、現在、これから外貨をどのように獲得していくかを真剣に考えないとこの国の50年先は見通しがなくなるのは明らかです。


図4 製造業に大きく依存している我が国の経済(クリックで拡大)

図4 製造業に大きく依存している我が国の経済


また、デジタル化とネットワーク化の進展を背景に、パソコンとインターネットが急速に普及していますが、途上国においては低価格型イノベーションが進行しています。これと並行して、欧米と途上国は単機能で安い携帯電話、安い車、単機能洗濯機などコモディティ化(大衆化)を推進しました。しかし、日本だけは、テレビ+カメラ+ブラウザ機能を搭載した高機能な携帯電話などの例に見るように、世界とは異なる方向性の高機能化・複合化製品路線を強力に推進したため、世界シェアを失うことになってしまったのです。

この背景には、前述したようにインテルなどが推進する、知財(知的財産権)やノウハウが詰め込んだコア部品(CPU)で世界を制覇する「プラットフォーム戦略」(キット戦略)があります。インテルが基本的なキットを作って提供するため、これによって技術力のない新興国のセットメーカーがどんどん市場への新規参入が可能となりました。さらに新興国は、従来のように先進国の有名メーカーの下請けではなく、インテルのパートナーとなってネットブックのように自社ブランドで販売することも可能となったのです。

この結果、プラットフォームを提供するサプライヤ(インテル)は、ライセンス料によって膨大な利益を稼ぐことが可能となりましたが、一方先進国のセットメーカーは、新興国との競合で製品の価格が低下したためシェアが下落してしまったのです。こうして、製品が高い付加価値をもたない限り市場からの撤退を余儀なくされる状況となってきたのです。身近な例でいえば、例えば、IBMはインテルのプラットフォームが出てきたために、パソコン市場からの撤退を余議なくされるほど追い込まれたのです。このように国際市場では、もはや技術だけではなく同時に明確な戦略をもたないと、国際競争に勝てない時代に入ってきていることを、我々は理解する必要があるのです。

〔2〕重要さを増す「標準と知財」戦略

もう一つ大事なのは「標準と知財(知的財産権)」です。すなわち図5に示すように、

(1)製品の普及を加速させる「標準」と、
(2)製品のコピーなどを保護しブレーキをかける「知財」

の2つを駆使して利益を上げていく戦略です。これを私は「やみつき饅頭戦略」(図5の右下)と言っています。デジタル製品はコピーが容易ですから、標準を皮にして皮しか見えない饅頭(中身は知財)を配り歩くと、みんながその饅頭の味に病みつきになってきて、どんどんその知財に染まっていってしまうという戦略にやられてしまっている状況となっています。

そして、「自分が強い技術」は、利益を上げるために知財を行使して死守し、一方、相手が競合に強い技術をもつ場合は、相手の競争力を奪うために標準化を推進して攻めるのです。これは、標準化の際に、相手の技術の中身を公開させることができるため、これによって相手の競争力を奪うことができるからです。


図5 標準と知財を駆使した「やみつき饅頭戦略」(クリックで拡大)

図5 標準と知財を駆使した「やみつき饅頭戦略」


≪4≫パソコンの「CPU」に相当するスマートグリッドの「ゲートウェイ」

〔1〕だれが「ゲートウェイ」(コントロール・システム)を握るか

前述したインテルの例はパソコンの中の話(CPUの話)ですが、これを「住宅をパソコンと見立てる」とすると、住宅の心臓部分(CPUに相当する部分)はいったい何なのかが重要となってきます。ここで重要なことは、スマートグリッドの世界では、住宅内のホームネットワークにつながる1個1個の製品(テレビ、冷蔵庫、エアコン、照明、パソコン、DVD、自動車等)が部品(または端末)になってしまうということです。そのため、住宅でそれらを束ねてコントロールする「ゲートウェイ」(あるいはコントロール・システム)の部分、いわゆるパソコンのCPUに相当する部分を誰が握るか(どの国のどのメーカーが握るか)が重要になってきます。

〔2〕デジタル機器はアップグレードが容易

さらに、パソコンやiPhoneなどのようなデジタル機器の素晴らしいところは、買ったときにデジタル機器入っているソフトを置き換えることができること、さらにメモリやUSBなどのようにあとからユーザーのニーズに合わせてカスタマイズできるところなのです。つまり買い替えなくても機器自身を自分のニーズに合わせて進化させることができることが、デジタル化時代の面白いところなのです。

このようにネットワーク時代では、ネットワークを経由して、新しいプログラム(ソフト)をどんどんダウンロードして家庭にある機器をアップグレードできる、すなわちユーザー・ニーズに合わせてアップグレードできるのです。このように、自分のニーズに合わせてデジタル機器を進化させることができるとういことがネットワーク時代の大事なところなのです。

これは、スマートグリッド時代においても、ホームネットワークに接続される、テレビやDVDなどの情報家電をはじめ照明器具、冷蔵庫、自動車などのインタフェースの「標準化」が求められ、しかもオープン化されていることが重要になってくるのです。また、これらの家庭にある機器を束ね制御するコントロール・システムを握ることが今後、極めて重要となってくるのです。

〔3〕スマートグリッド時代はすべてが端末化

例えば図6に示すように、住宅における家電、自動車、照明などがネットワーク化されると、それらはオーケストラのように集中監理システム(コントロール・システム)によって集中的にコントロールされるようになり、それによってユーザーが希望する環境を実現できるようになります。

すなわち、今後スマートグリッド時代を迎えると、家電も自動車もエネルギー機器もすべてネットワークにつながる端末となるため、そういう前提で我々はものづくりを考え直さないといけないのです。このとき大事なのは、コアのシステム(コントロール・システム)を握らないと、誰かが作ったプラットフォームの上でいくら勝負しても、なかなか勝てない(儲からない)時代になっているということです。

これまで日本企業は、垂直統合的な方法で最初から製品に多くの機能を盛り込んで固める傾向が強いところがありましたが、今後はユーザーが多様化する中でいろいろなニーズを取り込めるオープン性や自由化をしていかないと世界で勝てませんし、そういう戦略をもつ必要があります。さらに、今後伸びる可能性のある新興国とは競争するのではなく、協業していくことが非常に大事になってきています。


図6 複数のデバイス、機器がつながるオーケストラ(クリックで拡大)

図6 複数のデバイス、機器がつながるオーケストラ


こうした状況をみると、将来、スマートグリッドにつながらない家電や電気自動車はインターネットにつながらないパソコンと同じように、意味のないものになってしまうということが理解いただけたと思います。逆に言えば、日本独自の規格にこだわるのではなく、スマートグリッドにつなげるという認識をもって製品戦略を進めなければ、我々のビジネスの利益はミニマムなものになってしまいますし、世界の市場をまったく取れなくなってしまうのです。

≪5≫スマートグリッド時代の日本のチャンス

〔1〕江戸時代の文化と最新技術を融合させた新しいライフスタイル

これまでは比較的、悲観的な話を多くしましたが、私は日本にも、まだまだ大きなチャンスがあると思っています。今、世界は2050年までにCO2の排出量を50%削減するという目標が合意されていますが、それがどれほど厳しい目標かと言うと、日本の場合、人口が現在の1/4(3000万人)であった江戸時代当時のCO2の排出基準に戻すということなのです。したがって、私たちのライフスタイルやワークスタイルを抜本的に変えない限り、この目標は達成できないのです。現在、低炭素社会の実現が国際的に大きな課題となっていますが、低炭素社会では、これまで述べてきた太陽光とか風力といった再生可能エネルギーを大量に導入して発電するという「エネルギー需給システム」の構築を基本とするしかないのです。

そうすると、現在の私たちの生活は産業革命以降から、自然のサイクルを無視したライフスタイルとなっていますが、これをもう一度見直して、自然のサイクルに合わせたライフスタイルを選んでいかないといけないのです。自然の天候を前提として文明を築いていった縄文時代から江戸時代まで永続させてきた、私たちの先人の知恵と最新の技術を融合させることによって、新しいライフスタイルを考えたうえでインフラ投資をしていくべき時代を迎えているのではないかと思っています。これは日本にとってチャンスでもあります。

〔2〕重要な「地産地消型システム」

これを実現するには、前述したように、自然のサイクルを尊重して地域で生産(発電)可能な再生可能エネルギーの供給状況にあわせて、なるべく地域的に変動する電力の供給は、地元(ローカル)で全部吸収してしまうようなエネルギー・システム(地産地消型システム)をつくることが重要となるのです。各家庭の余剰の電力をすべて、電力会社が買い取ってください、あるいは電力会社がすべて系統を強化して変動分までも吸収してくださいと言うのは、ある程度のところまでいきますが、将来永続的に続けるというのは大きな負担になってしまうのです。

〔3〕電気自動車(動く充電インフラ)をエネルギー・デバイスとして

伊藤 慎介氏(経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐)
伊藤 慎介氏
(経済産業省 商務情報政策局
情報経済課 課長補佐)

 

したがって、住居地域で変動する電力の供給は、我々が自分でローカルに調整していく必要があるのです。その中でとくに重要なことは、今後、電気自動車が大量に普及してくと、CO2が減るだけでなくて、騒音がなくなる、排ガスがなくなる、街中が静かになるだけでなく、電気自動車を「動く畜電池(動く充電インフラ)」として見れば、止まっている最中には自動車(畜電池:バッテリー)をエネルギー・デバイスとして使えるのです。自動車は95%の間は停車しているといわれています。停車している車は、現在はまったく仕事をしていませんが、電気自動車になると電力系統につないでおけば便利に使えるようになり、仕事をしてもらえるようになるのです。

そうすると、再生可能エネルギーの供給状況に合わせて、需用を調整することを無理してやらなくても電気自動車の畜電池(バッテリー)に電気を蓄積することがバッファになるのです。あわせて、家庭の蓄電池や温水器などもエネルギー貯蔵のバッファになるので、再生可能エネルギーの長期変動を吸収できる形になっていくことが可能となります。このため、家電とかエネルギー機器、そして自動車も含めて、もっと進化する機器にしていく必要があります。また、再生可能エネルギーの供給状況に合わせて、電力需要を各家庭あるいは地域で調整するということは、私たちの家庭にあるいろいろな機器(テレビや空調など)をどういうプライオリティ(優先順位)を大事にして使っていくのかを、もう一度見つめ直していくことでもあるのです。


〔4〕ライフスタイルに合わせてエネルギーの需要を調整

例えば、ある人はテレビの視聴が好きで張り付きなので、テレビの電源を切られると困るということであれば、エアコンの温度設定を少し緩やかにする(例:冷房を25度から26度に上げる)ことによって、電力供給の変動をうまく自分で吸収するという方法も考えられます。つまり人それぞれのライフスタイル、ニーズに合わせてエネルギーの需要を調整するのです。そのような機能をサポートする場合、家電、エネルギー機器、自動車はある程度プログラマブルになっていないとスマートグリッドの時代には対応できないのではないでしょうか。

≪6≫スマートグリッド端末の情報を有効に活用

さらに、このように通信ができる自動車とか、家電とかエネルギー機器が出てくるとそのような機器はスマートグリッドの端末化するので、それらの機器からいろいろな情報が得られるようになります。例えば、それらの情報を活用して、在宅していない場合は、ホーム・セキュリティ・システムをオンにしてもらう、あるいは留守のときは宅配業者に宅配物を届けに来るのをやめてもらうとういう信号を出して、わざわざ不在中に宅配業者が来ることをスキップしてもらうこともできるのです。

このような新しいサービスを生み出すためにもっと知恵を絞っていくべきですが、ここが現在、私たちが行っていくべき重要なインフラ投資なのです。そして、どれほど日本が世界よりも先に立ち上げることができるか、そのインフラ投資した結果のROI (Return on Investment、投資利益率)の効果がどれほど上がるのか、などが極めて重要な課題になってくると思います。併せて、例えば、機器の故障の状況、あるいはユーザーがどんな使い方をしているのか、というような利用者の情報をとることによって、新しい機能を開発・提供することも可能となります。このことは、メーカーやサービス・プロバイダにとっては、利用者情報に直接アクセスすることができようになるため、的確なサービスの提供なども可能になるのです。

最終的に大事なことは、世界のCO2を半減すると言うことを日本が提案したわけですから、それを日本だけに留めるのではなく、そのようなグリーンな機器を開発し、スピード感をもって新興国にどんどん輸出しいていくことが大事です。そのように対応することによって、私たちがライフスタイルを変えない限り地球を救えないのだということを、新興国の方たちに訴えかけていく必要があるのです。このようなことを前提にして、新興国におけるエネルギー事情やニーズを踏まえたうえで、彼らにとって導入しやすいシステムを提案して、CO2の半減に向けた努力をしてくべきではないかと思います。

≪7≫すべて、スマートグリッドへの接続が基本となる時代へ

〔1〕日本の製品が時代遅れの製品にならないために

最後に、皆さんに申し上げたいことは、まず、スマートグリッド社会の実現に向けて、世界中の企業は、第1回でも述べたように、すでに、非常に激しいインフラ競争を行っています。そういう中で我々の次の新しいバリュー(価値)を創造するための努力は、国だけではなく、官民が連携してやっていかなければ国際競争に勝てないということです。

2つ目は世界のスピードについていかなければ、スマートグリッドのコアであるコントロール・システム(ゲートウェイ)の部分を完全に海外にとられてしまう危険性があることです。そして米国を中心に議論されているスマートグリッドの本当のところは、「電気の利用と発生に関係するすべて」であるということです。ということは、ほとんどのすべての機器が含まれるということでもあります。このようにあらゆる機器をすべてスマートグリッドというインフラに接続させることを基本に考えていく、すなわち、今後スマートグリッドの構想に見合うあらゆる設備に関与していかなければ、日本の製品や規格がスマートグリッドに接続できない、時代おくれの機器になってしまう危険性が高いのです。

〔2〕日本の歴史とスマートグリッドを融合させて世界をリードしたい

ただし、日本には自然エネルギー(再生可能エネルギー)を大量に導入した時代に、すなわち自然のサイクルに合わせたライフスタイルの歴史と経験があり、これを世界に提案できる文化的、歴史的なポテンシャルがかなりあると考えています。そして、それと最新技術のスマートグリッドと組み合わせることによって、世界に対して大量生産・大量消費・大量廃棄型のライフスタイルではない、自然とか地球との循環を前提としたライフスタイルを世界に提案し、環境問題の解決に向けて世界をリードしていきたいと思っています。そういう戦略を皆さんと一緒に進めていきたいと思います。

☆ ☆ ☆ ☆

最後に、図7に「スマートグリッドなどの新たなエネルギーシステムの誕生と我が国産業への影響」、図8に日本のスマートグリッドの「関連プロジェクト(平成21年度補正予算)」を示します。


図7 スマートグリッドなどの新たなエネルギーシステムの誕生と我が国産業への影響(クリックで拡大)

図7 スマートグリッドなどの新たなエネルギーシステムの誕生と我が国産業への影響


図8 日本のスマートグリッドの「関連プロジェクト(平成21年度補正予算)」(クリックで拡大)

図8 日本のスマートグリッドの「関連プロジェクト(平成21年度補正予算)」


--つづく--

バックナンバー

【特集】次世代IT革命:動き出したスマートグリッド

第1回:『海外のスマートグリッド事情と我が国産業への影響』(その1) 伊藤 慎介氏(経済産業省)

第2回:『海外のスマートグリッド事情と我が国産業への影響』(その2)伊藤 慎介氏(経済産業省)

第3回:『グーグルのスマートグリッドへの期待』 村上 憲郎氏(グーグル)

第4回:『シスコのインテリジェント・スマートグリッド戦略』 堤 浩幸氏(シスコ)

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