ガス小売全面自由化に向けた新しい動き
〔1〕登録申請の受付を開始
2016年4月1日の電力小売全面自由化注1に続いて、1年後の2017年4月1日からガス小売全面自由化が実施される。経済産業省は、このガス小売全面自由化の実施に先立って、2016年8月1日からガス小売事業の登録申請の受付を開始した注2。
〔2〕ガス会社5社が託送供給約款の認可申請へ
また、これに先立って、ガス小売全面自由化の実施に向けて経済産業省は、改正電気事業法の規定注3に基づく託送供給約款(託送供給の取決め:託送供給の料金等)の認可申請を、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスよび東部ガスから受理したと発表(2016年7月29日)。今後は、後述する電力・ガス取引監視等委員会において、中立的・客観的かつ専門的な観点から厳正に審査が行われることとなった。
〔3〕ガスの託送供給の仕組み
託送供給とは、ガス導管を保有していないガス会社(新規参入事業者も含む)が、託送料金を払って他社のガス導管を使用して、ガスを送るサービスのことである。
これを、大阪ガスの託送供給のイメージ例(図1)で説明しよう。
託送供給とは、図1に示すように、
(1)大阪ガスが、ガスを供給する事業を営む他の事業者(以下「託送供給依頼者(A)」)が、大口需要家および他のガス事業者に供給を行うためのガスを、大阪ガスの導管を使用して受け入れ、
(2)同時に、託送供給依頼者(A)が大口需要家および他のガス事業者に供給を行う場所において、大阪ガスの導管から託送供給依頼者(A)に同量のガスを引き渡す(払い出す)サービスのことをいう。
(3)託送供給依頼者(A)は、その払い出されたガスを、図1の下段右に示す託送供給依頼者(A)の顧客に供給する。
図1に示す「託送供給ガス受入」と「託送供給ガス払出」の区間(黄色の点線区間)が、託送供給区間であり、受入量=払出量となるように調整される。
このとき、大阪ガスは、託送供給依頼者(A)に対して託送料金(ガス導管の使用料金)を請求することができる。このガス導管の利用料金は、公平にガス導管を使えるよう、国が認可する制度となっている。
このように、新規のガス事業者は、新たに自分でガス導管の敷設工事をする必要がなく、ガスの価格やサービス内容を競って、さまざまな事業者がガス販売に参入できる。すでに、工場向けのガス小売販売などの自由化では、このようなサービスが採用されている。
〔4〕ガスの製造とガスを消費者に届ける仕組み
一方、東邦ガスでは、図1に示す導管のイメージについて、導管の使用圧力に応じて次の4段階に分けて供給注4し、最終的に家庭用ガス機器に適した低圧で届ける。
【第1段階】高圧:1.0MPa以上注5
【第2段階】中圧A:0.3〜1.0MPa未満
【第3段階】中圧B:0.1〜0.3MPa未満
【第4段階】低圧:0.1MPa未満
▼ 注1
電力システム改革は、①広域的な送電線運用の拡大、②小売の全面自由化、③法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保、の3つを大きな柱としている。
▼ 注2
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/gas/liberalization/entry/
▼ 注3
(平成27年法律第47号)附則第18条第1項:電気事業法等の一部を改正する等の法律附則第18条第1項本文の規定による託送供給約款の認可に係る審査基準
- http://www.meti.go.jp/press/2016/07/20160729006/20160729006.html
- http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/gas/summary/guideline/pdf/20160627takusousinsakijun.pdf
▼ 注4
http://www.tohogas.co.jp/approach/safety/emergency/emergency-02/
▼ 注5
MPaはメガパスカルと読む。パスカル(Pa:Pascal)は気圧(圧力)の単位で、大気の1気圧は1,013.25hPa〔hPa(ヘクトパスカル)=Paの100倍〕であるから1MPaは約10気圧に相当する。